【アーカイブ・2020年連載企画】逆境を乗り越えよう⑬ サフィルヴァ三木社長 「5年で日本一」掲げる現役東大生
特別企画「逆境を乗り越えよう」の13回目は、男子バレーボールV2、サフィルヴァ北海道の運営会社、株式会社「サフィルヴァ」の社長に就任した現役東大生の三木智弘氏(24)。サッカー男子日本代表などのトレーナーを務めた父の影響で、大学入学後からスポーツビジネスに携わってきた青年は、Vリーグ参入2年目のチームで何を目指すのか。
(本連載企画は2020年7月に掲載されたものです)
「人の挑戦を後押しできるようなチームに」
現役東大生社長が、バレーボール界に新風を吹き込む。今季からV2で戦うチームを運営する三木社長は、「バレーボール業界が成熟していないからこそ、どのチームにも日本一を取るチャンスがある。人の挑戦を後押しできるようなチームにしていきたい」と将来像を思い描いた。
幼いころからテニスやゴルフ、水泳などに親しみ、スポーツと隣り合わせの生活だった。J1の名古屋やサッカー男子日本代表などでトレーナーを務め、2002年日韓W杯、06年ドイツW杯に帯同した父・裕昭さん(53)の影響で、小学1年から高校3年までサッカーに没頭した。
経済的に苦労した父に恩返しを
スポーツビジネスに興味を持ち始めたのも、父のある出来事が契機だった。トレーナー引退後に関わったフィットネスクラブの経営でトラブルに巻き込まれ、経済的に一時、厳しい状況に。子供には苦しい顔を一切見せなかったが、高校の学費納入が遅れることもあった。「家計が厳しいことは薄々気づいていた。そんな中でも何不自由なく、生活させてくれた父に恩返しをしたかった」
大学1年のころからベンチャー企業などで経験を積み、昨年3月にトレーナーをサポートする「ミキスポーツ」を立ち上げた。今年5月にはスポーツチームの経営を支援する「スポーツネーション」を設立し、サフィルヴァと合わせた3社で事業を営んでいる。ほかにも、ロンドン五輪陸上男子400メートルリレー銅メダリスト・藤光謙司(34)が代表のアスリート会社などで役員を務める。スポーツに関わる多方面の人々を支える活動を続けている。
「地元愛が強く、成功できる要素十分」
サフィルヴァの社長に就任したのは、知人からの誘いがきっかけ。同チームの関係者とつながりのあった、元Vリーガーの実業家から「やってみないか」との誘いがあり、二つ返事で引き受けた。「北海道は野球、サッカー、バスケとプロスポーツが深く根付いている場所。道外の人たちと比べても、特に地元愛が強く、成功できる要素は十分に揃っている」と、縁もゆかりもない北海道でのスポーツチーム経営に不安はなかった。
今年1年は経営体制の強化に注力し、まずはポスター配りなどの地道な活動からファンやスポンサーを確保。将来的にはスポンサー同士のビジネスを活性化する相談窓口としての役割を担ったり、様々な自社メディアを保有して、影響力を拡大していくことを想定している。
スティーブ・ジョブのように
子供のころからビッグマウスで、周囲が無謀だと思うことも実現してきたという三木社長。サフィルヴァでの目標を問われると、「Vリーグ参入から5年で日本一になります」と即答した。米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏のような経営者になるのが夢だった中学2年のころ、将来必要になると思い、サインを考えた。そのサインとともに色紙に記した言葉は、「誰かの幸せに全力を」。きょう9日(2020年7月9日)に就任会見を開き、北海道での新たな挑戦をスタートする。(島山知房)
■三木 智弘(みき・ともひろ) 1996年4月30日、愛知県日進市生まれ。10歳で三重県に移住し、四日市高卒業後、1年間の浪人生活を経て、東大文科二類に合格。現在は経済学部経営学科4年生で休学中。家族は両親と姉。東京都在住。
■サフィルヴァ北海道 札幌市を本拠地とする男子バレーボールのクラブチーム。2013年、特定非営利活動法人を立ち上げ、16年にバレーボール部門を設立。チーム結成4年目の19年、ヴォレアス北海道(旭川)に次ぐ道内2チーム目としてVリーグに参入し、V3で戦う。同年10月にはV2昇格に必要なS2ライセンスを取得。7月1日にV2昇格が決定した。現在、V1昇格に必要なS1ライセンスを申請中。今季は上杉新監督のもと、「超攻撃的バレー」をテーマに掲げる。
(2020年7月9日掲載)