【道スポ評論家が直撃】鶴岡慎也氏×根本悠楓 ~和田、宮城らが持つ一流左腕の共通点は
「50歳まで現役」が目標 元捕手の鶴岡氏に道産子左腕からも直球質問
日本ハムの沖縄春季キャンプに合わせ、現地入りしている道新スポーツ評論家が選手の本音に迫る「直撃インタビュー」。今回は鶴岡慎也氏(42)が根本悠楓投手(20)と対談した。ソフトバンクにも在籍し、40歳までマスクをかぶった鶴岡氏が根本の強みを分析。「50歳まで現役」を目標に掲げる有望左腕の願いに沿い、和田毅投手(42)の取り組みを紹介しながら、一流の条件を伝えた。
ライバルの実戦登板に競争意識は
鶴岡(以下鶴)「ローテーション入りが期待されている。ここまでキャンプは順調ですか」
根本(以下根)「実戦も入ってきて、すごくいいというわけではないですけど、ある程度、いい球を投げられています」
鶴「建山コーチ、新庄監督が、絶妙に競争意識をあおっている。金村投手、根本投手を先発させた後、北山投手、鈴木投手。ちょうどローテーションを争うピッチャーたちを登板させている。そこは意識しますか」
根「意識しないようにしていますけど、みんないいので…。今、結構、意識しています」
今季の目標とする数字
鶴「今シーズン、描いている成績があると思う。どんな数字にこだわっていきますか」
根「まずは1年間、1軍のローテーションに入ることと、2ケタ勝利を目指して」
鶴「1年間、1軍で投げ続けるために必要だと感じていることは」
根「ムダな球を使いたくないです。球数が少なくなれば、イニングも6、7、8回と、どんどん増えていくと思います。あとは中6日で、5試合、10試合投げるくらいなら誰でもいけると思う。それを1年間、25試合ぐらいを中6日で回るとなったときに、6日間の過ごし方がすごく大事だと感じています」
先輩左腕たちには自ら聞きに行ける?
鶴「左の先発ローテーション投手と一緒に過ごしている。加藤(貴)投手や、移籍してきた山崎投手はライバルですけど、経験のある人に聞くことも大事なこと。『先輩、先輩』と自ら聞きに行けるタイプ?」
根「最近、行けるようになりました。でも2年目までは、あまり行けず、どういうことをやっているのか、見ながら。これ、自分でもやってみようとか、合わないなとか。だんだん自分の形はできてきました」
数年後、10年後を見据えて
鶴「チームメートでは誰と仲が良いの?」
根「…金村さんですかね(笑)」
鶴「金村投手も同じ立場。切磋琢磨(せっさたくま)しながらですね。今シーズン、僕としては先発ローテに入ってもらいたい。ただ、ときには気持ちがブレることもあると思う。これだけは1年通してやろうと考えていることは」
根「トレーニングは、今年の結果を残すためにやっていることではないです。数年後、10年後を見据えてやる。気持ちが沈んでいても、やっていきたいと思っています」
長く現役を続けるために名選手たちがやっていたこと
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鶴「入団当時、50歳まで現役をやりたいと話していた。山本昌さん(元中日)、50歳ですよね。左ピッチャーは長くできている。長いのはキャッチャーか左ピッチャーですね」
根「そうですね。今は真っすぐで押していく感じで、年がいったら…」
鶴「でも、やっぱり、若いうちはスピードにこだわっておかないと、絶対に長くできないと思う。ホークスの和田さんと一緒にやったけど、トレーニング量を落とさない、走る量を落とさない。工藤さん(元ソフトバンク監督、47歳まで現役)がいつも言っていた。若いときは1時間でできたトレーニングでも、回復しないから、量を落とさず、時間をかけてやると。2時間とか。例えば、PP(外野ポール間走)20本、30分で終わっていたのを、少し間隔を空けて、1時間でこなすとか、そういうことをやった方がいいと」
根「長くやっている人って、走る人が多いと思います」
鶴「多い。ただ、この前、ダルビッシュ投手から話を聞いてきたけど、彼はあまり走らないんだよね。自分に合ったトレーニングを見つけないといけない。今はその途中だよね」
根「僕は結構、走った方が感覚が良くなります」
鶴「そういう感覚を自分で見つけていくことが大事」
根「ずっと同じ感覚ではできない。そこが難しいですね」
いつかは大型契約に
鶴「一つ一つ成功と失敗を繰り返す。1回成功したら、失敗は3回すると思う。それで覚えていくしかない。いずれ、その割合を逆にしていったらローテーションで何年もできる。加藤投手のように大型契約にもつながる」
根「(大型契約を)したいですね、いつかは」
鶴「左ピッチャーで一番成功するタイプだと思っている。チームを背負うようなピッチャーになってほしい。2021年入団だよね。1年だけ、現役がかぶっているよね」
根「そうなんです。でも、僕はずっと2軍にいたので」
鶴「でも入ってきたとき、手先が器用なのは分かったから。器用な左ピッチャーは残っていく。不器用なピッチャーは絶対に残っていかない」
根「手先だけになったらちょっと怖いなと思う部分もあります」
鶴「でも最後、ボールを放つのは手先。いろんなことが大事だけど」
紅白戦で見せたショートアームの印象
根「一つ聞きたいことがあります。この前の紅白戦を見てもらったと思うんですけど、ショートアーム(コンパクトに腕を振るフォーム)の感じってどうですか。バッター目線も含めて」
鶴「いいと思う。結局はそれが自分の体に合っているか、どうか。根本投手には合っていると思う。自分の一番の特長が何か、分かっている? ちょうど、ピッチングのスロー映像をずっと見ていて。ほかのピッチャーと何が違うのか、考えていた。投球動作を開始して、出ていくときに、普通のピッチャーは力感を求めたいから、右肩(左投げの場合)を内側に入れる。それが根本投手の場合、全く動かない。体のラインがずっと変わらず、いきなりバッと手が出てくる。普通のピッチャーは予備動作がきて、そろそろ手が出てくるなと思って、バッターはタイミングを取る。根本投手の場合は、いつ出てくるんだろう、という感じ。バッターが差し込まれる、いつボールを放すのか(分からないから)。そういう特長を持っている。あとは真っすぐをしっかり(定めたラインに)決められたらいいね」
根「そこですね。そこさえ決まれば」
オリックスの宮城は意識するか
鶴「真っすぐを決められたら、チェンジアップ、フォーク、スライダーは、ちょっとミスっても打たれない」
根「オリックスの宮城さんがそうですよね。すごいですよね」
鶴「ちょっと抜けるぐらいはいい。中途半端な高さでいったら一番良くない。宮城投手のようなスタイルは意識しているの?」
根「はい。ただ、腕を隠したい(見づらくしたい)のは、小っちゃいころからです。あと、球速より速く見えるとは、よく言われます」
鶴「特長を分かって投げられたらいい。ほかに数値で特殊な傾向はある?」
根「スライダーの曲がり幅が大きいぐらい。あとは平均だと思います」
ソフト和田は引き出し多い いつか紹介させて
鶴「大いに45歳ぐらいまでできるような可能性は持っていると思う。(現在、パ・リーグ最年長の)和田さんと話したことは?」
根「一度、トレーニングを見たことがあります。ペイペイドームの練習場を貸してもらったときに。ふわっとやって出てきたんですけど、若い人のようなトレーニングをしていました」
鶴「和田さんは、来る者拒まずで、左ピッチャーが好きなので。いずれ、紹介するよ(笑)」
根「本当ですか。めっちゃ走ると聞いています」
鶴「自主トレにあれだけたくさん来て。16人。人格者だし、自分でもやっている。いろんな引き出しを持っているから。話を聞くのはいいと思う。取り入れる、入れないは自分の考え。オレよりも和田さんに聞いた方がいいでしょ(笑)。そこは、つなげさせてもらいます」
左の好投手に共通すること
根「ありがとうございます。鶴岡さんは左の好投手をたくさん見てきたと思いますが、共通する部分はありますか」
鶴「杉内さんは一番、出ていくタイミングで力が抜けている。そこは共通点。良くないピッチャーは、1から10まで100パーセントの力で投げる。和田さん、杉内さんとか、いいピッチャーは力が抜ける。山本昌さんもそう」
根「宮城さんもそうですね」
鶴「そう。力感なく145キロが150キロに感じる。杉内さんは135キロが150キロに見えた(笑)。そういう投手を目指したい?」
根「はい! 力が入ったらコントロールも操れないので、いかに力を抜いて投げるか、テーマにしています」