【北海14度目の春】②1988年 〝マダックス〟で25年ぶり勝利のエース西中紀和さん
第96回 選抜高校野球大会が3月18日に阪神甲子園球場で開幕する。北海道から昨秋の全道王者・北海と21世紀枠で別海が初出場する。北海は1963年大会で北海道勢最高成績の準優勝を収めるなど、道勢最多14度目の出場を誇る。歴代OBから甲子園開業100周年の節目に出場する後輩たちへのエールを紹介する。
現在、恵庭リトルシニアコーチ
第2回は1988年の第60回大会2回戦・西条農業戦で、同校28年ぶり2人目の完封勝利を挙げたエース右腕・西中紀和さん(53)。2-0の五回にはダメ押しの本塁打を放つなど、25年ぶりの選抜甲子園勝利に貢献した。10年ほど前から中学硬式の恵庭リトルシニアでOBの渡辺匠監督(54)の右腕としてコーチを務めている。昨秋の新チームでベンチ入りした北海の今皓大捕手(1年)は、2022年のリトルシニア日本選手権に初出場した時の正捕手。今大会ではベンチ入りを逃したが「ぜひ、頑張って欲しいね」と、目を細める。
「第1代表じゃないから、緊張しなかった」
一世一代の投球だった。エースとして挑んだ初の甲子園。「(準優勝で)第1代表じゃないから、そんなにすごい緊張はしなかったけど、恥ずかしい試合はできないって思った」。当時、北海の選抜甲子園での通算成績は9勝9敗。「負け越して帰ってきたくはない」と、伝統の重圧を一身に背負って聖地のマウンドに上がった。
4安打、1四球の99球完封劇&本塁打
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序盤から打たせて取る投球がさえ、散発4安打、1四球。走者を許してもけん制や併殺など、バックも無失策で援護。「自分たちのいいところだけ出しきった試合。練習してたピックオフとか、バントシフト。この2つがもう全部決まって、練習したことをそのまま出して勝った」。さらに99球完封劇〝マダックス〟のおまけ付き。「北海道大会でも完封ってほとんどしてない。球数も多い方で、コントロールも良くなかったけど、西条農業戦に関しては、周りのみんなも守ってる選手も大西(昌美)先生も、みんな『どうしたんだろう』と思ったと思う」。選抜甲子園で北海の完封勝利は、13度の出場で西中さんを含めてわずか3人が達成。北海道勢では12人いるが、1試合に本塁打との同時達成者は2人で、西中さんが第1号だ。
お山の大将から真のエースへ
前年の秋季全道決勝は5-8で函館有斗(現・函館大有斗)に敗れた。先発した西中さんは二回に走者を背負った場面で1年生の右翼手が後ろに逸らすミスもあり7失点。「後でビデオを見返したら、マウンドでむちゃくちゃ怒っていたんですよ」。その回が終わり、落ち込んでベンチに戻ってきた右翼手をチームメートが慰めている場面を見て「お山の大将だった。あれで自分は変わった。あれがなければ甲子園でも勝てなかった」。真のエースとなったきっかけを振り返った。
「今ある自分の力を出し切ってもらえば」
北海の平川敦監督(52)は1学年後輩で同じ投手陣として約1年半一緒に過ごした。西中さんは普段は1人で黙々と走り込むタイプだったそうで「走るフォームがすごい奇麗で、短距離も速かった」100メートル走やポール間走では、平川監督を競走相手に指名することが多かった。22日に初戦を迎える後輩へ「頭で描いてることをそのまま出してもらいたい。あとはもう一生懸命、平常心で戦って、今ある自分の力を出し切ってもらえば次につながるんじゃないかな。うちのチームも夏の全国大会を目指しています」。母校の勝利を信じ、自らは未来の甲子園球児輩出へノックバットを手に取る。