【日本最東端の春 初陣・別海】㊦甲子園の夢を叶えるために北広島から片道7時間かけて通う小沢コーチ
4人の外部指導者が甲子園に向かう選手たちを支える
3月18日に阪神甲子園球場で開幕する第96回選抜高校野球大会に、今春で創部46年目を迎える別海が21世紀枠で初出場する。チームの近況や町の盛り上がりなど、人口1万4000人ほどの酪農と漁業の町から出場する別海の企画を「日本最東端の春 初陣・別海」と題し、3回に分けてお届けする。
小沢コーチ「必ず接戦に持ち込める」
公立校では極めて珍しく異色だ。就任8年目の島影隆啓監督(41)も外部指導者だが、3人のコーチも同じく町外から定期的に別海へ通っている。その中で主に技術指導を担っているのが、北広島市在住の小沢永俊コーチ(55)だ。「やっていることは間違いないと思ってやっています。今の練習ぶりでやれば、必ず接戦に持ち込めると思ってます」と胸を張る。
長時間の運転も苦にならない別海で芽生えた原動力
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北広島から月に一度、3日間から1週間は町内に滞在して指導にあたる。昨年秋の札幌ドームで行われた全道大会では全て帯同した。「ほとんどボランティアですよ。最初は島影監督のためにって思っていたんですけど、子供たちから『小沢さん、もう帰るんですか』とか、また行った時に『小沢さん』って迎えてくれた。原動力はそれだけなんですよね。何気なく、行っちゃってます」。自宅のある北広島市から片道7時間の運転も苦にならないという。
元たくぎんで都市対抗に6度出場
小沢コーチは岐阜第一高から当時の社会人野球の強豪・たくぎん入り。強肩の中堅手として都市対抗に6度出場した。1997年の拓殖銀行破綻後、一般企業を経て、道都大(現・星槎道都大)で指揮を執った元チームメートの山本文博監督(67)に声を掛けられて指導者となった。2017年には同校の明治神宮大会準優勝にも貢献。教え子には12年のドラフトでプロ入りした巨人2位の北山進さん(33)、オリックス2位の佐藤峻一さん(33)らがいる。
「島影監督の悔しさを別海で晴らさせてあげたかった」
島影監督との出会いは11年。指揮官が釧根支部の母校・武修館の監督を務めていたころ、同校の渡辺靖徳トレーナー(50)が道都大で元コーチをしていたこともあり、誘われて掛け持ちのコーチをやったのがきっかけだった。島影監督が13年秋に成績不振を理由に解任され、別海の監督に就任した後の18年ころから再びコーチとしてタッグを組んだ。「島影監督の悔しさを別海で晴らさせてあげたかった。なんとか甲子園に連れて行きたかった」とチームを陰から支え、サポートしてきた。札幌で中学の軟式クラブチームの指導もしたことがあり、2年前には小沢コーチを慕って札幌から3人が別海へ越境入学。今回もベンチ入りしている。
精神面と技術面で役割分担
担当は主に技術面の指導。「監督は昭和の野球と自ら言ってるんですけど、挨拶とか人間教育というところに力を入れてる方で、逆に僕はそれがやりやすかった。それでなかったら、たぶん続いてないです」。長年の信頼関係から絆は固く、はっきりと役割分担して指導している。
最後の甲子園かもしれない
2月に実施した鹿児島合宿にも帯同した。選抜甲子園の抽選が行われた後の今月9日には、関西入りするチームに再び合流する。「島影監督は最後だと思っているかもしれない。今年の入学は6人か7人。そしたら秋には12、3人になっちゃいますし、それでケガ人が出たら、ひょっとしたら試合ができなくなる可能性もある」。だからこそ、指揮官が聖地で悔いのない戦いができるよう、万全の態勢でサポートするつもりだ。