有言実行で支配下決めた福島蓮 目指すは〝千賀2世〟非エリートが抱く熱い思い
■オープン戦 広島4-4日本ハム(3月14日、エスコンフィールド北海道)
目標を3年目に設定
福島蓮は、有言実行の男だ。21年の育成ドラフト1位で入団し、高卒1年目から何度も〝支配下昇格への意気込み〟を問われてきたが、その度に「まずは体づくり。焦らず、3年目に勝負ができれば」と言い続けてきた。
高卒投手では球団初の昇格
昨年4月、好調だった右腕に手応えを聞いても、「いや、来年(支配下に)上がれれば良いかなと。上がれるに越したことはないですけど、まだ体ができていないので」と、冷静に自分の現在地を分析していた。満を持して、迎えた3年目。育成ドラフトで入団した高卒投手としては球団初の、2桁背番号を勝ち取った。
昨年は1年で6キロ増量も…
食が細く、食べるのが大の苦手。入団時は身長190センチに対して65キロと、線の細さが際立っていた。プロ入り前から続けてきた〝食トレ〟は、今ではもう日課になっている。時期によって変動はあるが、朝食で米400グラム、昼食はうどんに、おにぎりを2つ、夜は米600グラムをノルマに、毎日ご飯と〝格闘〟してきた。昨年は1年で約6キロの増量に成功するも、秋にインフルエンザにかかって逆戻り。「本当にきつい。ショックです」と落ち込んだが、諦めず食べ続けてきた。
「真っすぐが変わってきた」
栄養士の指導も受けて、今では77キロまで成長。筋力トレーニングで持ち上げる負荷も大きく変わった。「真っすぐが変わってきた。指先の弾くというか、押し込む感覚がちょっと強くなった」と、野球にもしっかりとつながっている。
高校入学後に投手の本格練習
意外にも、本格的に投手の練習を始めたのは、八戸西高に入学してからだった。手本にしたのは、育成からメジャーリーガーにのし上がったメッツの千賀だ。「高校でフォークを投げ始めて、誰を参考にしようかなと思ったときに、千賀さんだなと。中学の時から、ずっと好きでした」。真っすぐとフォークを武器にするスタイルにも親近感を覚え、少しでも近づけないかと試行錯誤する日々を送った。
千賀の著書を参考にするも…
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プロ入り後は、育成入団という共通点もあり、より憧れを強めた。23年の春季キャンプ前には千賀の著書「ピッチングバイブル」を購入し、早々に読破。「良いことが書いてありました。体の使い方とか、そういう感じなんだって。それを徐々にですけど、取り入れてます。動画とか、トラックマンのデータも見ているんですけど、千賀さんのフォークは落差がすごい。化け物です。本にフォークの投げ方も書いてましたけど、難しい。全然落ちない(笑)。でもいずれは、千賀さんみたいに投げられればいいですよね」と目標にしている。
スイカゲームも器用に極めて
マウンド上とは対称的に、プライベートは穏やかで、どこにでもいる普通の20歳と変わらない。インドア派で「趣味がほしい。休みはニートです。携帯いじったり。TikTokを見ていたり」と苦笑いを浮かべる。少し前には流行した「スイカゲーム」に熱中。入団時、担当の白井スカウトが「手先が器用なので、これから肉がついてくれば面白い選手になる」と評していたが、その繊細な指使いで、すぐにスイカを楽々作れるまで極めていた。
小学生時代に指導した曽我監督も驚き
優しい好青年だが、内には秘めた熱い思いもある。プロの世界に当たり前のようにいる甲子園のスターや、世代別の侍ジャパンに選ばれてきたようなエリートとは違う道を歩いてきた。小学生時代の福島を指導したダイヤモンドクラブ八戸の曽我監督は「蓮(福島)は昔は今みたいに背も大きくなくて、プロになるなんて全く思っていなかったですよ」と当時を振り返る。長身右腕はそんな自分だからこそ、与えられる夢があると考えている。
地元の後輩たちの前で快投を披露
昨年の8月だった。2軍戦が地元・青森で行われ、〝凱旋登板〟のチャンスをもらった。ダイヤモンドクラブ八戸の子どもたちも応援に駆けつけていた。「僕が、活躍しているところを見せられれば、きょう来てくれた子たちに、自分でもプロになれるかもって思ってもらえる」と気合を入れて先発マウンドに上がり、4回1失点の快投を披露。「頑張ったらプロになれるよっていうのを、ちょっとは見せられたかな」と、少し照れくさそうに胸を張った。
支配下になってからも大切なこと
福島にとって、支配下昇格は通過点にすぎない。今年1月、成人式を終えて鎌ケ谷に戻った右腕は「今年もけがなく、1年やれればいいです。支配下になれればいいですし、焦りがないのもおかしいですけど、けがしないことが一番です。支配下になってからも大切なので」と、すでに〝昇格後〟を見据えていた。今後訪れる公式戦でのプロ初登板や初勝利も、全て通過点。今は千賀のようなスター選手になるまでの階段を、一歩一歩上っている最中だ。