「去年の対佐々木くん。名護での試合のストレートをセンター前に打ったイメージがすごくあった。(起用が)ピタリ、ピタリです」
ー覚えていたのか
「覚えてた。それだけです。ハハハ。決まった、決まった」
ー水野が良い打撃を続けている
「うん。言ってたっしょ?キャンプ中から。水野くんは今年やりますよって」
ー下位打線の若手が活発
「もう、無我夢中ですよ。ただそれだけ。レギュラーを取りたいとか、そういう気持ちは一切ないです、彼らには。一試合一試合、自分の持っている力を練習からしっかりやっているから、ここで出せる。練習でやっていなかったら、ここで出せないから。その練習をしっかりしてくれていますよね」
ー水野は新人時代より成長しているか
「成長を感じますね。打球の質が美しいというかね」
ーライナー性の打球か
「うん。こういうゲームを勝ったので、あとは万波くん、グワチョ(マルティネス)、レイエスですね。このへんが同時に一気(に活躍)は、なかなかないのでね、野球は。入れ替わりでいいバランスで調子を上げてくれたらね。まだ3試合だからね」
ー開幕カードで2勝1敗は大きい
「大きいけど…この勝ち方がすごく成長につながる。田中(正)くんもそうだし。きょうは(九回に)ポランコがランナーに出てたら金村くんだった。この状況で金村くんにも成長させたいという意味で、用意はしてもらっていました」
ー1点差で勝ったのは去年からの成長か
「まずはね、まずは。これから、いろんなことがあると思う。ここからさらに、1点差じゃなくて、もっと差を広げるかもしれない」
ーここ2年とは違う
「(チームを)変えたんですよ(笑)。2年間で変えたって書いといて。ハハハ」
ー気持ち良くホームへ帰れる
「はい。移動してきます。ありがとうございました」
【試合前】
ー開幕戦の無死1、3塁で動かなかった(結果は田宮が中前適時打)。動くことも考えたか
「いや、それが作戦だから。でも、2年間やってきたことをその場でできるようにはなっていますよ。急ではないから。いいんです、成功したら選手のおかげで。失敗したら僕の責任。なんでここでエンドランやと。本当にいつも思うんですけど、犠牲フライも意外と難しいじゃないですか。ヒットを打つのも難しいでしょう。そんな時に、2ボールからストライクを取りにくる球をコンと転がしてくれて、1点。次の回もそういう場面が来たら1点。1点ずつ。ピッチャーがいいから、そうやって勝ちたいんですけど、昨年も一昨年も、当たらない。ど真ん中のカーブ、当ててよーと。『なんちゅう采配しとんねん、ボケ』と言われるんですよ、これが」
ー策は終盤の1点がほしい時に
「いやいや、そんなことない。初回から。つながって1点、2点を取った後の3点目とか。最後はもう、基本的にはマーフィー、金村くん、正義くん。河野くんも含めて。北浦くんもいいしね。マーフィーがあまり調子良くなかったりしたら、そこに杉浦くんがポンって入ってきたりとか、日によって(継投パターンを変えられる)。今年は僕がやっているから。ただね、きのう(30日)、北浦くん、マーフィー、山本くんを用意しておいてって言ったら『ブルペン2つしかないです』と。真ん中で投げさせろよって(笑)。プレートないけど、感覚で投げさせろって(笑)。どこの球場も2つなのね。(急に準備させるのは)やっぱり厳しいみたい」
ー3戦目もつなぐか
「例えば体の調子とか気持ちを聞いて。休みたいか聞いても、休みたいとは言わないと思う。それでもね、だいたい分かってくるんじゃないですか。コミュニケーションを取って、表情で」
ー連投した後など、休養日を設けることも
「それも考えているんです。ただ、いけるんだったら5、6(連投)も。いける選手という判断ができたら。それで給料が上がるでしょう」
ー投手起用も含めると、采配は忙しい
「ブルペンのピッチャーの様子も見ないといけないし、試合も見ないかんし、投げているピッチャーも見ないかんし、交代も見ないかんし、相手も見ないかん。目が4つくらい欲しい(笑)。だから監督ってこう(首を回す動作)しているのかな」
ー佐々木くん対して、去年とは違った攻撃の仕方をするか
「真っすぐを待って、いろいろなボールに対応できます? 昔、大魔神・佐々木さんがいた時の横浜戦は八回までが勝負。もう九回は無理だから。真っすぐ待ちで対応していても全く打てない。ちょっと考え方を変えてみようと。僕、カーブが好きだったから、真っすぐじゃなく、(狙い球を)カーブにしたんですよ。カーブだけしか狙わない。真っすぐが来たら、もうわざと着払いみたいな空振りをして。その後からはカーブ、カーブ、カーブ、カーブで。カーブだけを狙うと、フォークに意外と止まるんですよ。真っすぐを捨てているから。それでホームランを打たせてもらったりしました。(別な日には)真っすぐをカーンと捉えたと思ったら、横浜の新庄の旗に落とされて、ツーベース。なんか俺、もっているんですよね。(田中)幸雄さんも(サヨナラ本塁打でダイヤモンドを回っている時に)抱きつくし(笑)」
ー狙い球を絞らなければ、ダメか
「絞らなきゃ無理。(狙い球以外が)3つ来たら終わり。真っすぐを待って捉えられるボールでもないですし。打席に立たないと分からないですけど」
ー佐々木に対してバントも難しいか
「しにくいでしょ。練習できんし。153キロのフォーク打てます? 打てんでしょ? うちのピッチャー147キロの真っすぐなのに(笑)。きょう勝ったら自信は付きますよ」
ー球数を投げさせる作戦は
「その考え方もダメなんですよ。消極的になる。俺はあまり好きじゃないかな。みんなはそう言いますけど」
ー(風速表示を確認し)
「風速9メートルでも難しいね。俺が現役時代は15メートルとかあったんすけど、フライが上がったらもう笑けて仕方ない。みんな子どもみたいにそのボールをうわーって」
ー新庄監督が現役時代にミスをしているイメージがない
「ないない。練習から見ていますね。打撃練習で、ここに飛んだらこういうふうに風の影響を受けると。風速表示を見ながら。まぁセンス。それしかない。動物的勘というか。東京ドームとか、(飛球処理が)すごい難しかったですよ。フライが上がったら、もう全く見えない」
ー天井が真っ白で
「そうそう。ただ、白いところと白いところの間がちょっとだけ灰色になっている。そこを通る時に見ていました。白いところを見てしまったら無理。あとはアメリカの太陽。真正面になる時があったから」
ー(30日のリクエストに触れ)
「難しいですよ。三回、四回で1回を使いたくないから。一番使いたいのはホームベース。ホームベースのクロスプレーで2回とも使いたい。その他はノーアウト以外は使いたくない。ノーアウトではもう、どうしようかなと。(要請するための)秒数制限もあるし」
ー本来は終盤に残しておきたい
「もちろん。もちろん。使いたくないですよ。何なら1回にしてほしい。2回は…これも野球の楽しさだけど、長くならない? (試合時間の)短縮じゃない」
ー大谷と水原通訳の金銭問題で、新庄監督の大金を失った事例が話題になっている
「大谷くんの何倍? 俺は22億だから。22億あると思って2000万だったらどうします? さあ、野球が終わった。22億でモトクロス場を造って、いろいろ遊ぼうと思って、フタをあけたら…。俺、4回くらい(通帳を)見たもん。22は合っていたから、あとは0の数でしたね。あれ、あと(0が)何個かなと。笑いが出てくる。(お金の管理を任せていた知人と)会って話したんですけどね」
ー許したのか
「さあ、どうやって取り返そうか。警察に言っても、日本のルールだと破産宣告をしたら、もう戻ってきませんと。どうしようって」
ー普通なら頭を抱える
「これは体験しないと分からない。矢沢永吉さんも。5億円以上」
ー大谷の状況と新庄監督の経験は似ている点も
「俺は(大谷の)お兄ちゃん(笑)」
ー当時は忘れるように努めたのか
「日本で暮らしたくなかった。(だまされたのは)身内だったから。このまま人間不信じゃないけど。言ったって、もうお金がないから、さあ、どうしようと」
ーそこから大復活。バリ島でモトクロスのコースを造って
「あれは(工面した)8500万円で造った。他人に使われるんだったら、自分で使おうと思って。バイクを乗ってね。東京ドーム半分ぐらいの広さ。男4人でね。幸せな気分があった。そこから全くお金がなくなって、残高が780円になった。これはやばかばい。これはトライアウトを受けようって。最低年俸の1500万円ぐらいもらえたらいいなあと。俺は運を持っているから、時の流れに身を任せようと思ったら、監督かい! それは頭になかった!」
ー人生が一変した
「俺、いつ死んでもいいよ。こんな人生を送っているので。楽しんできたし。今後の予定も全くない。今が一番楽しい。今までの人生の中で一番楽しい。アメリカの時も楽しかったね。挑戦している時ってやっぱり楽しい。ただ、お金がないと不安な気持ちになって、去年みたいな(思い切った)采配はできない」
ー常に守りに入らない印象
「現役時代、守りは好きでしたけどね。人生は守りに入らないですね。人がやっていないことをするのが大好き。今後、40何歳でトライアウトを受ける選手がいて、合格して、活躍することが(あるかもしれない)。そういう勇気があればね」
ー大谷には、気にするなと伝えたいか
「人間だいたい3日で忘れるから。大丈夫、大丈夫。俺は20何億失って、2000万円しかなくなった。ただ、やられた方は、そういう(金額の)問題じゃないんですよ。お金なんかどうでもいいんですよ。信用していた、親みたいにかわいがってもらっていた人に、何十年もだまされ続けたことの痛みが、ものすごく苦しい。人間不信になりかける。そこだけ。でも俺はポジティブだから、あの件がなかったら、こっち(日本)に戻って来ていない。トライアウトも受けていない。この経験をさせてもらえていない」
ーお金があったら、監督業もやっていないか
「お金があったらね。向こうでヴィラをいっぱい造って、ビッグボスホテルみたいなものを造っていた。(バリ島は)安いんだもん。それで暮らしていたと思う」
ー今となっては良い経験と言えるのか
「めちゃめちゃ良い経験。感謝とまではいかないけど。腹は立つけど、心の傷を負っただけで憎しみはあまりないかな。こうなった後で考えるとね。ただ、自分たちが経験するとね…。(飼っていた)ワンチャンのご飯、どうしようかなと考えたから。ワンチャンが年を取ってきて、日本の病院なら完璧に治せるかなと。そういうのも重なってね。それよりも吉村さん(チーム統括本部長)ですよ。だって俺を監督にできます? 俺だったら、せんもん。すごいですよ。今年は恩返しと責任は果たします。2年間は我慢してくださってありがとうございますと。責任は僕にあります」
ー未来を切り開いたのはチャレンジ精神
「チャレンジ精神に吉村さんの心も動いたのかな。聞いていないですけど、そうかもしれないとは思います」
ー(自ら)
「映画を作ってよ。小さい頃、エスビーのタンクトップを着て。野球をやっていなかったら、土方か植木屋になるっていうところで、ちょっと野球がうまくて。タイガースに行ってメジャー行って、日本人初のワールドシリーズとかにも出て、22億もだまされて、監督にもなって、今年優勝でもしたら」
ーオファーが来そう
「ね! 題名は…ツーツー(22)ライフ。剛志のツーと22億をかけて(笑)。ギャラはいらないよね。こういう人生を送っていますけど、世界規模というか、俺なんかよりすごいレベルの人はいっぱいいるので、ちっぽけとしか思っていない。俺ってちっちゃいなと。いつも言うんですけど、東京の街を歩いていたら『なんで俺、六本木ヒルズくらい建てられていないのかな?』とか」
ーそういう発想に
「そういう発想。一軒も持っていないんだと。ちっちゃいわって」
ー今から、できるかもしれない
「やろうと思わない。十分、楽しんでいる。楽しそうでしょ? バラエティーとかにも出させてもらってね、なんで俺、呼ぶんだろうといつも思う」
ー需要があるから
「じゃあ、俺が言ってることはカットするなよね。ほぼほぼカットやで。ピーどころか(バツ印をスタッフにやられたジェスチャー)。来たいでしょ? 現場に?」
ーチームの話しに戻るが、田宮も去年のラスト10試合でチャンスをつかんだ
「いやいや俺、1年目から田宮くんは期待していた。ただ、ここ(右肘を押さえながら)に爆弾を抱えていたから。いいバッティング、いい振りをしているなと。結果じゃなくて。(当時は)肩が良くないから、やっぱりキャッチャーは(盗塁を)刺してほしいじゃないですか。まだちょっと時間がかかるな、と思って。ただ、本人は去年、一気に肘が良くなって。2軍で成績を出していなかったんですけど、ちょっと呼ぼうと。使ってみたら、すごいボール投げ出して、これは面白いと。ここからは自分でつかむか、つかまないか」
ー(自ら打撃の話題に触れ)
「今、(ソフトバンクの)山川くんが調子いいじゃないですか? 山川くんが9人いる打線と、近藤くんが9人いる打線で、どっちが強いと思います? (近藤パターンで)フォアボール、フォアボール、フォアボールでカーンか、山川くんみたいにポーン、ポーンで打てない打てない、ホームランホームラン。どっちのほうが点数が入るんだろう?」
ー近藤9人の方が怖いかもしれない
「ですよね。そういう教育をした方が早いのかなとも思う。田宮くん、細川くん、水野くんとか、粘る粘るで、甘い球を打つ。(ランナーが)たまるたまるたまる。まあ、それ(タイプ)がバラバラだから野球は面白いわけで。2ストライクをポンポンと取っても3―2までいって、なんかレフト方向とかねえ。詰まりながらもいやらしい。(粘る打者が)9人いたら試合、終わるのかなって(笑)。野球が楽しくならないよね。ピッチャーも4回ぐらいで100球いったら大変ですよね」