■パ・リーグ2回戦 楽天2-4日本ハム(4月3日、エスコンフィールド北海道)
自己最多10奪三振で今季初白星
あと8人だった。日本ハムの北山亘基投手(24)が、今季初登板初先発で6回⅓を投げ、2安打1失点と躍動。七回1死まで一人の走者も出さないパーフェクトピッチングを披露し、自己最多の10三振を奪って白星を手にした。
チャンスとピンチは紙一重
以前から右腕は「新庄監督がくれるチャンスは、ピンチと紙一重」だと認識している。開幕ローテーションは勝ち取ったが、5番手。結果次第では、登板後に2軍行きが通達される可能性も十分にあった。危機感を持ちながら、自身の開幕戦となる「4・3」に照準を合わせ、準備を進めてきた。
松本剛から「おまえも攻めろよ」
そんな中で、尊敬する2人の先輩とのコミュニケーションが、北山の心を軽くした。1人目は、「個人的にも目をかけてもらっているというか、気にかけてもらっている雰囲気をすごい感じる」という選手会長の松本剛だ。開幕ローテ入りが決まった後、話をしに行くと「常に攻めて行けよ。今の状態をキープする気持ちでは良くないぞ。俺も頑張るから、俺もどんどん攻めていくから、おまえも攻めろよ」と背中を押された。
攻めて攻めて常に挑戦
現状維持ではなく、常に挑戦。北山自身も大事にしていることだ。慕っている先輩からもらった熱い言葉に「僕も守りに入ったり、キープしようとすると、ダメだと思う。僕はどんどんどんどん攻めて攻めて、よりよい自分をまたつくっていく中で、開幕を迎えられたら。そういう気持ちで行きたい」と刺激を受け、「剛さんとは選手会でも一緒なので、そういうところで関係性ができて、日頃から常に気にしてもらって、いい声がけをしてもらっている」と感謝した。
偶然訪れた10分ほどの〝金子塾〟に感銘「いくら払っても足りない」
もう一人は、「心の底から尊敬している」と最敬礼する金子千尋2軍投手コーチだ。3月24日、鎌ケ谷で調整登板を終え、寮前で取材対応をしていた際に偶然、顔を合わせ、約10分ほど言葉を交わした。身振り手振りを交えながらの〝金子塾〟を終え、右腕は「いやー、本当に貴重な、ありがたい時間でした。いくらお金を払っても足りないです。本番の前に、ここでこうやって話を聞かせていただけたのは、すごく大きい。もし良い投球ができたら、今の時間の影響はすごくあると思います」と、充実の笑みを浮かべていた。
先発転向時も相談に乗ってくれた
昨年の先発転向直後から、大先輩は親身になって相談に乗ってくれていた。「本番前に、金子さんにお会いできたのはすごくうれしい。去年、先発転向するにあたって、鎌ケ谷で最初に過ごした時期からすごいサポートしてもらっていたんです。きょうお会いできて、顔を見てもらって、頑張っている姿を見てもらったと思うと、またより一層頑張りたいなという気持ちになる。少しでも近づけるように頑張っていきたいです」。見るものを魅了した快投の裏には、憧れのレジェンドとの何にも代えがたい10分間があった。
チームのエースになることが目標
2人の先輩に後押しされ、文句なしの結果を残した。エスコンのお立ち台では、下の名前をもじった決めゼリフの「さいこーき!」を絶叫した。完璧な滑り出しを見せた24歳の今季の目標は、「日本ハムのエースになること」。このまま、チームの中心へとのし上がっていく。
以下、試合後の一問一答。
■ヒーローインタビュー
―今季初のお立ち台。感想は
「僕の下の名前はこうきっていうんですけど、きょうは勝てて、(大声で)さいこーきでーす!」
―チームの本拠地初勝利。投げ終えてどうか
「僕自身にとっての開幕戦で、すごく緊張した中ではあったんですけど、何とか試合をつくりたいという気持ちで1球1球、集中して、その結果が七回途中まででしたけど、ある程度、投げられたので良かったかなと思います」
―七回1死までパーフェクト。記録への意識は
「正直、投げながらもう体力がしんどかったので、早く1本出た方がいいなと思いながら投げていたんですけど、もっともっと練習して体力をつけて、次は本当にできるように頑張りたいなと思います」
―自身初の2桁三振。良かったところは
「僕の強みは真っすぐだと思っているので、それできょうは空振りも取れましたし、バッターを差し込むこともできていたので、そこが良かったんじゃないかなと思います」
―早い段階で打線の援護もあった
「まず初回に1点を取っていただいて、すごく気持ちも楽になりましたし、その後も援護点、絶対あると信じて投げた結果、横にいる万波が打ってくれた。彼はいつも僕が投げるときにホームランを打ってくれるので、信じていました」
―開幕ローテを勝ち取った。託されたときの思いは
「まだまだきょう1試合で、何も決まったことはないですし、この内容、それ以上のものを通年続けていけることが、本当のローテーション(投手)だと思うので、次に向けてしっかりやっていきたい」
―おととしは開幕投手。違うスタートか
「プロに入った中で、しっかり自分なりに日々取り組んで積み重ねた中で、今回は先発のマウンドに立たせていただいたので、当時とは違う心境で投げることができました」
―今後へ向けて
「ファイターズはすごく今、良い雰囲気で、優勝目指して全員が頑張っている状態なので、シーズン終わるまで全員で全力で頑張っていくので、引き続き応援のほどよろしくお願いします」
■試合後取材
―振り返って
「本拠地で、きのう惜しい試合で負けていたので、きょう何とかチームが勝てたら良いなと思っていたのと、あとは自分自身の初登板でもあったので、2つの意味ですごい緊張してはいたんですけど、初回勢いよくスタートできて、そこから徐々に疲れはあったんですけど、ある程度、試合はつくれたので、良かったかなと思います」
―どのぐらいで落ち着いたか
「初回、1アウトとった後からはちょっと落ち着いたというか、自分のペースである程度、行けるんじゃないかなという気持ちになりました」
―田宮との会話は
「ちょっと投球の中で偏ったりとか、崩れそうな雰囲気が出たりするときがあるので、そういう予兆みたいなものをお互いに、ちょっと傾向があるねみたいな話をして。そういうときにこういうふうに修正していこうというような話と、あとは変化球と真っすぐを、どういう割合で行くか。バッターの反応も見つつ、こういう組み立てをしていこうというのを、イニング間には相談しながらやっていました」
―マウンドに立って、気持ちはどうだったか
「やっぱりホーム球場は、ビジターよりすごいファンの方が応援してくださる声援も届きますし、そういう意味では初登板がホームで投げられたのは良かったです。5戦目というところも、大事なポジションを任せてもらったというところにすごく責任も感じますし、任せてくれた粋な気持ちも感じますし、それにも応えたいなという気持ちでした」
―一番良かった球種は真っすぐか
「基本的に真っすぐで押せて、その中で変化球で緩急をつけて抑えられた。真っすぐが1つ、軸であったので良かったかなと思います」
―初回に150キロ台中盤が出て、二回からは140キロ台後半。意図的か
「そうですね、初回はいつもちょっと飛ばした方が、ある意味良くなったりする傾向があったので、飛ばしていこうと思って。1アウトとって、ある程度、自分の中で流れができたので、二回以降は落ち着いて、あまり力みすぎずに行こうかなと思って、投げました」
―カーブでカウントをとっていた
「そうですね。カーブ。きょうはフォークがかなり機能して、初回、二回、三回、うまく使えていたので、軌道も真っすぐに近いボールなので、そこもうまく真っすぐと並行して使えていたので良かったかなと思います」
―パーフェクトの意識は
「全然していなかったんですけど、五回ぐらいからファンの方の声援がだんだん不自然な感じになっていたので、何か違うな-、あ、そういうことだと思って。あんまり気にしていなかったんですけど、球場の雰囲気で、そうなのかなと思いました」
―どんな感じだったか
「例えば2ボールぐらいで不自然な拍手だったり、空振りを取ったらすごい、今までにないような拍手だったり、ずっと後押しされているような、後ろから押されているような気分だったので、すごいそれは今までにない経験で、ありがたいなと思いながら投げていました」
―記者席もざわざわしていた
「本当ですか。僕が一番無理だと思っていたので。周りの期待感と、僕自身の無理だよーって気持ちが、一番離れていた。投げながら体力的にきついなとは思っていたので、そこはありつつ、逆に1本出た方が早く楽になるのになとは思っていて、七回に1本打たれて、ランナーを出して、その後抑えるのが、チームが勝つ意味では一番うまくいくんじゃないかなと思っていたんですけど、ちょっとそこを最後投げきれなかったのは悔しかったです」
―野球人生で大記録の経験は
「高校のときはノーヒットノーランとかありました。まあレベルが全然違うのであれですけど。もっともっと体力をつけて、今やっている技術練習だったり、今より良くなるためにやっている部分が煮詰まってくれば、そういったところに近づけるんじゃないかなと思うので、またしっかり練習したいなと思います」
―開幕ローテを争ってつかんだポジション
「初戦といえど、1試合に過ぎないので、今回、開幕のカードに立たせてもらったのは一つ、すごくうれしいですけど、それで不甲斐ないピッチングをしていたら何も意味がない。そういうプレッシャーもよりかかってくる。今回はある程度、良いピッチングができたので、また次、慢心せずにしっかり準備して、きょうと同じか、それ以上を目指してやっていきたい」
―疲れは六回ぐらいがピークだったか
「そうですね。きょうは100球を超えてはいて、そういった体力はやっぱり投げていかないとつかないものだと思う。走り込みだったりトレーニングももちろん大事ですけど、こういうものは投げて投げて身につけていくものだと思う。またイニングを任せてもらえるような信用を、このピッチャーならもう1イニング行かせたいって思ってもらえるような、そういう積み重ねで、体力も必然的についていくんじゃないかなと思うので、次は七回投げきれるような準備と、しっかり練習していきたい」
―今季いろいろと変えて臨んだ部分は、きょうの結果で自信になったか
「そうですね。ある程度のコントロールがあって、ゾーンで勝負できれば、特に大きく問題はないと思うので、あんまりボール1個分、半個分というコントロールよりかは、ゾーンでしっかり自分の強いボールを投げて、質の良いボールを投げて勝負するというのが僕のタイプだと思う。それ以上を求めすぎても逆に良さがなくなってくるんじゃないかなと思うので、そういう意味ではだんだんと良さは出てきているんじゃないかなと思います」
―新庄監督が、じゃんけんに負けて良かったと言っていた
「本当ですか。まあ、勝たせてくれるような出し方してくれていたので。僕もそれをすごい粋に感じて、任せてもらえる喜びと、責任感をすごい感じていたので、とりあえず1試合、良かったかなと思います」
―「さいこーき!」は次も
「それは継続して。僕のきょう、さいこーきと言えることを一番の目標にしていたので。毎日ノートを書くんですけど、あした、さいこーきって言うと決めて書いていたので、それがかなった。またこれがファンの人に喜んでもらえるようなフレーズになれば、そのときはチームも強いと思うので、そういうふうになればいいなと思います」