平野さん代表「オーバーベイ」がマネジメント

　カナダの２０歳以下のジュニアアイスホッケーリーグで活躍するＦＷ磯谷建汰（１９）が、６月に行われる世界最高峰・ＮＨＬのドラフト候補に浮上している。マネジメントするのが２０１４年ソチ五輪の女子日本代表〝スマイルジャパン〟のメンバーで、札幌出身の平野由佳さん（３７、札幌第一高出）が代表を務める「ＯＶＥＲＢＡＹ（オーバーベイ）」だ。平野さんは「一番近くにいる一ファンとしても見てみたい」と、日本人ＦＷ初のドラフト指名を心待ちにしている。

長野出身の磯谷選手「日本人でもできると証明したい」

　磯谷選手は長野県出身。昨季はアメリカのジュニアリーグ最高峰、ＵＳＨＬのヤングスタウン・ファントムズで日本人として初優勝すると、今季からカナダに３つあるジュニアリーグのひとつ、ＷＨＬのウェナッチーワイルドに移籍。３月まで行われたレギュラーシーズンでは、６４試合で３１ゴール５７アシスト、８８ポイントをマーク。ＷＨＬ米国地区のベストフォワードに選出された。ジュニアといっても、給料が発生している、れっきとしたプロ選手だ。今年１月には北米の主要アイスホッケー情報誌が「過去２年で指名漏れの注目選手１０名の１人」として掲載。現在、プレーオフまっただ中だが磯谷選手は「ＮＨＬ出場だけではなく、キャリアを積み、日本人でもできると証明したい。いま日本で頑張っている次の世代の選手たちに夢を与えたい。ＯＶＥＲＢＡＹのサポート、マネジメントなしではここまで来れなかったので感謝している。ＮＨＬに行って恩返ししたい」と、メッセージを寄せた。

現役引退後は「ビジネスマンとして挑戦したい」

　平野さんは現在神奈川県在住。１６－１７シーズン限りで現役を引退後すると、１３年に入社したローソンで社業に専念した。「小さい頃から代表に選出してもらい、良いことや悪いことを見てきて、少しホッケーから離れたい、という思いもありました。３０歳を機にローソンに正社員として入社し、ホッケー以外で自分のキャリアを築いていきたい気持ちもあった。自分がどれだけ社会人として通用するのか、ビジネスマンとしてチャレンジしたい」と、人事担当として会社説明会で全国を飛び回っていた。

夫・有波さんはプロのホッケーコーチ

　２０２２年１月に、カナダ・オカナガンホッケーアカデミーでコーチをしていた有波典さん（つかさ、３５）と結婚。有波さんはカナダホッケー連盟最上位のコーチ資格「ＨＰ１」を所有するプロのホッケーコーチ。平野さんは「海外に行きたい選手で実力があっても、経済面など様々な理由で行けない選手もいる。そういった方々に、海外のノウハウを夫が持ってるので、子供たちに伝えたい」と、同年５月にスポーツマネジメント会社「ＯＶＥＲＢＡＹ」を設立。二人三脚で新天地での生活をスタートさせた。

以前から磯谷兄弟をサポート

　有波さんは主に以前から行っていた磯谷兄弟のマネジメント業を担当。「チームを探すことから。困ったことがあれば、マネジメントする。テクニカルな面で悩みや困っていることがあれば、相談に乗る」。平野さんは「英語もネットワークも、まだまだそのレベルには達していない」と、主に日本国内で小中学生対象のスキルキャンプを担当。磯谷選手とは家族ぐるみの付き合いで一緒に食事をする事もある。事業は順調に進み、２３年１０月に活動の拠点を本格的に日本に移した。今年３月に安平町で行われたキャンプには道外から参加者が来るなど、毎回キャンセル待ちが出るほどの人気ぶりだ。

ＮＨＬのドラフト指名受ければ日本人３人目

　磯谷選手がＮＨＬのドラフト指名を受ければ、日本人では史上３人目。１人目は１９９２年のＤＦ三浦浩幸さん（釧路緑ケ岡高出）。２人目は釧路出身で２００４年のＧＫ福藤豊（４３、栃木日光アイスバックス）。０７年には日本人として初めてＮＨＬでプレーしたパイオニアだ。有波さんは「これまでの日本人ＦＷと比べても別格。攻めて守れる、コンプリートパッケージ。オールマイティーなタイプ。中でもプレーメークの技量、技術はすごいですね。プレーを繋げる能力とスケーティングのスピード」と、期待を寄せる。

日本アイスホッケー男子の発展につながれば

　将来の五輪出場の夢も広がる。女子は平野さんが出場した２０１４年から３大会連続で出場中。４月の世界選手権の結果次第では、４大会連続の出場が決まるが、男子は開催国枠で出場した１９９８年長野五輪の一度だけで、今年８月には２６年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の最終予選が待ち受ける。「アイスホッケーが盛んになるには、男子の競技力も上がらないと、マイナースポーツから抜け出せない。今回の建汰の活躍がそのきっかけになったら嬉しい」。金の卵を全力でサポートする。