元プロスカウトの経験生かす OBの上村和裕さんが北照野球部のテクニカルアドバイザー就任
選手14年、スカウト8年の経験伝える
甲子園に春夏通算10度出場している北照に、OBで元プロ野球選手の上村和裕さん(41)がテクニカルアドバイザーとして就任した。昨季限りでスカウトを務めたオリックスを退団。昨年12月から学生野球資格回復制度の研修会を受け、今年2月に認定を受けた。現役時代の選手経験とスカウトとして8シーズン、プロの卵を見てきた鋭い眼力でチームの底上げに尽力する。
「北海道の生徒たちのいい刺激になれば」
スカウト目線で後輩の育成を手助けする。3月の三重・四日市遠征からチームに合流。「北海道で育って北照高校出身。そこは恩返ししなきゃいけない。いろんな経験もさせてもらっているので、それが北照のみならず北海道の生徒たちのいい刺激になればいいし、何かのきっかけになれば」。同校で3学年先輩の上林弘樹監督(44)は「こっちに戻ってくる話を聞いたんで、ちょっと頭打ちしているから力を貸してほしいとお願いした。新しい風を吹き込んで欲しい。野球の深いところを知っている。理論派で引き出しが多いから、めっちゃ期待してます」と、厚い信頼を寄せている。
ドラフト3位で01年オリックス入団
滝川市出身で2000年春の選抜甲子園に正捕手として出場。同年秋のドラフト3位でオリックス・ブルーウエーブ(現オリックス・バファローズ)に入団した。06年に広島へ移籍し、14年オフに現役を引退。1軍の通算成績は26試合で打率0.174。「全く実績を残してない。それでも自分なりに努力したところ苦労したところはある。プロって『自分のこれだって』答えを見つける作業だったと思う。それがなかなか見つけられなかった。その中でも何個かは自信を持ってできることもあった。ブロッキングやキャッチングは自分なりにできた」。14年間の現役生活に「やり残しは一切ないです。別に誰かを否定するわけじゃないけど、いつでも辞める覚悟で自主トレからやっていた。特に現役後半は自主トレで死ぬほどやった自信はあった」。引退後、すぐに古巣からスカウトとして声がかかった。
プロのスカウトは選手のどこを見るのか
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のべ8年、金の卵を発掘するために全国を飛び回った。20年を除き、主に北海道、東北、関東を担当。選手のどこを見るのか。上村スカウトが経験を重ねてたどり着いた結論は「やっぱり第一印象はすごい大事にしてました。ひかれる魅力というか。自分なりにルールを決めてやっていた。当時の編成部長に言われて、自分なりの評価の点数をつけてトータルで考えた。すると得意、不得意な部分が明確に見えてくる」。
5日間で1000キロ以上、道内を走り回った
北海道内をレンタカーを借りて、5日間で1000キロ以上走ることなど朝飯前。「札幌で1試合目を見て、3試合目は旭川とか全然平気。そんなもんじゃない人も全然いるんで」。ライバル球団の担当スカウトと試合会場のバックネット裏で顔を合わすこともよくある。毎年ドラフトが近づいてくる9月になると「全員うそつきになる(笑)」。笑顔で話しながらも、水面下では激しいバトルを繰り広げた。
「自分の担当した選手はみんな思い出です」
苦労して獲得に成功した選手、指名に至らなかった選手、手帳に書き込んだ選手の数は膨大だ。「自分の担当した選手はみんな思い出です。自分が担当として持っていた地区で活躍する選手、獲れなくても他球団で活躍する姿を見ると自信になりましたね」。その逆もしかりで「悩むこともあった」と言い「正解はない」と言うのが、上村さんが導き出したスカウトの真実だ。
3月の遠征に帯同、アドバイス求める選手続出
一つのきっかけで一気に伸びる選手、また伸び悩む選手、成長のペースはさまざまだ。「高校生に関しては、全員伸びると思っている。1カ月あれば全く違う良い選手になったりする。人それぞれ伸びるタイミングがあるので、個々の伸びる能力をテクニカルにアドバイスできたら。選手には最初に言ったんですけど、『練習にしても試合にしても、引き出しの数が多いのが良い選手の条件かな』と思うんで、それがひとつでも増えてくれれば」。遠征中の宿舎では「うまくなりたいと思って、聞きたいと思って来る子がいる」と、早速、上村アドバイザーの部屋を訪ねる選手が続出したそう。
「選手の自主性をうまく引き出したい」
今後も練習や試合には可能な限り帯同する。19年夏を最後に甲子園から遠ざかっているが、「誰かが変わったなって思ったら、みんなやる。口で説明するよりも実際にアドバイスして変わったという実体験の方がわかりやすい。選手の自主性をうまく引き出したい」。独自の視点と助言で母校の甲子園出場を後押しする。