田宮裕涼 6年目でブレークの秘訣(ひけつ)とは 23歳の新星をよく知る2人に聞いた
売り出し中の正捕手候補 巧打&強肩の秘密を探る
プロ6年目の日本ハム・田宮裕涼捕手(23)がシーズン開幕から好調だ。天才的なバッティングセンスと〝ゆあビーム〟と表される強肩で、存在感を発揮している。彗星(すいせい)のごとく現れた正捕手候補をよく知る岩舘学2軍内野守備走塁コーチ(42)と、山中潔2軍捕手インストラクター(62)にブレークの訳を聞いた。
開幕スタメンから全力アピール 打率は現在.458
昨季までの1軍出場は31試合。2軍暮らしが長かった23歳が一躍、スポットライトを浴びている。今季は自身初の開幕1軍入りを果たし、開幕戦では先発マスクをかぶり、攻守で躍動。4月5日の西武戦(エスコン)では自身初の3安打猛打賞をマークするなど、ここまで.458と高打率を残している。
担当スカウトでもある岩舘コーチ 「想像はしていました」
担当スカウトで千葉・成田高の先輩でもある岩舘コーチは、活躍ぶりをこう見ている。「想像はしていました。新庄監督との縁もあるだろうし、アイツが持っている運もあると思います」
オフに交わした約束を忠実に遂行 つかんだ開幕マスク
直属の後輩とは、去年のオフにこんな約束をしたという。「まずキャンプはしっかり、けがなく乗り越えて、開幕のスタメンを一番の目標にしておけ」。そのために、やるべきことを決めた。
「とにかく、けがしないでキャンプを乗り切って、オープン戦はそこそこでいいから結果を残す。開幕スタメンを勝ち取るために、伊藤(大海)とコミュニケーションを取る」。その教えを忠実に守り、開幕マスクの座をつかみ取った。
優れたバッティング技術 課題だったスローイング面でも急成長
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高校時代からバットコントロールに定評があった。「バッティングに関しては、最初見た時から木のバットでも打てるわと思った。あれは天才」。その一方、守備面は課題だった。「地肩は強かったけれど、今みたいに的確にはいかなかった。教える人が教えれば、うまくなると思った。去年、1軍での最後のスローイングを見た時に、コイツずげえ頑張ったなと思いました」。急成長ぶりに驚かされた。
山中氏なくして語れない田宮のサクセスストーリー
2軍で鍛錬を積む日々。岩舘コーチは、親身に指導してくれたコーチがいたからだと思っている。「周りの人の助けがなかったら、こうなってはいない。山中さんがずっと見てくれていたから。山中さんのおかげです」
〝恩師〟は「裕涼が自分で結果を出してつかんだポジション」
山中2軍捕手インストラクターは昨季まで3年間、ファームのバッテリーコーチを務めていた。1軍でハツラツとプレーする〝まな弟子〟の姿に「スローイングも成功と失敗の差が大きかったけれど、かなり小さくなった。体がタフになったおかげで、送球も安定してきた。コツをつかんだのは彼自身だし、裕涼が自分で結果を出してつかんだポジション。僕はサポートしただけです」と目を細める。
室伏式メニューで体力強化に成功
捕手としてNPB5球団でプレーした山中捕手インストラクターは「体が強くないとキャッチャーはできない」という。2軍のキャッチャー陣には、試合前に行う体力強化のメニューがある。臨時コーチとして指導したスポーツ庁の室伏広治長官に習ったチューブトレーニングや垂直ジャンプだ。地道な練習を積み重ね、田宮はたくましくなった。
身も心もタフに 我慢と辛抱が求められる扇の要
優しい性格にも変化があった。以前は試合中にファウルチップが当たると、痛がるそぶりを見せることもあった。「ファウルチップが当たってもグッと我慢できるようになった。我慢、辛抱という言葉がキャッチャーには必要」。精神面もタフになった。
ハッパをかける岩舘コーチ 「ここからですよ。勝負は」
岩舘コーチは「とりあえず1年間、けがなく1軍にいられるかが次の目標。相当ヘロヘロになるし、体重も落ちてくる。ここからですよね。勝負は」
山中氏もさらなる飛躍を熱望 「たぶんやってくれる」
山中捕手インストラクターも「ここからですよね。点を取られて負けてしまったら、どれだけ立て直して試合に出続けられるか。だぶんやってくれると思います」と期待を込めた。
けがなく、試合に出続けてほしい―。田宮を温かく見守る人たちの思いは一緒だった。