【プロになった道産子球児たち 指導者の目線】高校編 ④苫小牧中央・渡邊宏禎監督「根本は一言いったら十やる」
北海道から誕生したプロ野球選手の学生時代を見てきた指導者に話を聞く企画「プロになった道産子球児たち 指導者の目線」。高校編第4回は苫小牧中央・渡邊宏禎監督(55)。2020年に根本悠楓投手(21)が地元・日本ハムに同校から初のプロ入りを果たすと、2年後には斉藤優汰投手(19)が広島に1位指名され、2人目のプロ入りを果たした。タイプの違う2人の高校時代とは。
オープン戦で教え子対決「感無量でした」
3月13日、北広島・エスコンフィールド北海道で行われた日本ハムと広島のオープン戦で2人の対決が早くも実現した。根本は先発、斉藤はベンチスタート。2人の投げ合いは四回に訪れた。根本は4回3失点。2番手で登板した斉藤は、自己最速を更新する156キロをマーク。スタッフ全員と同校野球部3年の弟・翔太さんを連れて、球場を訪れた渡邊監督は「感無量でしたね」と、涙があふれ出たという。
根本は白老白翔中3年時、全国中学決勝で完全試合を成し遂げ、鳴り物入りで入学した。「入った時からプロ志望だった。気持ちはもう強気だし、強気を上回る真面目さ。さらに謙虚。本当にとげのない性格。投手としての身のこなしは、最初から素晴らしいものがあって。フォームなんかもいじるところは、そんなになかった」。将来性は抜群だった。
入学当初の直球最速は121キロ
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ただ実際には中学を卒業したばかりで、直球の最速も121キロ。まだ体が育っていないため、スピードが出ない。それでも「持ち前の真面目な性格でトレーニングをやって、どんどんスピードも上がってきいきました」。1年秋から短いイニングを任されたが、駒大苫小牧の分厚い壁に跳ね返され続け、2年秋まで支部予選を突破することができなかった。「2年秋に地区で負けたあと『こんなんじゃいかん』という思いが、彼の中では強かったのかな。涙流して悔しがってた」。翌春、ついに全道大会出場を果たすと、一気にドラフト候補へと駆け上がった。
鎌ケ谷の寮監を務める本村さんがベタ褒め
何か変わったことをしたわけではない。「取り組みは、最初からすごい子だった。言わなくてもやる。トレーニング方法とかピッチングのフォームについて、何せ一言ったら十やる」。鎌ケ谷の勇翔寮の寮監を務める本村幸雄さん(53)が、渡邊監督の日本体育大学時代の後輩で、ある日「今時こんないい人間いませんよ」と、連絡が来たそうで「教育者冥利に尽きるんです」と、喜びを隠せない。
斉藤は中学まで捕手 プロ志望ではなかった
一方、斉藤は中学まで捕手が本職。「根本とは全く違いましたね。斉藤はプロへ行くつもりがあったわけではなく、彼が本当にプロを決意したのは、2年の秋が終わってから」。進路指導の一環として「どうするんだ? 行くならそんな中途半端な気持ちじゃいけないよ」と助言。3年の春、斉藤の投球を測定すると、球速は148キロ、さらにスピン量はプロでもトップクラスの毎分2560回転を叩きだした。「それまでは、チームのエースとしてどうしようか程度の感覚だったと思うんですけど」とターニングポイントになった。夏の南大会では4強進出に貢献。甲子園には一歩届かなかったが、ドラフト当日、広島市から一般市民が同校に押しかけるなど、同校初の高卒ドラ1が誕生した。
4年間欠かさず登板前、後に必ず連絡くれる
タイプが違う2人だが、登板時には連絡をくれるという。特に根本の場合、プロ入りした21年から登板前と登板後に「明日投げます」「きょうはどうでしたか」と連絡がくる。4年目に入ったいまでも欠かさずにだ。「だから(中継を)見てなきゃいけないんですよ(笑)。可愛いでしょ。すごく称えてくれてて、僕は嬉しいですね」。2人とも将来の球界を背負う可能性は十分だが「息の長い選手になってほしいのが僕の願いですね」。教え子の登板をチェックするのが、今は楽しみでしかたがない。