オリックス・吉田輝星 日本ハム時代の仲間と再会 うれしさと共に別の感情「もう対戦相手という目で見てしまう」
現在の心境、古巣への思い たっぷり語った
もうすっかり、猛牛軍団の一員だった。オリックスの吉田輝星投手(23)が、12~14日に行われた日本ハム3連戦(京セラドーム)で昨季までのチームメートたちと再会し、英気を養った。13日にはマウンドにも上り、移籍後初対戦を終えた。道新スポーツデジタルは、同日の試合前に右腕を取材。開幕から2週間が経過した現在の心境、古巣のメンバーへの思いや、チームを離れて気付いた先輩投手の凄みなどを、たっぷり語ってもらった。
「(石川)亮さんが最初に声かけてくれた」
オリックスのユニホーム姿に、違和感がなかった。「もうファイターズの選手じゃないですよ」といたずらっぽく笑って取材に応え始めた吉田は「だいぶ慣れました。周りの人が良くしてくれたので、慣れるのは早かったんじゃないかなと思います。(石川)亮さんが最初に声をかけてくれて、それは大きかったですね」と、チームに溶け込むきっかけをつくってくれた優しい先輩に感謝した。
新たな投球フォームに着手「一瞬で4月中旬」
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移籍1年目は、新たなフォームに着手するなど、キャンプから無我夢中で突っ走ってきた。「フォームを教えてもらって、それを精いっぱいやっていたので、意外とキャンプもすぐ終わった。オープン戦も、試合の中で(新フォームを)確認しながら、空いている日は練習してという感じでやっていたら、一瞬で4月中旬まで来ましたね。充実していたんですかね」と、表情を緩ませた。
開幕1軍切符を手にし、ここまでチームの全15試合中6試合に登板した。すでに3ホールドを挙げ、上々の滑り出しを見せている。それでも「キャンプから練習したことは結構うまくできているんですけど、〝それが何でいいのか〟というのがまだ、自分で理解し切れていない部分がある。それだと、ただ調子が良いというだけで終わってしまう。まだ、自分のものになっていないなという感覚があるので、そこは日々練習です」と、自問自答を繰り返している。
次々と握手、グータッチ、抱擁
日本ハムとの今季初戦だった12日の試合前には、練習前後にチーム関係者とあいさつを交わした。元チームメートたちに歩み寄ると、すぐに人だかりができ、次々に握手、グータッチ、抱擁。短い時間ではあったが、笑顔で一人一人と言葉を交わし、温かい空気が流れた。
プロ入りから5年間、苦楽をともにしてきた仲間との久々の対面だ。素直に「うれしい」と喜ぶ気持ちも当然ある。それでも心の中には、違う感情が渦巻いていた。「会えたのはうれしいですけど、もうやっぱり対戦相手という目で見てしまう。どうやって抑えようかなって常に考えてしまうし、他のチームよりは見てきたバッターが多いので、自分の配球と当てはめて、どれが合うかなというのは考えやすい。絶対打たれちゃいけないなと思っています」。友だちなのは、グラウンドの外だけ。闘志の火が、メラメラと燃えさかっていた。
恩返しの快投とはいかず、悔しい表情
初対戦は、すぐにやってきた。3連戦の2試合目だった13日に、先発・宮城の後を受け、5点リードの九回から登板。しかし、恩返しの快投とはいかなかった。1死から石井に二塁打を浴びると、2死三塁となって伏見に中前適時打を献上。打球が二遊間を抜けた瞬間、吉田は右手を右太ももに叩き付け、今まで見せたことがないほど悔しそうな表情を浮かべていた。
袂を分かったからこそ、見えるものもあった。12日は親交の深い伊藤が先発し、6回無失点で2勝目をマーク。初めて敵として目の前で見た〝大海さん〟の投球は、吉田に深い印象を残した。
「この人のスライダーやばいな」
「あらためて、他のチームに行って、敵チームというふうに見ると、大海さんはやっぱり良いピッチャーだなって思いましたね。ここで点を取りたいなって、味方を応援していると、余計にそう感じました。今までは味方だったので、〝大海さん抑えてくれ〟という感じの見方をしていましたけど、今は〝宗さん打ってくれ〟と思って見るので。満塁になったときも、ちゃんと(カウント)2―2までに三振を取ったりとか、第3者的な目で見て、この人のスライダーやばいなって、あらためて気付くすごさが、きのう(12日は)たくさんありましたね」
初対戦のマウンドは不完全燃焼で終わったが、古巣との勝負はまだまだ続く。今回、互いが熱望し合っていた万波ら同学年との対決は、実現しなかった。2軍にいて再会がかなわなかった野村や、1学年上の清宮も、いずれは状態を上げてくるだろう。
田宮の宣戦布告に「今までと組み立て違う」とニヤリ
何度もバッテリーを組んできた田宮が「(捕手として)たくさん受けてきたので、チャンスがある。ピッチャー返し。打ち返します」と宣戦布告していたことを聞くと、吉田は「どうですかね」と不敵な笑みを浮かべ、「今は、今までの僕と全然違う組み立てをしている。僕の中ではだいぶ、真っすぐ以外の球種を使えるようになって、変化球の割合が多くなった。その分、真っすぐを生かせるような、真っすぐが良く見える配球ができているんじゃないかなと思っている。実際に、三振も増えました」とニヤリ。コンビを組んでいた頃とは違う、成長した姿で、元相棒を返り討ちにするつもりだ。
人一倍、負けず嫌いの吉田が、次はどんなピッチングを見せるのか。それを、日本ハムの打者たちはどう迎え撃つのか。次回の対戦は、27日からの3連戦。舞台はいよいよ、エスコンフィールド北海道だ。