【’24ドラフト道産子有望株】②1日10合の米を平らげ半年で12キロ増 力強さ増した札幌日大高の精密左腕・小熊梓龍投手
昨春、恵庭南戦で七回参考ノーヒットノーラン
今秋のプロ野球ドラフト会議で指名が期待される選手を先取りする「’24ドラフト道産子有望株」。第2回は札幌日大高で2年春からエースナンバーを背負う左腕の小熊梓龍(しりゅう)投手(3年)。正確無比な制球力を武器に、昨春の札幌支部予選の恵庭南戦では七回参考ながらノーヒットノーランを達成。昨秋は全道優勝した北海に札幌支部予選で敗退したが、リベンジのため半年間で12キロの増量に成功し力強さを手に入れた。理想は同じ左腕でメジャーリーグ・シカゴカブスで活躍する今永昇太投手(30)だ。
関西遠征で智弁和歌山相手に5回5失点も手応え
がっちりした太ももが冬場の鍛錬を物語る。3月の関西遠征では智弁和歌山との練習試合に登板。外野のミスもあり5回5失点(自責4)したが6奪三振で四球は1。「冬に少し肘を痛めたけど、遠征に行ってから痛みとかは全くなかった。強く投げれるようになったのもあって、少し球が浮いていたところを(相手は)見逃さなかった」と、予想以上に増加したパワーを制御するのに初めは苦戦したが「春の大会、夏に向けては順調」とシーズン本番を見据える。
秋の支部予選では北海相手に勝利まであと一歩(投球フォーム動画あり)
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昨秋の札幌支部予選準決勝で夏の甲子園16強の北海と対戦。先発した小熊は六回まで無失点。チームも5-0と大量リードしていた。しかし七回一気に崩れ4失点。1点リードの場面でマウンドを譲ったが、チームは2年連続で北海に敗戦した。「後から考えてみれば、ランナー出た時とか、七回の最初で若干焦ったりしたかもしれない。球数も6回で96球だったので、若干甘くなったり、球威、スタミナの部分で課題が出た」。公式戦での九回完投は1度しかなく、修正ポイントが浮き彫りになった。
〈動画:小熊投手の投球フォーム〉
完投能力上げるため増量作戦
完投能力を上げるため「めっちゃ食べました」と1日3食で米を合計10合平らげる食トレを敢行。同時に下半身を中心にウエートトレーニングを行い、秋の大会から12キロ増の82キロ。増量するに従い「球が強くなってると感じた。増えた分パワーが出てるのは感じています。ストライクを取ることに困ることはないんですけど、あとはその質。暖かくなってきたので、もっと投げ込んで修正していきたい」。智弁和歌山戦で自己最速を2キロ更新する141キロをマークしたが「目標は145キロ、常時140キロ台は出せるぐらいになりたい」と満足はしていない。昨春の全道大会から公式戦で解禁したフォークの完成度も上がり、緩急差がさらに広がった。
日本ハムなど6球団が注目
制球力が光るが、苫小牧ボーイズ時代は「思いっきり頭が突っ込んでホームに体が流れて投げてボールが荒れていた」と、四球から崩れることが多かったそう。高校入学後は「しっかり軸を決めてタイミング合わせて投げることを意識しています。力を入れるタイミング、どこで力を入れれば低い良い球がいくか」と試行錯誤。制球力の良さに地元・日本ハムなど6球団が注目しているが、森本琢朗監督(43)は「まだまだ良くなる」と期待を寄せる。
「調子が良い悪い関係なしに勝てる投手になりたい」
プロへの思いは、昨秋から冬にかけて卒業後の進路を考える中で日増しに強くなっていった。理想は今永投手。「あんまり力を入れてない感じで、すんごい良い球を投げる。打者目線からしたら、見えづらい腕の出方をしている」。力感のなさは小熊と重なる。「活躍してるピッチャーいっぱいいると思うんですけど、調子が良い悪い関係なしに勝てる投手だと思う。その勝つ投手になっていきたい」と将来の夢を口にする。
02年春以来の甲子園へ「歴史変えたい」
創部37年目。同校は小熊が中学3年の時の2021年春の全道大会で優勝したが、夏の南北海道大会決勝で北海に敗れた。甲子園がかかる夏と秋の北海道大会での決勝進出は過去3回ずつあるが、優勝したのは01年秋の1度のみ。「去年の春から1番を着けさせてもらっているんで、自分が勝たせる気持ちで投げてます。歴史を変えたい」。名前の「梓龍」は、三国志の趙雲子龍から名付けられた。柔に剛が増した左腕が、戦国の北海道を一気に駆け抜ける。