《岩本勉のガン流F論》自分に酔い、心を寄せている人へ感謝の思いを
■パ・リーグ5回戦 ロッテ0-2日本ハム(4月20日、エスコンフィールド北海道)
ナイター明けのデーゲーム 価値ある完投
北山の完封は、チームに計り知れない好影響をもたらした。ナイター明けのデーゲームで、リリーフ陣を投入することなく勝利を飾ることができた。監督やコーチ、ブルペン陣から「ありがとう!」という声が上がっていることだろう。
首脳陣からのメッセージが込められた続投
分業制が当たり前になっている現在のプロ野球界。令和において完投、完封を飾ることができるピッチャーは本当に高い能力を有している。八回を終えて106球。おそらく投手コーチは北山の元に続投の意志を確認しに行っていないはずだ。言葉にせずとも、そこには「投手としてもう一皮むけてこい」というメッセージが込められていた。
シャットアウトを手助けしたあの変化球
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なぜ、北山はプロ初完封を飾ることができたのか。前半、2巡目までに、ロッテ打線にカーブを植え付けたことが大きかった。ストレート、スライダー、フォークに加えてカーブ。3巡目以降、各バッターに迷いが生じた。焦り出した打者は早打ちになる。マウンド上のピッチャーにとっては好循環だ。変化球を散らしながら、時に出力も抑えられた。
ベテランへの攻め方も理想的
最後の締めも実に良かった。代打の角中に対して、追い込んでからストレート勝負。最後は空振り三振に切って取った。相手がベテランになればなるほど、勝負球は強く速い球が理想的。変化球だと、巧みに合わせられてしまう傾向が強いからだ。
忘れられないシーン イチローを中飛に打ち取ってプロ初完封
先発完投、そして完封は投手にとってロマン。私は初完封まで2~3度、足踏みした。九回に失点し、悔しい思いをしたこともある。「詰めが甘い」というレッテルも貼られかけていた。そこで成し遂げた初完封。1996年9月11日のオリックス戦。最後はイチローを中飛に封じた。大石清さん(投手コーチ)に褒められた時の喜びは今でも忘れられない。
難しいからこそ、快感もひとしお
だから北山も味を占めてくれ。ペース配分を意識しなければいけないが、考えすぎると保守的になってしまう。難しいからこそ、1人で投げきる快感はひとしおだ。
試合後の駐車場でチュー 感謝の体現は素晴らしいこと
初完封を遂げた日。私は試合後、東京ドームの駐車場で、当時お付き合いしていた方とチューをした。そして記念ボールは、休養して間もない前監督の上田さんへ、代行監督の住友平ヘッドコーチを通じて届けてもらった。北山にも伝えたい。恩師でもいい、両親でもいい、彼女でもいい。心を寄せている人に感謝の思いを伝えることは素晴らしいことだ。そしてきょうだけは存分に、自分に酔ってくれ!