輝星進化の鍵はイチ流トレにあり「感覚変えずにパワーアップ」
“イチ流”トレで進化だ! 日本ハムの吉田輝星投手(20)が、今季後半戦から初動負荷トレーニングを取り入れていることを明かした。日米通算4367安打を放ったイチロー氏(48)が重視した練習法。パワーと柔軟性の両立が課題だった右腕は、「(やって)正解でした」と手応えをつかんでいる。今オフも継続して行い、来年2月の春季キャンプに照準を合わせる。
飛躍のきっかけをつかむため、吉田がたどり着いた一つの答えが初動負荷トレだった。筋力向上が目的のウエートトレとは異なり、神経と筋肉の連動を重視することで瞬発力向上、関節可動域の拡大、故障防止などの効果を狙う。イチロー氏が取り入れていたことで有名なトレーニングだ。
「おもりを使ってストレッチする感じ。多くて週3、4回。オフは体をつくるので、それと一緒に(初動負荷で)柔らかさも出していければ、感覚を変えずにパワーアップした体で試合に臨めると考えています」
吉田は以前から、ウエートで筋肉がつくと肩周りなどが固くなり、投球感覚が狂うことが悩みだった。昨季から意図的に筋トレの量を減らし、今年5月ごろから体重を落としたが、今度は球速が上がらなくなった。「(体重を)戻したくてウエートしたいけど、固くなるのが嫌で、後半戦に入ってすぐ行ったのが初動負荷」。プロ3年目。変化を求めた決断だった。
成果はすぐに表れた。8月は2軍で3戦3勝、防御率2・84の好成績を残し、月間MVPを獲得。秋季キャンプではブルペンで剛速球を披露し、視察に訪れた新庄ビッグボスをうならせた。「初動負荷を行ってから筋トレをしてもあんまり固くならない。イニングが増えても球速が落ちなくなった。いい感じ」と効果を実感している。
初動負荷以外にも、いいと思ったことは積極的に取り入れる。同キャンプ中に選手の指導を行ったゴールドジムのトレーナーから「朝食前に時速6キロで40分以上歩くと脂肪だけ落ちていく」と教えられると、すぐに同部屋の清宮と毎朝5時半から散歩を行っていた。
春季キャンプでは新庄新監督の実戦初采配で登板する可能性があるが「1発目の試合にはしっかり合わせて、抑えられればいい」とやるべきことに集中する。勝負の2022年。完璧な準備で「2・1」を迎えてみせる。
プロ初登板以来勝ち星なし4年目巻き返す
吉田のプロ3年間は、決して順風満帆とはいかなかった。高3夏に秋田・金足農のエースとして甲子園準優勝を果たし、2018年のドラフト1位で入団。19年6月12日の広島戦(札幌ドーム)でプロ初登板初勝利を挙げたが、その後は長く白星から遠ざかっている。2年目の昨季は1軍で5試合に登板して0勝2敗、防御率8・41とプロの壁にぶち当たった。
20歳になって迎えた3年目はキャンプ、オープン戦でアピールに成功し、開幕6戦目の先発をつかんだ。しかし、ロッテ打線を相手に2回7失点(自責2)で黒星を喫し、以降は一度も1軍に呼ばれなかった。
秋季キャンプでは新庄監督に「めっちゃ速くね?」と直球を評価され、「今までやってきたことに間違いはなかった」と自信を深めた。何度も味わった悔しさをバネに、来季は巻き返しを狙う。