《岩本勉のガン流F論》また一歩、ダルビッシュの領域に近づいた伊藤大海
■パ・リーグ4回戦 オリックス0-9日本ハム(4月27日、エスコンフィールド北海道)
濃密だった六回の攻防 これぞ野球の醍醐味
六回の攻防に野球の醍醐味が凝縮されていた。まずは伊藤の投球だ。五回を終えて球数は88球。7三振を奪い、なんとノーヒットピッチングだった。体力的に球数以上の疲れがあったはずだ。そこで1死から初安打も許した。盗塁と四球もあり、2死一、二塁のピンチを迎えたのだが、後続を断った。
あらゆる状況を吟味し、引き出しを開けた伊藤
疲れている時ほど、先発投手の力量が試される。どんな引き出しを開けるのか。ほどよい緊張感を保つ4点のリード。劣勢の相手には打席で焦りも出始める。3巡目の打線は狙い球を絞ってきているはず。それらを吟味し、空気を感じながら、必要最低限の出力で、うまくボールを散らした。
先発完投型らしいピッチング
結果は無失点。見事な投球だった。この日、最後まで投げきることはできなかったが、これぞ先発完投型のピッチャーだ。いい当たりが野手の正面を突く運も引き寄せた。六回、最後の打者となったセデーニョの当たりは三塁ライナーとなった。
貯金をつくれる投手になってきた
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アウトを取れる投手、打者を抑えられるピッチャーは数多くいる。ただ、勝てる投手、負けない投手、貯金をつくれるピッチャーになるにはもう一つ、レベルアップが必要だ。伊藤はそのような心強い投手になってきた。また一歩、憧れを抱くダルビッシュの領域に近づいた。
18.44メートルを隔てた駆け引き
そしてその六回、究極の駆け引きも見られた。2死二塁で3番の森を打席に迎えた場面だ。間合いの奪い合いとでも表現しようか。イマイチ調子が上がりきっていない森。伊藤もカード頭で負けられない状況にある。互いに自分の間合いを譲らなかった。間合いを嫌った森が打席を外すシーンもあった。結果は四回に続いて四球。もし仮に点差があるからと、投げ急いでいたなら、森に2ランを浴びていた可能性もある。
ピッチクロックの導入には反対!
見応え十分の対戦。果たして、導入が検討されているピッチクロックは必要だろうか。野球を楽しむ上で、こういった間合いの攻防はカットすべき要素ではない。スピーディーな試合進行は必要だ。ただ、速やかな攻守交代を心がけるだけでも十分に試合時間の短縮につながる。メジャーでは、肩や肘の回復時間を奪うということで、負傷の増加にもつながっていると一部で懸念の声も上がっている。私はピッチクロックの導入には反対だ。
田宮は投手にとって嫌なバッター
と、ここで絶好調の田宮にも触れておきたい。規定打席に達すれば、十分に月間MVP候補。それだけインパクトが強い。最後までボールにコンタクトできる打者でありながら、仕掛けも早い。だから淡泊なアウトが少ない。ピッチャーにとっては嫌なバッターである。