1番・今川優馬が逆転サヨナラ満塁弾 3番・野村に予告「決めるから、おまえは準備しなくていい」
■イースタン・リーグ5回戦 楽天5ー7日本ハム(5月3日、鎌ケ谷スタジアム)
持ち前のフルスイング 子どもたちに勇姿を
一振りで劇的に試合を決めた。日本ハムの今川優馬外野手(27)が2点を追う九回に、バックスクリーンへ逆転サヨナラ満塁本塁打を放った。
ゴールデンウイーク真っ盛りの一戦。スタンドに詰めかけた多くのファンを熱狂させ「うれしいですね、本当に。子どもたちの声援もすごく聞こえて、外野スタンドにも小さいお子さんがいた。野球選手として格好いい姿を見せられるいい機会。僕はバッティングで、結果が出なくてもしっかりフルスイングして、こういうバッターになりたいなと思ってもらえたら一番いい。そこだけはブラさずにやりたいです」と、はにかんだ。
待ってました! 有言実行の一撃
予告サヨナラ弾だ。八回が5番の水谷で終わり、この日1番に座った今川は「(一打)サヨナラの場面で回ってこい」と願いつつ、ベンチで宮西に「回ってきたら決めます」と宣言。1死満塁で打席に向かう前には3番の野村に「決めるから、おまえは準備しなくていい」と伝えた。
狙い澄ましたストレート 初球をジャストミート
九回1死一、二塁で、9番・阿部の代打・梅林が左前打でつなぎ、舞台は整った。制球に苦しむ楽天・清宮の直球に狙いを絞り、初球の152キロを「コンパクトに」強振。打球が中堅フェンスを越えると、高々と右手を突き上げ、悠々とダイヤモンドを回った。
「梅林がつないでくれて、本当に満塁で回ってきた。(清宮の直球に)振り負けないように準備していました。完璧でしたね」。仲間から熱い祝福を受け、いつも以上に笑顔がはじけた。
常に1軍での戦いを意識 ファンのためにも
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道産子外野手は2軍の試合だろうと、勝ちに執着する。
「ビハインドでも最後まで、みんなで勝つという気持ちで一丸となってやっていけば、1軍に上がった時でも同じ意識でやれる。ファンの皆さんが応援してくれる以上は絶対に諦めない、というファイターズのチーム方針があるので、そこはみんなでやっていきたい」と力を込めた。
心が折れかけた「レフト・清宮」
いつも明るく前向きな今川も、繊細な心を持つ一人の人間だ。2軍でもがく中で、負の感情に支配されそうになったこともある。
「清宮が(1軍に)上がったぐらいですかね。清宮をレフトで起用していく、という記事が出た時、一番メンタルがやられました」。自身のポジションに、本職ではない後輩が起用される。悔しくないはずがなかった。
救われた佐藤コーチの言葉 今川「精神的に立ち直れた」
くじけそうになった心を救ってくれたのは、ある日偶然、寮の風呂場で遭遇した佐藤2軍打撃コーチだった。
「ちょっと落ち込んでいるのを察してくれた佐藤コーチが『野球をやっていると、いろんなことがあるけど、でもそこでおまえがグラウンドに立って、楽しくなさそうにプレーしたら、誰が喜ぶ? 奥さんも、家族も見ているし、応援してくれているファンだって、おまえが楽しんで野球をやっている姿を見ることが幸せだと思うから、そこだけは絶対にぶらすな。それこそいつ野球を終えるか、分からないんだから、とにかく目の前の一球に全力でやろうよ』みたいな話をお風呂場でしてくださって。ジーンときました。やらなきゃいけないな、と。僕も人間なので、いろんな葛藤はありますけど、コーチからそういうことを言ってくださって、そこですぐ、精神的に立ち直れたのが大きいですね」
1軍昇格へ迷いなし 「結果を出し続ける」
今は吉報が届くまで、打ち続ける覚悟がある。
「結果を出し続ける。いつ、誰がどうなるか分からないので、その時が来るまで、けがなく執念で頑張るだけです」。1軍昇格へ、今こそ〝執念〟が試される時だ。