山口アタル 11カ月ぶり実戦復帰 リハビリ中の支えは浅間に教わった「めっちゃいい言葉」
■イースタン・リーグ7回戦 楽天0-5日本ハム(5月5日、鎌ケ谷スタジアム)
昨年7月に左膝前十字靱帯の再々建手術を受けた日本ハムの山口アタル外野手(24)が、長期にわたるリハビリを乗り越え、グラウンドに帰ってきた。五回に代打で出場し、同6月以来、約11カ月ぶりに実戦復帰。2打席に立って1四球1三振と安打こそ出なかったが、阪口の犠飛で4点目のホームを踏むなど、患部の不安を感じさせない軽快な動きを披露した。
五回に代打で登場 1四球1三振
「こどもの日だったので、子どものために一本、(本塁打を)放りこみたかった。夢を与えたかった。そこは悔しかったですけど、11カ月ぶりの試合だったので、まずは第一歩をきょう踏めたのが大きいと思う。感覚が戻るまでちょっと時間がかかるかもしれないけど、結果はあとからついてくると思うので、まずはケガをしないで試合に出続けることが一番。膝はもう問題ないです」
直球一本にヤマを張り、本塁打だけを狙って復帰戦に臨んだ。しかし、この日は一度もバットを振る機会がなかった。五回無死一塁の第1打席は、冷静にボール球を見極め、四球で出塁。続く有薗、水谷の連打で三塁まで進むと、阪口の右飛で勢いよく本塁へタッチアップし、最後はスライディングで生還した。
阪口の犠飛でホームに生還
七回1死の第2打席はカーブ2球で追い込まれると、最後は低めの直球に手が出ず、見逃し三振に倒れた。豪快なフルスイングは次回にお預けとなったが「振れなかったですけど、真っすぐを狙って、自分のアプローチが最後までできたのは良かったと思う。その結果、三振もしたし、ボールも見られたし、ベースにも出たし、走ったし、復帰戦で全部できて、結果オーライ」と前向きに振り返った。
悲劇の舞台は楽天モバイルパーク
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楽天モバイルパークが、悲劇の舞台だった。相手の1軍本拠地で行われた昨年6月17日の2軍楽天戦。一回裏に右翼の守備に就いた山口は、いきなり頭上に飛んできた打球に対し、ジャンピングキャッチを試みた。捕球できず、着地と同時にボールを追いかけようとした瞬間、左膝に大きな負荷がかかった。「ぐきっとなって。そのまま試合には出続けたんですけど、なんかちょっとおかしいなって。結局、4三振。試合後、どんどん痛くなって、最後は歩けなくて、歩くとめっちゃ痛くて。病院でMRIを撮ったら、前十字と半月板をやっていました」。手術と長期離脱が決まった。
左膝前十字靱帯は以前も負傷し、再建手術を受けた箇所だった。「結構、ショックだった。2回目の前十字だから。まさか、またなると思わなかったし、仙台から帰ったら、体調不良にもなった。ちょっと、落ち込みました」。育成契約の山口にとって、1年近い離脱は死活問題だった。
術後はリハビリの繰り返し
術後は「リハビリ、リハビリ、リハビリ」の日々。単調な生活の支えになったのは、同じくけがに苦しんでいた仲間の存在だ。特に浅間からは、示唆に富んだ助言をもらうなど、大きな影響を受けた。「本当に、浅間さんは人間の鑑です。本当にいい人だし、浅間さんがいたからリハビリを頑張れたといってもおかしくない。毎日、浅間さんが元気に声をかけてくれて、本当にいい先輩だと思いました。僕、タメ語で話しちゃったりするんですけど、全然怒らない先輩。一緒に過ごした時間が長かったので、いろんなことを話しました。浅間さんと過ごせたから、(長期のリハビリも)早く感じた。めちゃくちゃいい人です。本当、(浅間の存在は)でかい」と感謝しきりだ。
復帰したときに最初から全力100%はダメ
カナダ出身で英語が母国語の山口は、リハビリ期間中に浅間から、ある日本の慣用句を教わった。「浅間さんから習った言葉が、『急がば回れ』。めっちゃいい言葉。浅間さんもいっぱいケガをしているので、ケガに対する考え方とか、復帰したときに最初から全力で100%を出したらダメとか、そういうことも含めて、この言葉と一緒に教えてくれました。どこで力を抜いて、どこで力を入れるかとか、自分で練習の量を調整したり。浅間さんは経験しているので、いい情報をもらえる。本当に大きいです」。頼れる先輩からもらった金言は、24歳の考え方を大きく変えた。
「このケガは天からの試練なんだ」
「このケガはもう、天からの試練、テストだと思うようにしました。もしかしたら、ケガをした方が、支配下になるのが早いかもしれないと思うようになりました。もう一回、基礎からやり直そうって。これを乗り越えてたら、もっと自分が強くなる。逆に、もし膝をケガしていなくて、支配下に上がっていたとしても、1軍でめっちゃ悪い結果だったらクビになっていたかもしれない。1年後に振り返って、前十字を切って良かったと思うかもしれないから、これは絶対悪いとか、絶対これは良いとか決めつけないで、次へ向けて頑張ろうと思いました」
この日はDHでの出場だったが、今後は体の状態を確かめながら、守備にも就く予定だ。支配下昇格の期限は7月末。「もちろん、それを目指して頑張っていますし、諦めていないです。今年のファームは勝ちに行くから、どこで試合に出るかは分からないけど、活躍して自分が必要だと証明して、試合に出してもらうしかない。まず練習して自信をつけて、自分の努力を、試合に思い切りぶつけるしかないです」と力を込めた。焦る気持ちと折り合いをつけ、「急がば回れ」の精神で一歩ずつ、夢に続く道を歩いていく。
【《ハム番24時》5月5日】