高卒3年目の有薗直輝 ただ今4番修行中 監督室で伝えられた〝主砲の心得〟とは
先発28試合すべてで打線の中心に
日本ハムの有薗直輝内野手(20)が〝4番修行〟に励んでいる。今季ここまで2軍で先発した28試合は全て4番だ。稲葉篤紀2軍監督(51)は「将来は1軍で4番を張れる選手の一人」と期待を込め、清宮や野村、今川ら長距離砲が打線に並んだ際も、高卒3年目のスラッガー候補を中心に据え続けてきた。
どん底からのスタート 9試合連続ノーヒットも
3月のイースタン・リーグ開幕当初は、まさに絶不調だった。振れども振れども快音は鳴らず、開幕2戦目から出場9試合連続無安打。4月8日の楽天戦終了時点で、44打数2安打、打率は.045まで落ち込んだ。
「ひどかったですね。ちょうど(同学年の)阪口がめっちゃ打ったりしていて、余計にまずいなと思っていました。ずっと何が違うんだろうって考えて、自分のフォームを見ていました」と、悩み深い日々を過ごした。
稲葉2軍監督から金言 「4番を背負っていくんだったら」
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結果が出なければ、自然と表情も暗くなる。様子を観察していた稲葉監督はある日、有薗を鎌ケ谷の監督室に呼び出し〝主砲の心得〟を伝えた。
「一回、結果が出ていない時に、監督室に呼んだんです。おまえがこれからチームの4番を背負っていくんだったら、こういう時の態度をみんなが見ているよと。切り替えもそうだし、いくら悪くても声を出すとか、そういう選手になっていかないと、周りに認めてもらえないよという話をしましたね。ゾノ(有薗)はすごい闘争心を持っているやつで、なにくそっていう気持ちがすごくある選手だけど、なかなか表に出にくいタイプなので」。1軍で4番を打った経験も豊富にある指揮官からの金言は、20歳の心に深く響いた。
〝執念先輩〟に学ぶ主砲のあるべき姿
「このままではダメだ」と有薗自身が一番、感じていた。自分を変えようと手本にしたのは、打っても打たなくても、いつでも大きな声で味方を鼓舞し続ける今川の姿だった。
「今川さんは、代打を送られた時でも、めっちゃ悔しいはずなのに、すごい声を出していて、こういう人になりたいと思いました。凡退したり、チャンスで打てなかった時も切り替えが早くて、すぐベンチで声を出す。そういうところをマネしていきたいです」
バッティング面でも意識改革
打撃に対する考え方も大きく変えた。
「今までは、自分のスイングばっかり見ていたんです。でも、そこじゃないんじゃないかなって思うようになりました。考え方を変えて、配球を読んだりし始めて、それから良くなりました。打ちたい打ちたいという欲がありすぎて、もうピッチャーしか見ていなかったんですけど、そうじゃなくて、他のバッターが打席に入っている時の配球とか、バッターの反応も見て、きょうは相手ピッチャーのこの球が調子良くて、この球が浮いているなとか、そういうところを見られるようになってきた。前は結果を残したくて、自分への配球しか見えていなかったんですけど、視野が広がりました。そうした方が、試合にも入っていける。野球の展開が分かって、チャンスの時、相手ピッチャーは変化球攻めが多いなとか分かってくる。ランナーがいたら真っすぐが多いとか、そういうピッチャーがいるので、分かれば張って打てるので」。視野を広げた〝大人のバッティング〟で、状態は徐々に上向き始めた。
芽生えた自覚 結果を出してみなぎる自信
4月12、13日のオイシックス戦で2試合連続3安打をマーク。同21日の同戦で待望の今季1号2ランを放つと、23日のDeNA戦でも2戦連発の2号ソロをかっ飛ばした。5月7日時点で、打率は.191まで上昇した。
約2カ月、チームの4番に座り続け、自覚と責任も芽生えた。「稲葉監督からは、自分が沈んだらチームも沈むと言われています。自分が盛り上げて、チームの雰囲気を明るくして、打てない時でもオーラを出していけと。 4番が打たないと勝てないと思いますし、そういう責任がある。4番を打つ人は、前に立つような人間じゃないといけない」と力を込める。
目指すは当然1軍の4番 「期待に応えたい」
もちろん、2軍の4番のまま終わるつもりは毛頭ない。「1軍で4番を打ちたい気持ちはもちろんあります。今、ずっと4番で使ってくれているので、その期待に応えたい。野球をもっと楽しんでいきたい」
エスコンフィールドで本塁打を量産する本当の4番になるまで、修行の日々は続いていく。