《鶴岡慎也のツルのひと声》一枚も二枚も上手だった「さちとら」バッテリー 思い出した久さんの言葉
■パ・リーグ6回戦 西武1ー4日本ハム(5月14日、エスコンフィールド北海道)
崩れるイメージが湧かない今季の山崎
実に見事な完投勝利だった。崩れるイメージが湧かない。裏を返せば、相手チームは、どうすれば攻略できるだろうか。それぐらい、今季の山崎は安定している。
さすがの観察眼 巧みなリードを披露した伏見
チェンジアップ、フォークを駆使するピッチャーは球数が増えるにつれ、どうしてもその球種が浮いてくる傾向がある。握力が落ちたり、下半身に疲労がきたりと、メカニック的な理由はいろいろ挙げられる。そこでマスクをかぶる伏見だ。山崎の状態やバッターを入念に観察しながら、スライダーやカットボールを織り交ぜた。このタイミングが実に巧みだった。
曲がり球と抜き球の絶妙なバランス
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打者がスライダーやカットに反応するや、今度は狙い球を見極めて、またまたチェンジアップなどの抜き球を駆使。曲がり球との併用が効果的だった。一方の山崎は完全に伏見を信頼し、組み立てを任せ、構えたミットへ投げきることに集中した。若いバッターが多かった西武打線。百戦錬磨の「さちとら」バッテリーの方が一枚も二枚も上手だった。
今も忘れない2012年のクライマックスシリーズ
長い年月をかけて構築されたバッテリーの強固な信頼関係。2人を見ていて、現投手コーチの武田久さんを思い出した。久さんも私に配球を任せてくれていた。「打たれたら、おまえのせいだからな」とよく言われた。山崎とはタイプが違うのだが(笑)、互いへの厚い信頼がそこには存在した。今でも忘れないのが2012年のクライマックスシリーズ。ホークスとの3連戦でいずれも久さんが九回に登板。見事3戦連続セーブを挙げ、日本シリーズ進出を決めた。しんどい戦いだったからこそ、喜びもひとしおだった。
流れを引き戻したマルティネスの適時三塁打
さて、試合に戻ろう。攻撃面では1―0の三回に飛び出したマルティネスの適時三塁打が非常に大きかった。1死から松本剛が死球で出塁。3番の郡司にスリーバントまでさせたのだが、西武・高橋の好フィールディングでフォースアウトとなった。流れは完全に西武へ傾きかけていた。そこでのタイムリースリーベース。さらに暴投で3点目も奪った。野球は流れのスポーツだ。この回の攻撃が大きなポイントとなった。