「TETRAPOD」をもって卒業するタイトル未定・川本空 アイドルとしての745日(ポートレート全23カット&音声メッセージ付き)
和ませる雰囲気 想像の斜め上いくワードセンス
北海道発のアイドル「タイトル未定」の川本空が、20日にZepp DiverCityで行われるワンマンライブ「TETRAPOD」をもってグループを卒業する。2022年にアイドル未経験で加入した川本にとって、この2年間はかけがえのない経験となった。周囲を和ませる雰囲気を持ちながら、想像の斜め上をいくワードセンスでファンを魅了。刻一刻と迫り来る〝ラストダンス〟を前に、宝物の754日を振り返った。
きっかけはアニメ「ラブライブ!」
アイドル・川本空の物語が終結する―。22年4月28日、アイドルの世界への【踏切】を渡った。【いつか】アイドルとしてステージに立ちたい。そう思ったきっかけはアニメの「ラブライブ!」だった。「こんなキラキラしたかわいい女の子になりたい」と、同作品のアイドルたちがオープニング【主題歌】などを歌う姿に憧れた。元々は違うグループを目指して事務所のオーディションを受けたが、パフォーマンスを見て衝撃を受けたという。「札幌にこんなに素晴らしいアイドルがいたんだと、本当に感動しました」と加入を決意し、タイトル未定の川本空が生まれた。
涙流す日々 救ってくれたのはメンバー
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しかし、すぐに試練が訪れた。歌もダンスも経験のなかった川本にとって、楽曲を覚えることは至難の業。「目まぐるしすぎて、とにかく辛かった」と何度も涙を流し、心は折れかけた。一筋の【薄明光線】すら見つけるのが難しかったが、救ってくれたのは他ならぬメンバーだった。連日深夜まで及んだレッスンには、メンバーも最後まで付き合ってくれた。川本も「【ガンバレワタシ】」と自らを奮い立たせ、死に物狂いで食らいついた。「本当にメンバーの存在が心強かったです」と感謝を口にする。
「緊張で吐き気がした」お披露目ライブ
お披露目ライブはSound lab moleでの木曜定期公演。高鳴っていた心臓の【鼓動】は鮮明に覚えている。「緊張で吐き気がしました。ずっと吐きそうになってました…」とナーバスになっていたが、ファンは和やかな雰囲気で迎えてくれた。「もう(ファンが)みんな優しかったです! 温かく見守っていてくれて、一緒に盛り上がってくれて。その時点でタイトル未定のファンの方は優しいんだなって思いました」と懐かしそうに振り返った。
【綺麗事】ばかりではないのがアイドルだ。年間200本以上のライブを行うタイトル未定は札幌を拠点にしながら、全国各地に遠征する。学業と両立している川本は1人で夜遅くに現地入りし、帰りは早朝の便に乗って学校に直行することも多く、移動中も勉強の時間に充てた。もがけばもがくほど【溺れる】かのように、体力的にも精神的にも削られたが、ステージでは「支えでした」というファンのために笑顔を絶やすことはなかった。そして誰よりもサポートしてくれた母の存在が【道標】となり、迷うことなく慌ただしい日々を駆け抜けてきた。
転機は22年 TIFのメインステージ争奪戦優勝
グループにとって最大の転機となった22年。初出演となった「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」は、4人の【青春群像】劇を描いたのような夏になった。それぞれに個性はあれど、どこか【にたものどうし】とも言える4人の一体感で、メインステージ争奪戦を優勝。その勝ち取ったZepp DiverCityからの光景は「今まで見たことない人の数と会場の大きさで、2階席も人がびっしりでした。アイドルの景色ってこれなんだと思って嬉しかったです」。タイトル未定の知名度が一気に上昇したあの【夏のオレンジ】色の夕陽は、まさにタイトル未定を照らした【灯火】となった。
そして川本のアイドル人生も「TIF」を機に好転した。グループの【黎明】期を経験していない川本。「私が入ったときは実質(前のメンバーとの)入れ替えのような感じだったので、プレッシャーと不安に押しつぶされそうになって、ギリギリ耐えていた毎日」だったが、TIFゲーム部で優勝するという結果を残し「『ちくわ(川本の愛称)すげえな』『ちくわってすごくいい子じゃん』みたいになったのをすごく感じました」。【蜃気楼】のようにおぼろげな存在からタイトル未定の一員として正式に受け入れられたような、そんな印象を受けた。
憧れのZepp Sapporoでワンマンライブ
そして迎えた23年、一つの【最適解】にたどり着いた。【六花】が舞う2月に初めてZepp Sapporoで行ったワンマンライブ「汽笛」だ。SUPER BEAVERのライブなど、プライベートで何度も訪れたZepp Sapporo。当然不安もあったが、憧れていたステージに立った瞬間吹き飛んだ。「【僕ら】が付いている」といつも後押ししてくれるファンと一つになれた。まだまだゴールは先にあり、夢に向かって【未完成のパレード】を行っている最中だったが「とにかく楽しかったです。過去のライブの中で一番楽しかったライブだと思います」と振り返った。4人で奏でた全18曲は、一生忘れることのない時間だ。
札幌では、Zepp Sapporoの他にもPENNY LANE24やサッポロファクトリーホール、PLANTなど、数多くのステージに立った。一番印象深いのは、やはり〝本拠地〟Sound lab moleだ。定期公演などでメンバーと過ごした時間も長く【ないしょのはなし】も含めて、たくさんの思い出を作った。そして何よりもファンと一体となれる「ステージが一番好きです」。ファンからもらった【花】は全てドライフラワーにして保存。「どんなときもいつでも味方でいてくれるような存在で、本当に感謝しかないです」。言葉に言い尽くせない感謝の気持ちが、胸いっぱいに広がっている。
頑張って良かったなって思いました
タイトル未定の物語に【栞】を差し込んだ川本。Zepp Sapporoでのワンマンライブは計3回行い、【夏が来れば】TIFに出演するなど、勢いは確実に加速した。卒業発表時の公式HPにも「タイトル未定のターニングポイントをがむしゃらに支えてくれた一員であり、最後は夢の舞台だったZepp DiverCityでワンマンライブを開催できる程にグループを大きくしてくれた功労者です」と記された。進んできた道は間違っていなかった。これには川本も「嬉しかったです。頑張って良かったなって思いました」と喜んだ。
この2年間で引っ込み思案だった自分も変わることができた。苦楽を共にしながらメンバーと過ごした時間は【水流】のように止めどなく過ぎていった。推してくれるファンは増え、他のアイドルグループにも友人ができた。バースデーライブなどの【記念日】もたくさんの人に祝ってもらった。「内面も外見もすごく変わりました。デビュー前は本当においもちゃんだったので、ちょっとはお姉さんになれたような気がします」と胸を張る。
卒業発表してから「泣いちゃうこともあった」
4月4日に卒業発表してからはラストスパート。【群青】色に染まる日没前の〝マジックアワー〟のような1カ月半だった。「最後まで笑顔で」と決めていたが、ファンと接する機会も数少なくなってくると「泣いちゃうこともあった」と【春霞】のごとく寂しさも胸の中を覆っていた。5日には札幌・道新ホールで卒業ライブを開催し、一つの区切りを付けた。特別な気持ちで過ごした春。【桜味】の香りもいつもとは違うものに感じた。
21日からは別の人生を歩む。アイドル・川本空としての時間は残りわずか。自分の殻を破り、これまで持っていた自分の中の概念を【壊せ】た自負はある。きらびやかに光る2年間に思いを馳せながら、笑顔で言葉を紡いだ。
この2年間は人生の財産であり、宝物
「ファンの方には、感謝の気持ちを一番に伝えたいです。タイトル未定に入って活動していくうちに、将来自分のやりたいこととか、やるべきことが明確になってきました。この2年間は、私にとって人生の財産であり、宝物になりました。それが宝物になったのは、どんなときも支えてくれたファンの方がいたからです。ありがとうございました!ファンの方と過ごせた時間のおかげで、誰かの役に立ちたいとか、もっとたくさんの人を笑顔にしたいという気持ちが強くなって、自分の目標に進むことを決めました。規模は大きく感じるかもしれないですけど、世界中の人を笑顔にできるような人になれるよう、精一杯頑張ります! ちくわの由来ですが、ミステリアスな女の子を目指しているので、そこは秘密のまま卒業します(笑い)」
ラストポートレートは川本空の休日に密着 ※最後に応援してくださった皆様に音声メッセージがあります
《川本空からの音声メッセージ》