上沢直之の連載インタビュー『うわっちのUSAレポート』vol.03 メジャーデビューを果たした右腕がたっぷり語る
メジャー再昇格を目指す日々 盟友・加藤貴とも久々にコミュニケーション
昨季まで日本ハムでプレーした上沢直之投手(30)の連載『北海道から世界へ うわっちのUSAレポート』は第3回です。3月末にトレードでレッドソックスに移籍し、4月末にメジャー初昇格。5月2日(現地時間)の本拠地・ジャイアンツ戦で待望の初登板を果たした。現在はレッドソックス傘下3Aウースターで調整を続けています。一つの夢をかなえた右腕が、上達したと言い切るメジャーリーガーの必須スキルとは!? 加藤貴之投手(31)と久しぶりに連絡を取り合うなど、現状をざっくばらんに語ってくれました。
突然の昇格 吉報を知ったのは報道で!?
―日本時間の4月28日夜、メジャー昇格のニュースが流れた
「もともと3Aで先発で投げる予定だったんですけど、投げるの待ってくれとなって。その日は(登板)なしになって、3Aのタイガースのところで試合を見ようかなと思っていたら、ちょっと一回とりあえずボストンに飛んでくれみたいな。次の日にアクティブ(ロースター)になるからと言われて、はああという感じでした」
―最初は代理人から伝えられた
「僕は報道で知りましたね(笑)」
独特の雰囲気 伝統あるフェンウェイパーク
―夢の舞台にようやくたどり着いた
「球場の雰囲気とか、本当にメジャーの舞台ならではという感じでした。(本拠地)フェンウェイ(パーク)とか。やっぱり歴史ある球場だったし、独特の雰囲気はメジャーじゃないと経験できないなと思いました」
―現存するメジャー最古の球場でもある
「本当に古いっす。ブルペンとかめっちゃ狭いですもん」
―通路も狭い
「そうっすね。もともと壁だったところに増築して、ウエート場とかも大きくしたらしいんですけど。でも、いい球場ですよ。野球見るなら」
ー左翼には巨大フェンス・グリーンモンスターがある。変則的な形状で、投手に不利とされている
「レフトは狭いですね。かなり」
待ちに待ったマウンド 日本でのプロ初登板より緊張
―メジャーデビュー戦は本拠地での登板だった
「やっぱり緊張しましたね。日本の時のプロ初登板より緊張しました。年を取るにつれて緊張するようなってきましたね。若い時の方がそこまで緊張していなかったなって」
―プロ初登板で先発した14年4月2日のソフトバンク戦より緊張した
「全然、緊張したっすね」
2回をパーフェクト! 「ゲボ吐きそうでした(笑)」
―メジャー初登板は2点リードの八回から5番手でマウンドへ。中継ぎでの登板だった
「それもありますね。正直。それの方があるのかな。たぶん。中継ぎだったせいかもしれない。何だろうな。ブルペンから行くのがどうしても…数をこなしている方ではないので。まあでも、ちょっとずつ中継ぎにも慣れてきましたけどね」
―2回を無安打無失点と完璧な内容だった
「1イニング目とか、ほとんど覚えていないですね。めちゃめちゃ緊張して、ゲボ吐きそうでした(笑)」
ベンチで見事なダンス むちゃぶりに対応
―レッドソックスの公式インスタグラムにベンチで踊る動画が公開されていた
「あれ、なんかもともとそういうルーティンがあったんですよね。レッドソックスで。今年からだと思うんですけど、ラテン系のやつらがそういうルーティンを始めて。僕が行くのが初めてだったので、急に行け、みたいになって」
―むちゃぶりへの対応は得意な方
「やれと言われたら、別にできるので(笑)。いきなりでしたけど。国歌斉唱が終わった後ですね。そんなノリがありましたね」
チーム事情でマイナー降格 中継ぎ調整に重点
―チーム事情もあり、5月8日にマイナー降格が発表された
「アトランタでの試合が終わった後、監督室に来てくれと言われて。なんとなく予想はしていたので、別に驚きはなかったですね」
―監督からどんな言葉をかけられた
「何だろうな…。僕が中継ぎに慣れていないのは知っているし、ピッチングコーチと監督とGMの3人から、下で中継ぎから長いイニングを投げる練習をして、自分のルーティン、中継ぎのルーティンを見つけてきてほしいと言われました」
すべてにハイクオリティーなメジャー 「早く戻れるように」
―メジャーを経験して、マイナーとの違いは感じた
「メジャーリーガーの方が移動とかは楽ですよ。チャーター機だし、広いし。食事もいいし。クオリティーは高いですよ。明らかに。なるべく早く戻れるように、自分の強みを早くたくさん出していけたらいいなと思います」
吉田正尚に今永昇太 同級生からは刺激
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―チームメートで同学年の吉田正尚外野手とは
「会うでしょ。それは。マサもけがしちゃったので、早く良くなってくれたらいいなと思います」
―カブス・今永昇太投手とも話す機会があった
「今永とも会いましたよ。同級生です。すごすぎるわ。やばいでしょ。あの成績。でも、日本の時よりも、いい意味で前に飛ばしてこようとするから球数が増えないと言っていました。環境にとけ込んでいますね」
現在はホテル暮らし 新ポジションにも徐々にフィット
―3Aの本拠地・ウースターでは前と同じくアパート暮らしか
「いえ。一回出てボストンに住もうと思ったので、いろいろあってアパートは他の選手が入っているので、今はホテル暮らしです」
―マイナー降格後は2試合に登板。前回登板は2番手で5イニングを投げた。中継ぎにも慣れてきた
「慣れてきましたね。(肩を)つくるスピードも早くなってきたし、あまり球数を投げなくてもいけるかなと思います」
リリーバーの難しさを痛感
―先発の時はどれくらい投げていた
「30球くらい投げていましたね。先発の日は。15球くらいでできるようになりましたけど、それでも(米国では)多い」
―すぐ肩をつくれる人はすごい
「8球とかでつくれる人はすごいですね。あらためて中継ぎの人はすごいと思いましたね」
中継ぎ仕様へモデルチェンジ 「細かいことを気にしない」
―コツはつかんできた
「なんかこう細かいことが気にならなくなりましたね。中継ぎやっていたら。先発は時間に合わせるので、自分のやりたいことが全部できる。どうしても中継ぎだと時間がない中で(肩を)つくらないといけない。たくさんルーティンがあってもできないし。なおかつ投げるポジションが決められている選手はいいですけど、いつ行くか分からないので。細かいことを気にしないようにする練習をしています」
―もともとルーティンはたくさんあるタイプ
「わりとそうですね。先発だったので、試合前は遠投とかは絶対したかったですし。そういうわけにもいかないし、いつもやるランニングのルーティンとか体操のルーティンとかありましたけど、急に行けと言われたら、そんなのできないので、事前にちょこちょこ動き出してはいますけど…」
F戦士から続々と祝福のメッセージ
―メジャー昇格した時には、たくさんの人から連絡が来た
「連絡をくれた人はみんなありがたいなと思いますよ。ファイターズだったら、清宮とかマンチュウ(万波)とか。やまーん(山本拓)とか、ファイターズの人は結構くれましたね」
加藤貴からは連絡なし 左腕なりの気遣い!?
―そんな中、加藤貴之投手は「プレッシャーになっちゃうから」と連絡しなかったそう
「僕が連絡しますよ(笑)。加藤さんに」
―連絡しなくても、気持ちは伝わっているはずと話していた
「ハハハ。加藤さんとの最後のLINE、加藤さんの息子の写真。去年の10月でした(笑)」
「元気ですか?」にまさかの返信!
―迷惑になるかもしれないと遠慮している
「僕から送っておきます。あの人、結構アレですからね。そういうところ、ちゃんとしている。そういうところ気にしいですから。今、加藤さんに『元気ですか?』と送ったら、『元気なわけねーだろ』と来ました(笑)」
〝物持ちの良い〟生田目からも伝言
―加藤投手の横にいた生田目投手からも、伝言を預かってきました。「お下がりでもらった炊飯器を買い替えた」そうです
「フフフ。アイツ、だいぶ古いヤツ使っていたな。僕が札幌に引っ越した時なので、結構、前じゃないですか。逆に今まで使ってくれてありがとうと伝えておいてください。今年はたんまり稼げそうなので、新しい炊飯器でいい米を炊いてくださいと(笑)」
―変わらずファイターズの試合はチェックしている
「全然、見られています。強いですね」
田宮の成長ぶりに感心 好調なチーム成績には納得
―戦いぶりはどうか
「もともとみんな能力が高かったので、今こうなっている状況に驚きはしないですね。でも、たみちゃん(田宮)があそこまで打つとは思わなかったですけどね。そういう選手が出てきてくれたら強いですよね。予想以上に打つみたいな」
―打率3割超え(5月21日現在)、規定打席到達も近い
「しかも、それでキャッチャーというのがデカイですよね。キャッチャーというポジションで3割打っているのが、希少価値高い。どこかでしんどい時はくると思いますけど、みんないい役割分担ができているんじゃないかなと思います。僕もみんなの活躍は気にして見ています。ファイターズはやっぱり気になりますし、ハイライトは見ちゃいますね」
英語には苦戦もヒマワリの種は…
―ところで、英語は上達しましたか
「全然していないです。全然してない(笑)」
―メジャーリーガーといえば、ヒマワリの種。そちらの方は
「ヒマワリの種はめっちゃ食っています。あれを食べるスキルだけはめちゃくちゃ上がってます(笑)」
―おいしい
「おいしい! おいしいというか、口が寂しいので。登板がない時とか、ベンチでずっと食べています」
―栄養価も高いらしい。ナッツのような感覚
「ナッツみたいな感じだから、体には悪くないんじゃないですか」
―口で割って食べる
「口の中でパカッとやって、そのスキルは習得しましたね。めちゃめちゃスキルが上がっています(笑)」
シーズンはまだまだ序盤 「一日でも早くメジャーに」
―では、最後に今後の意気込みを聞かせてください
「マイナーでしっかり継続してもっとより良いレベル、いい状態にして、成績を残して一日でも早くメジャーに行けるよう頑張りたいと思います!」