《こぼれ球》2度のPK戦勝利に立ち会った〝俺たちの砂川誠〟
22日のルヴァン杯3回戦アウェー長野戦は、延長を含めた120分間を戦ってもなお決着がつかず、勝負の行方はPK戦に持ち込まれた。長野は4人目の選手が失敗した一方、北海道コンサドーレ札幌は5人全員が成功させて、プレーオフラウンド進出を決めた。
そのPK戦を「上に行くことが大事なので、勝たなければいけない。負けることがあってはいけないので、何とか選手がやってくれれば」という思いを抱きながら、ベンチから戦況を見守っていたのが砂川誠コーチ(46)だ。
札幌というチームは伝統的にPK戦に弱い。PK戦制度が採用されていた1998年までのリーグ戦成績を含め、長野戦の前までに公式戦で12回PK戦を実施して1勝11敗。今回の勝利は実に18年ぶりのものだったが、過去唯一勝利していたPK戦でキッカーを務めた選手の1人が砂川だった。
2006年12月9日、千葉県・フクダ電子アリーナで行われた天皇杯5回戦で、当時J2だった札幌はJ1新潟と対戦。先制を許すものの砂川の2ゴールで逆転し、1点リードで試合終盤を迎えたが、GK佐藤優也のミスから新潟FW矢野貴章にボールを奪われ同点ゴールを献上。延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦に持ち込まれた。
先攻・札幌の1人目のキッカーとして登場した砂川は、ゴール右側に蹴り込んで見事に成功。砂川以降、両チームの総勢15人が連続でPKを成功させる中、迎えた新潟の8人目のキッカーは矢野。同点ゴールの雪辱を果たしたい佐藤が見事にシュートをセーブして名誉を挽回。クラブ史上初のPK戦勝利で、札幌は準々決勝進出を果たした。
「自分が2点取ったので、なんとなくは覚えています」と、この試合を回顧する砂川に、PK戦でキッカーになるのと見守るのでは、どちらの方が良いかを質問してみた。「PKだけじゃなくて普通のゲームもそうですけど、やっている選手の方が楽だなと思いますね」という答えが返ってきた。「自分で表現できて、成功も失敗も自分の中でゲームが行われるので。コーチという立場だと客観的な目線になるので、ああいうのはすごく疲れるなと。やっている方が楽だな、というのはPKだけじゃなくても思います」。
昨季からトップチームコーチに就任。若手選手を指導する機会も多く、その教えを受けた選手たちも長野戦に多く出場していた。あのときの天皇杯準決勝で惜しくも敗れた砂川を、そして19年のルヴァン杯準優勝を超えて、まだ見ぬ栄光を若き戦士たちがつかみ取るシーンが実現することに期待したい。