■J1第17節 東京V5-3札幌(6月2日、東京・味の素スタジアム)
―試合を振り返って
3-5で敗れたというスコアを見れば、やはり我々にとって非常に苦い敗退であると言っていいだろう。1試合で8ゴールも入るような試合ということであれば、見ている方にとっては面白いゲームであったとは思うが、我々にとっては決して望むような5失点ではなかった。
前半立ち上がりに鈴木武蔵が抜け出して決定機があった中でそれが決まらずに、逆に自分たちがリードされていくという展開だった。オープンな展開だったと思うし、どちらにもチャンスはあった。
1失点目だが、今シーズンたまに見る失点の形で、DFの選手がいないかのように相手の選手に背後に抜けられて得点を許してしまった。(岡村)大八が背後を取られて、菅野が後ろのカバーに行けなかったかどうかというところの間にボールを落とされて、反対側のCBの選手もカバーが遅れてという、そういう状況の中で(PKとなって)生まれた失点だった。
2点目の失点に関しても、この試合の中でも何回も見られた、自分たちがイージーに危険なボールの奪われ方をした中でのカウンターのシーンだった。そういうカウンターを受けた中で、最後(中村)桐耶がシュートブロックに行っていたが、その股を通って失点してしまった。もちろんサッカーなのでミスは必ずある中で、ただ十分にその点を防げなくはなかったシーンではないかと私は思う。
3点目にしても、4点目にしても、5点目にしても、我々の失点の形というのは非常に安いと私は思う。唯一最後の方で(東京Vの)11番の選手(FW山見)が放ったシュートというのは際どいところに外れたが、ただ東京Vのシュートチャンスでの決定力というのは今日は非常に高かったし、そういう場面で自分たちがシュートを許してしまっている。
非常に危険な形で取られるミスがやはり多い。カウンターを食らうシーンも多い。自分たちが相手の攻撃を止めきれていないというのも、この5失点をした理由であろう。
ボールを持ったときは、自分たちの攻撃の形も出せていたし、チャンスもつくれていたし、得点もできていた。ただやはり1試合を通してみると、やってはいけない場面でやってはいけないことをして失点を重ねている。そういう現実がある中で、試合が自分たちのものにならない。
我々は今、最下位にいるが、最下位にいるなりの理由があるし、選手が多く抜けたとか、ケガが多いとか、いろんな理由がある。ただ我々は結果で評価されるものなので、そういった言い訳が効かないのは分かっている。結果に対する責任は監督である私にあるものだ。今ある順位というのは決して望んだ結果ではないが、そこに至るまでの理由というのは必ずある。
自分たちがどうやってここからはい上がっていくのか、そこをしっかりと自分たちは見つめ直さなければいけない。
―前半で岡村と中村を交代させた
選手は常に試合の中でベストを尽くしてくれているし、うまくいかない日があるのはもちろんそうだろうし、あるいは戦術的な理由で交代をしなきゃいけない、そういう試合もあるだろう。
DFラインの選手をハーフタイムに代えた理由に関しては、我々が負けている中で攻めなければいけないという意図もあったし、警告をもらっている選手に関してはそこも気にしていかなければいけない。そういった戦術的な理由と、攻撃をしなければいけないという理由、あるいは守備のところで誰をどこに配置するかによって守備が安定する、あるいは自分たちでボールを持ったときにビルドアップがうまくいく、そのあたりのいろいろなことを含めて考えた上での交代だ。
―先月29日に監督の続投が発表された。今までと違ったプレッシャーを持って臨んだ試合だったと思うが
私は66歳で、そして49年間この世界で生きているが、こういう状況の中で大事なことというのは、私がどう思うかとか、私がどう感じるかとか、そういうことではない。大事なのは常にクラブだ。監督も選手もあるいはスタッフも、いずれはクラブを去って行く。ただ我々が去ってもクラブというのはそこにある。だからこそクラブの存在は、我々働く者にとって常に大事なものだ。
私自身、今年で日本では19シーズン目になるが、広島で6シーズン、浦和で6シーズン、そして札幌に関しては今季で7シーズン目に入っている。シュトゥルム・グラーツ時代も(監督として)4シーズン、選手としては8シーズンやったが、私自身、比較的長く一つのクラブで仕事をする傾向のある人間だ。
私自身、常に心掛けていることは、その一つのクラブで仕事をするときに、その与えられた環境の中で、いかにそのクラブが良い方向に向かっていくか、成長していけるかどうかを考えて仕事をすることだ。
クラブの決定、クラブがどう判断するのか。我々監督というのは、常にそれを尊重し、受け入れていくものである。そしてその決定に対して、自分のベストを尽くしていくというのが我々の仕事だと思っている。モウリーニョに関しては18カ月の中で3チーム替えている。マンチェスター・シティーで6カ月、マンチェスター・ユナイテッドで6カ月、そしてチェルシーで6カ月と、6カ月ごとに監督が代わっているが、それもやはりクラブの決定で、それが監督業だ。そういう中で私が何を思うか。我々は常にクラブを大切にし、クラブの決定に従っていく、そういう人間だ。
私は今の状況の中でも、必ずはい上がれると信じている。全て我々がやることは、札幌のためにやっている。ケガ人の浅野や青木、そして宮澤。その選手たちが戻ってくれば、まだまだ自分たちは十分、J1の中でも戦えるし、武蔵に関しても今シーズンはコンディションが上がらない中でケガも多く、フィットしない状況が続いているが、そういった選手たちが戻って来ることは大きなプラスである。
結果が伴わない試合も今シーズンは非常に多いが、今後どうやって自分たちがここからはい上がっていくか。私はまだ希望を捨ててはいない。
最後に言うが、クラブがどう判断するのかというのは、私は常に承知をしている。
―今日の試合を見ていると、選手が自信も集中力も失っているように見える。監督はこのシーズンで結果以外にクラブに残したいもの、伝えたいものはあるか
私は札幌ではプロフェッショナルな仕事をしてきたと思っている。札幌に来た当初、最初のシーズンは年齢の高い選手が多かった。若い選手を育てながら、一年一年、しっかりとチームをつくりながら日本のJ1の中でも一目置かれる、そういう存在のチームになったと思うし、それを6シーズンしっかりつくった。
大学卒で入ってきた選手たちもこの6シーズン中には多くいたし、その選手たちが一年一年、成長する中で、チームも強くなっていった。残念ながら経営上、なかなか資金力のないチームである中で、そういった選手たちが買われていき、我々はなかなか積み上げていくことができない。それが毎年、続いていた。もし我々が十分にその選手たちを引き留めておくことができるだけの資金力があれば、我々は十分に今シーズンのタイトルを狙えるような、そういうチームになっていたと思う。
鈴木武蔵は長崎から札幌に移籍して来て非常に成長したし、J1で実績を残してくれた。夏にベルギーに移籍するまで、確かJ1の得点ランキングトップに立っていた中で彼は海外に移籍していった。
アンデルソン・ロペスも、広島、ソウルではなかなかレギュラーになりきれず、札幌に来た。彼もチームの中で成長し、活躍してくれた選手だ。彼もハーフシーズンの中で、得点ランキングでおそらくトップだった。その中で中国に移籍していった。シーズンにこの2人がいれば、おそらく25点から30点を計算できる。そういう選手がいなくなったと考えればいい。ビッグクラブであっても、そういった選手が抜けてしまえば、その後その代わりに見合う選手を見つけてくるというのは、なかなか簡単な話ではない。
進藤もユースから上がってきて、成長を重ねる中でC大阪に移籍してしまった。(高嶺)朋樹は大卒でうちに入ってきて活躍する中で、柏に移籍していった。田中駿汰もやはり大卒で来て良い活躍をしてくれていたが、C大阪に移籍した。
(金子)拓郎。彼も活躍していって、今はディナモ・ザグレブの選手だ。小柏も大卒で活躍した中で、今はFC東京に所属している。
ルーカス・フェルナンデスも、そこまですごいブラジル人選手という名前で日本に来たわけではないが、やはり札幌で成長した中で今はC大阪で活躍している。もう一人、チャナティップという選手が、おそらく推定5億円と言われる大きな移籍金で移籍していったが、この選手もチームにいたら十分に力になっていた。
今、名前を挙げた選手、その選手たちがみんな残って、そして今いる選手たちと共に、あるいはそこからさらに選手を獲得している中で戦えれば、十分に我々はタイトルを狙えるぐらいのチームだろう。
なかなかそういった選手たちを維持していくことが難しい状況で、どこかでエラーの年が出てしまうというのが今の現状だろう。今チームは苦しい状況にあるが、残留はできると思っているし、それが私と共にであろうと、私と共にではなくだろうが、とにかく札幌は残らなければいけない。