【’24ドラフト道産子有望株】⑨独立L高知の若松尚輝投手 20歳で投手転向の遅咲き152キロ右腕
本格的な投手歴はまだ3年
今秋のドラフト会議で指名が期待される選手を先取りする「’24ドラフト道産子有望株」第9回は、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグス2年目の道産子右腕・若松尚輝投手(24、札幌学院大出)。本格的な投手歴はまだ3年と浅いが、1年目の昨季に自己最速の152キロをマーク。右肘を痛めて指名漏れしたが、クリーニング手術を経て今春に復帰すると、5月17日の愛媛戦で救援ながら入団後初勝利。通算8試合14イニングを投げて防御率は0・00。6月29日にはホーム徳島戦で後期が開幕。さらなる結果を残し、今度こそドラフト指名を勝ち取る。
<動画:若松投手の投球フォーム>
エースナンバー背負う道産子右腕「NPB見えてきた」
20歳を越えてから投手に転向した遅咲きの豪腕。エースナンバーの背番号18を背負う道産子は「去年、150キロが出たぐらいから、NPBがちょっと見えてきたかなって思い始めて、そこから思いは強くなってます。小さい頃からなりたいと思ってはいたんですけど、ただなれたらいいなみたいな感じ。まさか自分が目指せるなんて高校、大学からは想像もしてなかった」。当時、漠然としていた憧れは、いまでは手の届きそうな目標に変わった。
9月にクリーニング手術
昨季は16試合に登板して0勝3敗も、50イニングで39K。奪三振率は7.02をマークした。ところが8月に右肘を痛めて離脱。9月にクリーニング手術を受けた。「肘の手術は初めてだったので、本当に復帰できるのかなってメンタル面でもけっこう落ちた時もあった」。
元阪神投手の助言に感謝「本当に投げられるまで復帰できた」
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そんな不安を払拭してくれたのが、チームメートで2017年セ・リーグセーブ王の元阪神ドリス・ラファエル投手(36)だ。「ドリスも手術したことがあって、いろいろ教えてもらって。『痛くても投げなきゃいけない』って。それを信じてやったら、本当に投げられるまで復帰できた」と感謝する。
球数投げても平均球速落ちず
今季前半戦途中から戦列に復帰。主に救援だったが、6月12日の徳島インディゴソックス戦では今季初先発して5回無失点。今季通算では14回13Kで、球速は平均140キロ台後半、最速は151キロをマークした。「だいたい戻ってきてると思います。去年より、技術的な面も含めていったら良いんじゃないかな。去年は先発やってて、最初はスピードが出たけど、回を進めるごとに球速がどんどん落ちていった。今年は球数を投げてもアベレージが落ちていない。体の使い方も良くなった。目標はNPBですけど、(後期開幕は)ホームで徳島と戦うので、僕がっていうか、チームとして勝てたら」。宿敵打倒に闘志を燃やしながら、完全復活を目指す。
高校、大学では全国的に無名
北海道にいた時代は全国的に全くの無名の存在だった。札幌第一高では強肩を武器に内外野でプレーした。2年春にチームは選抜甲子園に出場。菊池雄人監督(52)は「地肩が強くて片鱗はあった。甲子園ではベンチには入っていなかったけど、たしか打撃投手として連れて行った。打撃が良くて3年春の全道優勝は、彼のバットのおかげ」と、当時は打撃センスの方が光っていた。
札幌学院大2年オフに投手転向
転機は札幌学生野球連盟2部の札幌学院大2年のとき。春のリーグ戦後、チーム事情で投手陣が手薄になりコーチ陣から「誰か1イニングでも投げれるやついないか?」と、白羽の矢が立った。同年オフから本格的に投手メニューに入ると、3年春は野手と投手の二刀流で、同秋から投手に専念。公式戦勝利は、4年時春の1勝。最速は148キロをマークした。
4年秋までは就職希望だった
4年秋のリーグ戦を高知の青木走野スカウトが視察。「進路にまだ迷ってた時で、社会人に入れるほどの実力もなかった。試合は負けたんですけど、それなりに内容のあるピッチングができた。それがなかったら、野球をしてなかったと思います。一般就職を考えていたので」。様々な人との出会いが、若松の運命をプロの道へと向かわせていった。
当時からNPBスカウトも注目
同大の平間康允監督(40)は入学前から若松の可能性を感じていた。「セレクションで遠投させるんですけど、110メートルくらい投げてた」。若松の2学年先輩には20年のドラフト会議で中日から育成指名された近藤廉投手(25)が在籍。近藤を視察しに来たNPBのスカウトが「あのキャッチボールしている子は誰ですか?」と注目したこともあったという。秋にドラフトで近藤が指名され、胴上げの輪の中に若松もいたが、若松自身は「当時は本当に思ってもみなかった」と振り返る。
エースとして一試合一試合大事に
今月29日後期開幕の徳島戦で先発が有力視され、NPBのスカウトも複数が視察に訪れる予定。「まずは自分のピッチング。一試合一試合を大事にいきたい。エースとしての働きはまだ果たしてないので、これから示していけたら」。人生を懸け、勝負のマウンドに向かう。
■プロフィール 若松 尚輝(わかまつ・なおき) 2000年5月10日、札幌市生まれ。184センチ、94キロ。右投げ右打ち。札幌北光小学校2年時に、鉄東スワローズで野球を始める。札幌中央中では軟式野球部だったが、途中からポニーリーグの札幌東ベースボールクラブに入団。札幌第一高では内野手から外野手へ転向。3年春に全道優勝。夏は南北海道大会8強。札幌学院大では4年春に札幌6大学2部で1勝。変化球は、カーブ、スライダー、フォーク。