《元赤黒戦士の現在地・都倉賢前編》札幌の歴代最多得点記録を持つストライカーはJ3盛岡でさらなる成長目指し奮闘中
札幌在籍時に重ねたリーグ戦通算67得点
かつて北海道コンサドーレ札幌で活躍したOBの現在と過去に迫る『元赤黒戦士の現在地』。今回は通算67得点という札幌のリーグ戦歴代最多得点を記録するなど、長きにわたってエースストライカーとして活躍し、現在はJ3いわてグルージャ盛岡に在籍しているFW都倉賢(38)を紹介する。前編では盛岡でプレーする現在について話を聞いた。(以下、敬称略)
父の日で38歳の誕生日に決勝ゴール
6月16日、自身の38回目の誕生日に行われたホーム長野戦(3〇2)で、都倉は決勝点となるシーズン2得点目をゲット。父の日でもあったこの日は、札幌在籍時に誕生したまな娘がエスコートキッズを務めており、かっこいい父親の姿を娘の目前で披露したことも話題となった。かつて幾多の劇的ゴールで札幌サポーターを歓喜させてきたストライカーは、今も岩手の地で奮闘を続けている。
J2長崎を退団「まだまだやれる自信あった」
「長崎が昨年で満了になって。僕自身、長崎の3年目はなかなか出場機会が無く、プレーとしてもチームに貢献できなかった」。都倉は契約満了に伴い、3年間在籍したJ2長崎を昨季限りで退団。だが「自分のコンディションだとか、プレーのクオリティーというのは全く落ちていなかった。長崎での序列は低かったが、それはあくまでも監督が選ぶこと。まだまだやれる自信があったのが、一番強かったですね」と語るように、サッカーに対する情熱は全く衰えることは無かった。
「客観的に世の中はどう見ているのか」
燃えさかる情熱の炎を心にともす一方で、自身が置かれている状況も冷静に見ていた。「今年38歳になる人を客観的に世の中はどう見ているのか。試合も出ていないし、どういう状況なのかおそらく分からない。僕は僕のことを一番分かっているつもりなので、やる気もモチベーションもすごくある中で、周りが僕の現状をどう捉えているのかが分からなかった」。
やる気を発信すべくトライアウトに挑戦
答えを問うべく、都倉が選択したのはトライアウトへの参加だった。「プレーでアピールするというより、都倉がトライアウトに出るという意気込みみたいなものを伝えたくて。プレーで示せる自信はもちろんあったので、世の中にやる気を発信するという部分で参加して、実際にそこでのプレーを見てくれた盛岡が声をかけてくれました」。JFLのチームからのオファーもあった中で、都倉は24年シーズンを盛岡の一員として戦うことを決断した。
自身初のJ3の舞台 初心に返った
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自身初となるJ3での戦い。J1やJ2に比べ環境面で整っていない部分もあるが、そんな舞台で戦う日々に、都倉はかつての経験を思い出している。「プロ4年目のときにザスパ草津に行ったんですけど、その頃に非常に状況、雰囲気が似ているなって。そういうこともあって、僕の中でもう一回初心に返っている感じがすごくしていて」。プロキャリアをスタートさせたJ1川崎では出場機会をなかなか得られなかったが、2008年途中にJ2草津(現・群馬)へ期限付き移籍すると、完全移籍に移行した翌09年は43試合23得点をマーク。C大阪に在籍していたMF香川真司(35)に次ぐJ2得点ランキング2位に入り、日本のサッカーファンにその名をとどろかせた。
毎日が新鮮 チャレンジの日々
30代後半にして取り戻した初心を胸に、都倉は新たな戦いに挑んでいる。「またここから僕自身しっかりとアピールして、個人としてもチームとしても、ここからはい上がっていくという気持ちを持っているので、本当に毎日が新鮮です。単身赴任で家族と会えないのはすごくつらいし寂しいけど、腹をくくってきた。逆に言えば100%自分に時間を使えるので、毎日の生活でベクトルを自分に向けて、チャレンジしながらの日々が続いています」。
「目の前の一つのことに全力」
シーズン前に故障があったことも影響して、開幕から万全の態勢で臨めたわけではなかったが、ここに来てパフォーマンスが上がってきたと実感している。シーズンの半分を終え盛岡はJ3リーグの最下位(※6月30日時点)と苦しい戦いが続いているが、「チームとしてはここまでなかなか勝つことができなかったけど、監督が代わって、確実に勝つ確率の高いゲーム内容になってきている。自信を持って続けることが勝ち点につながると思う」と、後半戦での巻き返しに手応えを感じている。「しっかり残留するための勝ち点目標というのは意識するが、目標を立てたところで結局は目の前の1試合だし、もっと言えば一日一日の練習なので。先を見すぎることなく、目の前の一つのことに全力を尽くしていくだけだと思っている」。
「理論上は成長し続けられる」
冒頭で触れたように、都倉は今年で38歳になった。この先のキャリアについて、自身はどのように考えているのだろうか。「現状も、別にこの年までやりたいと思ってサッカーをしてきたわけではなく、一日一日を全力でやってきた積み重ね。(引退するときは)心が終わるのか、体が終わるのか、はたまた市場価値が無くなるのか、その三つのいずれかになると思う。個人としては生涯現役というのを目指しながら、日々のトレーニングでしっかり強度を高く保つことができれば、理論上は成長し続けられる、という気持ちで毎日やっている」。Jリーグ通算122得点を誇るベテランストライカーが、貪欲に追い求めるさらなる成長の先には何が待っているのか。都倉の今後の足跡に注目していきたい。
■プロフィール 都倉 賢(とくら・けん) 1986年6月16日生まれ、東京都出身。慶応義塾大在学中の2005年、大学を休学してJ1川崎に加入し、プロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせる。08年途中にJ2草津(現・群馬)に期限付き移籍。完全移籍に移行した翌09年には43試合23得点とJ2得点ランク2位の成績を残してブレーク。10年からJ1神戸でプレーし、契約満了となった14年にデンマークへ渡りFCベストシェランのトライアウトに参加するも契約に至らず。同年春の帰国後、当時J2だった札幌に加入。5年間の在籍で4度の2桁ゴールを達成するなど、札幌在籍経験選手では過去最多となるリーグ戦通算67得点を記録。札幌のエースとして16年のJ2優勝・J1昇格、17年のJ1残留、18年のクラブ史上最高の4位に貢献するなど一時代を築いた。19年からJ1C大阪、21年からJ2長崎、そして24年からJ3盛岡でプレー。札幌在籍5年間のJ1・J2リーグ戦通算成績は171試合67得点。Jリーグ通算成績は440試合122得点(24年6月16日現在)。187センチ80キロ。利き足は左。ポジションはFW。