高校野球
2024/07/18 17:00

廃部していた森高校野球部が来春にも復活 元オリックス・吉田雄人さんが監督となってゼロからの恩返し

森高校野球部復活に取り組む元オリックスの吉田さん=撮影・西川薫

新指揮官は北照で3度甲子園経験

 2021年に廃部になった森高校硬式野球部が、早ければ来春から活動を再開する。監督には北照で3度の甲子園出場を経験し、18年までプロ野球オリックス・バファローズでプレーした森町出身の吉田雄人さん(29)が就任予定。吉田さんは今年4月から同町の「地域おこし協力隊」の一員として活動を始めた。6月末に在校生を対象に体験会を行い、7月19日には第2回も実施予定。7月に入ってからグラウンドの土を入れ替える作業も済み、準備は着々。来春の入部希望者を随時募っていく。中学卒業時に地元を離れた吉田さんが故郷の野球部復活に手を挙げた、ある思いとは―。

地元企業の協力で荒れ放題だったグラウンドの土の入れ替え作業が行われた=本人提供

 

野球の力で森町が元気に

 6月26日、荒れ放題だった野球グラウンドに久しぶりに金属バットの快音が響き渡った。体験会の参加者は1年生から3年生まで、ほぼ初心者の男女15人。吉田さんのデモンストレーションに生徒から感嘆の声が上がり、それぞれ野球の楽しさを感じ取ったようだ。吉田さんは7月中旬に同町に引っ越した。現在は同町の少年野球2チームで週に一度、指導を行っており、昨年札幌で開講した小中学生対象の野球アカデミーも町内に開講している。

吉田さんは6月26日に在校生対象の体験会を実施した=本人提供

 

甲子園は特別な場所 再び聖地へ

 「甲子園は夢の舞台という感覚はないんですけど、自分のその時の実力以上のものを引き出してくれたような感覚があった、本当に特別な場所。高校野球の3年間は、あとの全てを犠牲にしてでも打ち込むに値する3年間。甲子園って、それぐらいの価値がある」。今度は故郷の監督として聖地を目指す挑戦が始まる。

2013年8月9日、夏の​​​​甲子園1回戦・常総学院戦の七回表二死、北照の吉田が中越えの二塁打を放つ

 

森高校は今年5月に地域連携校に 体験会は学校存続を探る一手

 少子化や過疎化の影響で、今春の同校入学者は20人に満たず、5月に地域連携校に指定。存続の危機にひんしている。同高野球部は、1965年の南北海道大会で4強入りするなど3季通じて全道大会に8度出場したが、2017年夏に連合チームとしての出場を最後に公式戦の出場はなく、21年に廃部。体験会の実施は来春の野球部復活と学校存続の可能性を探る一手だった。

反響大きく環境整備は急ピッチで

 「一刻を争う。段階を踏んでいたら学校がなくなっちゃう。来年4月には新入生を集めて、野球部をつくりたい。その中で、今いる生徒に対しても、部活、スポーツの素晴らしさを伝えてほしいという学校側の要望もありまして、在校生に対してもスポーツ、野球に触れてみないか、というイベントを企画した」。体験会の反響は大きく、吉田さんを含めた関係者は大きな手応えをつかんだ。これから急ピッチで環境整備を加速させる。

地元企業の協力で荒れ放題だったグラウンドの土の入れ替え作業が行われた(上写真)作業前(下写真)作業後=本人提供

 

函館東リトルシニア時代の先輩が

 今回の野球部復活計画の中心人物は、吉田さんの函館東リトルシニア時代の先輩で、駒大苫小牧では田中将大投手(35、楽天)と同期だった山本康伸さん(36)だ。主に町や森高校との連携を担っている。山本さんの弟は駒大岩見沢閉校の年に遊撃手として活躍した奉伯さん(28)で、吉田さんとは同シニアの元チームメートだった。「野球部ができた時にはコーチになっていただこうかな」と信頼を寄せている。

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