道勢27年ぶり快挙!一山本13勝で初の十両優勝
■大相撲九州場所 千秋楽(28日、福岡国際センター)
道勢27年ぶりの快挙! 大相撲九州場所千秋楽は28日、福岡国際センターで行われ、来場所の再入幕を確実にしている西十両4枚目の一山本(28、岩内出身=二所ノ関)が自身初の十両優勝を果たした。西7枚目の大翔鵬(27、追手風)をはたき込みで下し、13勝2敗でフィニッシュ。来年1月の初場所(東京・両国国技館)で、再び幕内上位を目指す戦いに挑む。
94年立洸以来 来年初場所での再入幕確実
13勝2敗。自身最多の勝ち星を3つ更新する堂々の成績で、一山本が初の十両優勝を飾った。来年1月の初場所では再入幕が確実だ。15日間、集中力を切らさず、得意の突き押し相撲を貫いた。
「序の口以来の優勝なので、うれしい。自分の持ち味である手を伸ばす相撲がしっかり取れた。(今年)最後の場所で勝ち越せたのが良かった」と胸を張った。
3敗の荒篤山が先に敗れ、土俵下で取り組みを待つ間に優勝が決まった。それでも表情は変えない。目の前の一番にすぐ気持ちを切り替えた。「ドキドキしながら見ていた。優勝したとは思ったけど、あと一番残っているので、しっかり相撲が取れるように準備した」。もろ手突きで大翔鵬の体を起こして最後は、はたき込み。2021年のラストを、わずか2秒の快勝で締めくくった。
岩内出身の28歳。16年春に中大卒業後、一度は福島町役場に就職した。“脱サラ力士”は17年1月の初土俵から約5年で大きな勲章を手にした。
北海道出身力士の十両優勝は1994年7月の立洸以来27年ぶりの快挙だ。「そんなに長く出ていなかったんですね。これから北海道の力士も増えていって、みんなでいい成績が残せれば」と故郷愛をにじませた。
「験担ぎをしないことが自分の験担ぎです」と相撲以外の時間は肩肘張らず、常に自然体。睡眠を「唯一の安定剤」とこよなく愛し、今場所の好成績も「たくさん寝られたおかげ」と笑う。
起きている時間は「相撲のことをあまり考えないように」と大好きな「キングダム」や「宇宙兄弟」といった人気漫画を読んでリラックスする。土俵で見せる闘志あふれる姿とのギャップに一山本の魅力がある。
今年は7月の名古屋場所で新入幕を果たし、幕内を2場所経験した。飛躍の1年となったが、満足はしていない。9月の秋場所は4勝11敗で十両に陥落。「壁を感じた」と幕内のレベルの高さも痛感した。
来年はさらに上を目指す1年になる。「しっかり稽古し直して、1枚でも多く番付を上げて、自己最高位を更新できるように頑張る。今場所みたいな相撲が取れれば、来場所も多く勝てる」。最高位は東前頭15枚目。十両優勝でつかんだ自信を力に、上へ上へと番付を駆け上がる。(近藤裕介)
■プロフィール
一山本 大生(いちやまもと・だいき)本名・山本大生。1993年10月1日、岩内町生まれ。岩内東小2年時に相撲を始め、大野農高から中大に進学。4年時の全国学生選手権で個人16強。16年春に大学を卒業し、福島町役場に就職。教育委員会に勤務しながら、少年団を指導。同年12月に二所ノ関部屋に入門した。17年の春場所で序ノ口優勝。得意は突き押し。187センチ145キロ。家族は両親と姉、兄。
二所ノ関親方へ恩返し「当たって引くな」の教え徹底
一山本の師匠・二所ノ関親方(元大関・若嶋津)は来場所中の1月12日に65歳となり、定年を迎える。入門以来、多くの指導を受けてきた一山本は「今場所中は『頑張れ。当たって引くな』とだけ言われていた。常に言われ続けていたこと」と恩師からのシンプルな助言を胸に奮闘し、恩返しの十両優勝を果たした。
来年1月、師匠にとって最後となる本場所を幕内力士として戦う。一山本は表情を引き締め、「しっかり勝ち越して褒めてもらえるように、一からまた頑張れれば」と力強く意気込んだ。
矢後ら3関取は苦杯…旭大星、北青鵬は幕下陥落も
西十両4枚目で優勝した一山本は来年1月の初場所で2場所ぶりの幕内復帰を果たすことが確実だ。
ほかの北海道出身3関取は今場所、苦しんだ。西十両9枚目の旭大星(32、旭川出身=友綱)は左膝を痛めていた影響もあり、2勝13敗。幕下陥落は免れない状況となった。東十両10枚目の矢後(27、芽室出身=尾車)も5勝10敗と振るわなかった。
初日の取り組みで右膝を痛め、2日目から休場した西十両12枚目の北青鵬(20、札幌出身=宮城野)も来場所、幕下からの再スタートとなりそうだ。