伏見寅威 三盗阻止&〝神の右手〟でウイニングボールキャッチ 涙の守護神を思いやる
■パ・リーグ12回戦 ソフトバンク2ー3日本ハム(7月13日、エスコンフィールド北海道)
2安打に盗塁阻止に好捕に好リード 頼れるベテラン捕手
影の立役者だ。日本ハムの伏見寅威捕手(34)が13日、エスコンフィールド北海道で行われたソフトバンク戦にスタメン出場し、勝利に大きく貢献した。
再加入後、初先発となったドリュー・バーヘイゲン投手(33)の好投を引き出し、バットでは2安打をマーク。九回は周東佑京内野手(28)の三盗を阻止し、最後は追い込んでからのファウルチップを〝神捕球〟して、歓喜のシーンを演出した。
ハイライトシーンで雪辱の補殺
これ以上、好き勝手にはさせない―。そんな、捕手としてのプライドが垣間見えた。九回1死一、二塁。この日、3盗塁を許していた周東が意表を突いて三盗を試みた。予期していたわけではなかったが、スタートを切った姿が視界に入り、体が反応した。完璧な送球で補殺。チームを救うビッグプレーになった。
盗塁阻止は共同作業 マウンド上の田中正を称賛
ただ、手放しでは喜べなかった。「それまで盗塁されまくっていたので」と悔しさをにじませつつ「(三盗の場面は)まさか走ると思わなかったけど、正義がちゃんとクイックで投げてくれていたのが大きかった」と冷静に振り返った。
肝に銘じる格言 勝負は下駄を履くまで分からない
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得点圏の走者がいなくなり、2死までこぎつけた。1点差での逃げ切りが目前に迫っていた。しかし、伏見の表情は険しかった。土壇場で逆転される怖さを痛いほど、味わってきた。慢心を戒めるように集中した。
「2アウトになって、気を抜いてドカンはダメだと思った。僕自身はよっしゃと思ったけど、まだまだと気を引き締めました」と打ち明けた。
珍しい好プレーで締めくくり 「神の右手が出ましたね」
代打の吉田に対し、追い込んでから5球目がファウルチップになった。いったんミットに当ててはじいたボールを右手でつかもうとしてお手玉したものの、執念で捕球。ファンをハラハラドキドキさせながら、少しコミカルに試合を締めくくり、ようやく満面の笑みがこぼれた。
プロ12年目で経験したことのないレアパターンのゲームセットになり「あれは珍しかったですね(笑)。人生初。あれは、なかなかないです。神の右手が出ましたね」と、はにかんだ。
忘れない投手陣への気遣い、心遣い
前夜12日の試合で同点弾を許していた守護神の田中正はセーブを記録した試合後、涙を流していた。これを伝え聞いた伏見は「最近は体調不良もあって自分では乗ってこられていないのかな。きのうの失敗も背負いながら、きょう登板してピンチを招いて、いろいろ思うところはあると思う。そこで手助けとまではいかないけど、なんとか正義のためにああいうプレーが出て良かったなと思います」と目を細めた。
必死にプレーした結果、救われた仲間が確かにいる。首脳陣、チームメートから信頼されるベテラン捕手は、いつも献身的に力を尽くす。