《岩本勉のガン流F論》忘れられないビールの味 田宮の復調で思い出したあの夏
■パ・リーグ12回戦 楽天4ー5日本ハム(7月16日、エスコンフィールド北海道)
大きかった山本拓の1球 試合を壊さなかった
試合を壊さなかったリリーバーの1球が劇的勝利を導いた。先発の山崎が六回、浅村に2ランを浴びて0―3となった。さらに味方のエラーも重なるなどし、2死満塁のピンチを迎えた。ここでマウンドに上がったのが山本拓。わずか1球で好調の1番・小郷を二飛に仕留めた。
経験豊富なバッテリーの次回に期待
まさにスーパー火消し。ここでの失点は致命傷になり得た。試合を壊さず、山崎を救った。後続のピッチャーがマウンドに上がりやすい環境も整えた。価値のある継投だった。山崎と伏見のバッテリーは六回、テンポアップを図った。ところが、ヒットを許した。ここで一度、どっしりと構え直すべきだった。経験豊富なバッテリー。次回に期待したい。
2軍落ちの可能性もあっただろう田宮
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そして、ヒーローとなったのは田宮。七回から途中出場し、十回に試合を決めるサヨナラ打を放った。ここ数試合、投手陣が大量失点したり、バッターボックスで空振り三振を繰り返したりと状態を落としていた。今季大ブレークしたとはいえ、そのままズルズルいけば、2軍落ちという可能性もなくはなかった。
リードにバッティングに 決死の覚悟を感じた姿
だが、この日の田宮は違っていた。サインを出す瞬間も、打席での立ち姿も相当、気合が入っていた。いや、決死の覚悟を感じた。八回に登板した杉浦こそ1点を失ったものの、九、十回のマウンドに上がった田中正と池田はいずれも1回をパーファクト。田宮が堂々とリードした。打席でも九回の第1打席で左前打。十回にはサヨナラ打だ。
覚悟の断酒を経てたどり着いた最高の味
野球リズムを回復させた田宮の姿を見て、必死の覚悟でもがいた1997年の夏を思い出した。95年にプロ初勝利を飾り、96年には2桁10勝。だが、97年はなかなか勝つことができず、リリーフに回った。そこで先発として再出発すべく、2軍で再調整することになった。その間およそ1カ月。大好きな練習後のビールをはじめ、酒を断った。体重も10キロ絞った。それが私なりの覚悟だった。再び1軍に昇格し、勝利を飾った日の夜。1人で缶ビールを開けた。涙がちょちょ切れるぐらい、うまかった。
投手陣にとっても大きい田宮の復調
捕手の〝復活〟は心強い。サイン一つ一つに自信があふれる。田宮の復調は投手陣にとっても大きな意義がある。また一つ強くなった田宮。さらなる飛躍、期待してるで!