《元赤黒戦士の現在地・佐藤尽前編》初代道産子キャプテン 指導者としての奮闘とプロ2年目に起きた悲劇
現在J2山形の指導者として活躍
北海道コンサドーレ札幌28年の歴史の中でキャプテンの大役を担った選手は13人。その中には北海道で生まれ育った選手が3人いる。3代目は現キャプテンのMF荒野拓馬(31)、2代目はその前任者で、過去最長の8シーズンに渡ってキャプテンマークを巻いたMF宮澤裕樹(35)。そして2004年シーズンにクラブ史上初めて道産子キャプテンに就任したのが、今回紹介する佐藤尽さん(49)だ。前編では21年からコーチを務めているJ2山形での日々に、そしてプロ入りから札幌に加入する以前までの話を聞いた。(以下、敬称略)
天皇杯3回戦で札幌と対戦
今年7月10日にNDソフトスタジアム山形で行われた天皇杯3回戦・札幌対山形戦。16年のJ2リーグ戦以来、両チームにとって実に8年ぶりとなる公式戦を戦った。山形のベンチには、かつてキャプテンとして札幌をけん引していた佐藤の姿があった。
縁あって在籍経験のないクラブへ
21年に山形のコーチに就任。過去に在籍経験のないチームとの縁を結んだのは、現役時代、そしてコーチとして京都で共に戦った石丸清隆(50、現J2愛媛監督)だった。「(16年からコーチを務めていた)京都を退団することになったタイミングで、次の行き先を探していたときに、(20年から)山形の監督だった石丸さんに話を伺ったところ、コーチの枠でということで。山形というチームに在籍したことはなかったですけど、人とのつながりと、うまくタイミングが合ったことで就任しました」。
常に挑戦する姿勢や取り組み
初めて在籍することとなった山形について「地方のクラブがこれから上がっていくために必要な要素といったものに、先駆けてチャレンジしていっているなと」と、常に挑戦する姿勢を持ったクラブという印象を抱いたそう。「サッカーの面でも、選手が見て、ここでプレーしたいと思うようなサッカーのプレーモデルを提示して、実践していて。それがうまく結果につながるような形になれば一番ベストな中で、今はやりくりしているような状態ですけど、集客のためのイベントなどを見ていても、すごく魅力のあるクラブだなと、実際に入ってみて思いますね」。
21年は暫定監督の経験も
山形のコーチとしての初年度だった21年、佐藤に試練が訪れる。この年の山形は開幕当初から不振に見舞われ、第9節終了時点で1勝4分4敗。22チーム中20位と下位に低迷する中、石丸監督が4月22日に成績不振を理由に解任された。そして新監督招へいまでの暫定監督として佐藤に白羽の矢が立った。佐藤にとっては初めてのJリーグでの監督就任だった。
「コーチ陣、選手も含めて、目指しているものを共有できていた中で、うまく結果が出なかった。その責任を監督1人だけが取って交代するという感じだったので、自分が監督になったというよりも、せっかくサッカーを積み上げている段階だったから、とにかくそのサッカーを継承して、もう一回、チームとしてブレずにやろうということを発信したぐらいで。監督ってこういうものだよな、ということを味わうような、そんな心境ではなかったのは確かですね」と当時を振り返る。4試合で指揮を執り、2勝1分1敗とチームを前進させて、その後、正式に就任したピーター・クラモフスキー監督(46)にバトンをつないだ。
J1昇格の目標へ手応えも
現在は23年途中から指揮を執る、こちらも札幌OBである渡邉晋監督(50)の下、主にチームの守備面の指導を担当。第26節終了時点で、昇格プレーオフ圏内の6位まで勝ち点10差の12位と苦しい戦いが続く。
「プレーオフまで行って、最後の1枚の切符をつかむまであと1、2試合というところまで2年連続で行けているというところでは、J2の中でのこのクラブの地力みたいなものは少しずつ上積みされている。地力がついてきた中で、あともう一つ、確実に昇格できる1位、2位を目指すというところで今年はスタートしましたけど、現状、その目標のところに遠ざかっているような感じではありますけど、手応えみたいなものを感じられている部分は選手もスタッフもあるので、それをどう結果につなげていくか」
今夏の移籍市場で山形は14年間に渡って鹿島ひと筋で活躍してきたMF土居聖真(32)らを補強。3年連続のプレーオフ進出、そして15年以来のJ1返り咲きを目指して、後半戦での逆襲を狙っている。
室蘭大谷時代の先輩は深川友貴 後輩には札幌の現強化部長
ここからは佐藤の現役時代にスポットを当てていきたい。室蘭市出身の佐藤は、北海道の高校サッカーの名門である地元の室蘭大谷(現・北海道大谷室蘭)に進学。自身初出場となった高校2年時の全国高校サッカー選手権では、5年ぶり3度目のベスト8進出を経験した。高校卒業後は国士舘大に進学。同じ進路を辿った中には、2学年上に札幌などで活躍した深川友貴(52)、そして1学年下には、現在も深い親交がある札幌強化部長の竹林京介(48)がいる。