ファイターズ
《ハム番24時》8月10日
お盆が近づき、記者は休みの都合で一足早く、遠い地元へと足を運んだ。先祖の眠る墓に手を合わせると毎回、センチメンタルな気持ちになる。満足いくだけの親孝行ができなかったのだと、再認識させられるからだろう。
故人をしのぶことの本旨は、自分なりの解釈で帰らぬ人の意思を継ぐことであると思う。ソフトバンク3連戦の期間中だった8月3日の試合前練習中に、こんなシーンがあった。
バッティング練習の直前。打撃投手を務めたスタッフの谷元さんはマウンド付近に立つと、しばらくドームの天井を見上げていた。その日は2021年に27歳の若さで亡くなった中日時代のチームメート・木下雄介さんの命日だった。
後日、話を伺うと、言葉を選びながら行動の真意を明かしてくれた。「あの時は『雄介、見てるかな?』って考えてた。薄っぺらいかもしれないけど…。今こうやって投げられていることは、当たり前じゃないって思う。俺、一生懸命、頑張るよ」。とつとつと話す姿が強く印象に残った。
谷元さんは引退するまで、ユニホームの一部にマジックで小さく木下さんの背番号『98』の数字を書き込んでいたという。「勝手に、思いを背負って投げてたんだよね」。その優しさが心に染みる。小さな大投手から、ありふれた日常の尊さを教えてもらった。