《鶴岡慎也のツルのひと声》金字塔を打ち立てた盟友 リリーバーに必要な要素をすべて持っている
■パ・リーグ15回戦 西武1ー5日本ハム(8月10日、エスコンフィールド北海道)
チーム力上昇を印象付けた試合内容
ファイターズのチーム力は確実に上がっている。そう実感できる試合内容だった。西武・今井の状態は素晴らしかった。直球、スライダー、チェンジアップ。いずれも良く、好調の清宮も完璧に封じ込められた。それでもバーヘイゲンが最少失点でしのぎ、リリーフ陣が追加点を与えなかった。
ワンチャンスをモノにした強いチームの勝ち方
ロースコアに持ち込むしかない中で、投手陣がそれぞれのポジションで役割を全うした。もし仮に先に追加点を奪われていたなら、今井がスイスイと投げ抜いていた可能性はある。しっかりと食らいつき、打線は七回に、ワンチャンスをモノにした。強いチームの勝ち方と言える。
ビハインドで登板するリリーバーに求められるもの
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投手陣の中でも、山本拓の好投が、より光った。彼のピッチングが攻撃にリズムをもたらした。ビハインドの展開でマウンドに上がる投手に求められているのは、テンポ。ただ抑えるだけではなく、攻撃につながるテンポが必要とされる。ストライク先行で、しっかりと2回を投げきってくれた。
想像できる勝ちパターンでの登板
まだ若い。しかもボール一つ一つの精度が高い。小柄な体格から放たれる浮き上がるような直球。ストレートと同じ軌道から滑るカットボール。空振りの取れるシンカー。ナックルカーブもある。近い将来、勝っている展開で八、九回に登板している姿が想像できる。そのためにはコントロール。決して悪くはない。ただ、もう1段階上のレベルを求めたい。ストライクを取れる制球力は備わっている。四隅に投げ分けられるコントロールがほしい。
頭が下がる前人未到の400ホールド
ぜひ触れておきたいのは400ホールドを達成した宮西だ。これまで積み重ねてきた実績は誰もが認めるところ。だが、ここ数年、パフォーマンスを落としていた。大記録を前に「やめたい」と思ったこともあったはずだ。「チームのために」との思いが、折れそうな心を奮い立たせたのだろう。頭が下がる。この日も1回をパーフェクトだ。
若い投手陣にとって生きた教材
ファームから上がって来た時、チェンジアップをマスターしていたのには恐れ入った。一時代を築いたベテラン。新球を取り入れるにはエネルギーがいる。スタイルを変えてまでも高みを目指し続ける。その姿勢が最も素晴らしい。彼はリリーバーにとって必要な要素をすべて持っている。準備を大事にし、ケアには余念がない。そして開き直ることの大切さを知っている。この日、好投した山本拓を含め、若い投手陣がその姿から学ぶことは、まだまだ多い。
長谷川や本多、中村晃… 楽しかった駆け引き
私自身、彼と長くバッテリーを組み、戦ってきた。ストレートとスライダーのみで勝負してきた。特に左の好打者との対戦は楽しかった。そこに存在したハイレベルな駆け引き。球種、軌道の読み。2人でいろいろ話し合いながら、やってきた。ソフトバンクの長谷川や本多、中村晃。彼らとの勝負が頭をよぎる。