ファイターズ
《ハム番24時》9月9日
今年もまた、寂しい季節がやってきた。鍵谷が先日、今季限りでの引退を表明した。名門・北海高校出身。本拠地移転後、北海道出身選手として初勝利を記録するなど、長く北海道球界を盛り上げてきた功労者だ。
かつてチームメートとして切磋琢磨したスタッフの谷元さんは「本当に悩んで、色々な人と相談して出した結論だと思う。順風満帆なことも、苦労もあったはず。『お疲れ様』しか言えないです」とねぎらい、しんみりと思い出話を語ってくれた。
「ルーキーだった彼のボールを見て、僕は球の勢いだけで勝負できないなって思わされた。どこかでスピードを求めていたけど、全然かなわない(笑)。6学年も違うのに、グラウンドでは後輩というよりもライバルだった印象かな」
2人は2016年のリーグ優勝、日本一にも大きく貢献した。「毎日、歯を食いしばって投げてました」と、競うように登板数を伸ばした過去を懐かしむ。ポジションを争う好敵手とは、プライベートでも良好な関係だった。
「ロッカーでは『谷さん、谷さん』って言ってくれてね。可愛かったな~。タク(中島)とか、いろんなメンバーで食事にも行きました。初めて大谷翔平とご飯へ行ったときも、セッティングしてくれたのは鍵谷でした。誰からも慕われる存在ですよね」
ユニホームを脱いでから、約1年が経過した。谷元さんは葛藤を繰り返した当時を振り返り、最後にエールを送った。
「生まれ育った北海道で、セレモニーがあったらいいよね。引退する日って卒業式であり、誕生日だから。僕は(引退試合が行われた)10月3日に、新しい人生がスタートした。きっと思い出の日になりますよ」。先輩の眼差しは、どこまでも優しかった。