otsumami feat.mikanが安平で初の生ライブ開催 青葉紘季「この先を絶やさぬように」
A Villa idol festival HOKKAIDO 2024」で初の生ライブを行ったotsumami feat.mikan=撮影・十島功
タイトル未定の冨樫優花がボーカル
歩みのスピードは、確実に加速している。青葉紘季を中心に活動し、北海道発のアイドルグループ・タイトル未定の冨樫優花がボーカルのmikanを務めるクリエイターユニット・otsumami feat.mikanが、8月9日に新曲「ニゲナツ」をリリース。9月1日には安平町ときわ公園で行われた「A Villa idol festival HOKKAIDO 2024」に出演し、初めてオーディエンスの前でライブを披露した。活動が本格化してきた彼らの今後に注目だ。
ボーカルのmikanとして活動するタイトル未定の冨樫優花
「みんな温かく見守ってくれた」
充実感に満ちた空間だった。初の生ライブを終えたotsumamiメンバーは楽屋で撮影した動画をチェックしながら、ライブを振り返っていた。新曲「ニゲナツ」を含む全7曲を披露。青葉が「めちゃめちゃ楽しかったですね」と白い歯を見せると、mikanは「緊張したんですけど、みんな楽しみにしてくださっていて、温かく見守ってくれたので、緊張した気持ちがちょっと楽になりました」と夏の終わりに訪れた濃密な40分間を振り返った。
ボーカル・mikanの誕生
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「好きなことを、好きな人と、好きなだけやる」というテーマで始まったotsumami。「自分たちの、より純度の高いものを作りたい」という渇望の活動がスタートし、ボーカルを固定することも考えずに青葉を中心に楽曲を制作していた。5、6曲ほどのストックが貯まってきた頃、デビュー当初から関わっていたタイトル未定の冨樫に歌わせてみると、イメージがハマり、ボーカル・mikanが誕生した。当初は姿を見せることなく活動していたが、徐々に輪郭がくっきりしてくると、収録したスタジオライブを6月にYouTubeで公開。水面下で活動していたotsumami feat.mikanが浮上した瞬間だった。
安平で初の生ライブを行ったボーカル・mikan
確かに刻んだ一歩目
そして迎えた初の有観客ライブ。アイドルフェスだったこともあり、「やっぱりホームグラウンドっていうところがあって、楽しみにしてくださっていたっていうのはステージから見ても感じることができた」(青葉)と、会場は温かさに満ちていた。安平町に響き渡ったmikanの伸びやかな声には、青葉も「相当気合入ってましたね。声がすごく乗ってました」とニッコリだった。確かに刻んだ一歩目を無駄にするわけにはいかない。「一発目のライブをできたので、この先を絶やさぬように」と次のライブを見据えた。
ギターを弾く青葉紘季
ネオ・アコで夏を振り返る
otsumamiとして3度目の夏、一つの足跡となる「ニゲナツ」をリリースした。mikanと話をしていく中で「(過去を)捨てていく行為ではなくて、もう一度拾い集めて進んでいくことを描きたい」と、これまでの夏を振り返るというコンセプトが定まった。90年代に流行したネオ・アコースティックを意識したという。
青葉は「今、このサウンド感はない。僕がリアルに感じてきた時代でもあるので、これはこれでエネルギーがある。(『ニゲナツ』が)振り返って強くなるというテーマでもあったから、このサウンドを掘ってみよう」とメロディーを仕立て上げた。制作側に携わる比重が増えてきたmikanは「MVも提案させてもらいました。今までの思い出を振り返りながら、まだまだ前に進んでいこうという気持ちを込めました」。
ギターを弾きながら歌唱するmikan
彼女にしか分からないツボがある
「A Villa idol festival HOKKAIDO 2024」ではギターの弾き語りも行ったmikan。制作面を含め、新しいことへの貪欲な姿勢を、青葉は「結構好きですね」と目を細める。さらに、mikanは楽曲を理解するまで妥協なく突き詰めていくタイプ。青葉は「(楽曲を)自分のフィルターを通して表現することにすごく真剣に向き合う人。彼女にしか分からないツボがある」と感心し、安平での初ライブを通して「やっぱりこの子は向いているなっていうことを、偉そうながらも実感した」。
アイドル活動を掛け持ちしながらではあるが、アーティストとしての幅は確実に広がっている。青葉も「日々のやり取りの中で彼女の成長した部分も感じるし、もっともっといいボーカリストになっていくだろうなと。いいミュージシャンになってほしいと思います」と願いを込めた。
5月、プライベートスタジオにてotsumamiについて話す青葉紘季氏
独立した個の集合体
otsumamiは「ゲスの極み乙女」のジャケットを手掛けたイラストレーターの福井伸実を起用するなど、多彩なクリエイターが集合している。そんな自由なクリエイター集団を通して、個の花が大きくなることを望む。青葉は「メンバーそれぞれが個々として独立している集合体だと思っている。このotsumamiというものを通して、個々の場所でもう1ページ先に進む、もう一色の活躍の場が増えるとめちゃくちゃいいですよね」。
実際、福井が開いた個展にotsumamiきっかけで訪れたファンもいたという。「ある日突然ドーンって集まってドカーンとやって、また散り散りになって、みたいな。そういう集団になれるといいかな」と理想の姿を思い描いた。
こだわって作ったものを多くの人へ
「後にも先にも自分の作品をこだわりまくって、向き合って作り上げて、それを一人でも多くの人に届けようとすることしか、ミュージシャンというのはやることがない。だから、ただそれを続けていくということなのかな」。〝地上〟での活動が精力的になっていきながらも、制作への渇望という根っこの部分は変わらない。好きなことを突き詰めた先にあるピュアな音楽を生み続ける。