《SHINJOの信条》3年目は僕が選手を信じて任せるという気持ち。信じた結果がこの成績に
■パ・リーグ23回戦 楽天1ー2日本ハム(9月26日、エスコンフィールド北海道)
―6年ぶりのCS進出が決定。今の気持ちは
「めちゃくちゃ疲れましたね。最低でもCSに行くという目標を、かわいい選手たちが、かなえてくれて感謝しても感謝しきれない気持ちでいます、今は」
―開幕投手の伊藤がきょうも投げきった
「きょうのピッチングで、ファイターズの投手の中で一番、野球がうまいピッチャーになりましたね。まだエースではないです。彼はもっともっと上を目指せるピッチャーなので。球界のエースになる素質は十分にある。ここでは、まだ褒めるわけにはいかないです」
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―ブルペンでは中継ぎも肩をつくり始めていた。監督の中では最後まで投げさせるつもりだったか
「はい、もちろんです。いつも伊藤くんが先発の時は、九回も伊藤くんと決めて、一回から見ているので。伊藤くんもそのつもりで、一回から九回まで僕が投げて、ゲームを終わらせるという気持ちを持っていると思う。それが伝わってくるし、七回ぐらいから、いつも『もう1回いくよ、もう1回いくよ』ってアイコンタクトを取っています」
―レイエス、清宮が本塁打。夏場以降の2人の活躍がCS進出の原動力に
「この3番、4番は1カ月半前ぐらいから。この並びがチームを勢い付けてくれるし、何かやってくれるという雰囲気がある。その前に9、1、2。8も含めて、この2人に回せば点数が取れるという意識を持っていると思う。良いところで打ってくれるので。でも3番の子は九回、ファーストを守っていたのにサードに行こうとしていた(笑)。また褒められないなって…。びっくしりましたよ。おいおい、サード用のグラブ持ってるやないかい!って。慌てて戻って、ファーストミット着けて、らしいなって(笑)。ハハハ」
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―最後は清宮の守備で試合が終わった
「何か持ってるのかな~(笑)」
―2年間で選手が成長。今季はどう違うか
「僕が監督をさせてもらって、2年間は僕を信じて野球に取り組んでもらって。いろいろな野球を教えながら成長させて、3年目は僕が選手を信じて任せるという気持ちで。信じた結果が、この成績になった。それだけですね」
―きのうもきょうも3万人超の応援があった。CSではどんな戦いを見せてくれるか
「正直、僕の中では優勝できなかったら2位も3位も一緒だな、と。CSに出ることが大事なので、ここからまたどうなるか分からないけど、頭の中ではクライマックスを飛び越えて日本シリーズに出るということしか考えていないので。選手たちも全員、そういう気持ちで。まずはクライマックスを勝たないといけない、という気持ちだと上は目指せない。みんなにもそういう気持ちを伝えたいなと思います」
―CS決定が目前となり、2試合、足踏みしたが
「全然、大丈夫っしょ。決めたいという気持ちはありましたけど、エスコンで決められた。見に来てくれたファンのみんな、北海道で応援してくれているファンの前で、一番良い形で決められましたね。あさって、しあさっても(試合が)あって、どちらか勝つだろうという気持ちもありました」
―決まった瞬間に万歳していた
「いや、もう伊藤くんが最後まで。開幕を任せて、クライマックスを決めるところ。1点差で九回を投げきって抑えたところの喜びのガッツポーズでしたね。成長しましたもんね、人間として。伊藤くんの日々のトレーニング、練習で勝ち取った14勝だと思うけど、その前に人間としての成長があって、14勝だと僕は思っているので。こういう選手を何人もつくりたいなという気持ちで3年間、やっていましたね」
―人間的成長はどの部分に感じるか
「マウンドさばきにしても、球場での態度、取り組み方。キャンプから一番最初に球場へ来て、ミーティングも一番前に座って。そういう姿勢を自分が背中で見せようというのがあったんじゃないですか。それで成績も付いてきて、ハッキリと背中で見せられる選手になりかけている。さっきも言ったようにファイターズのエースじゃダメ。球界のエースにならないといけないピッチャー。そこを目指さないといけないし、必ずそこにたどり着けるという気持ちでやってもらいたいです」
―1年目にスターをつくりたいと話していた
「7人ね」
―その中の一人が伊藤
「なりますよ、もちろん、もちろん。でも本当のスターではないですけどね(笑)。名前はみんなに知られてきたけど、ここからは成績が重要になってくる。水野くんも守備はかなり良くなって、あとは打率とか打点とか盗塁とか。何かのきっかけをつかめば、ポンッとスターになれる選手。他のメンバーも可能性はものすごくある。そういう選手をつくり上げられたのは、僕の人生の自慢に入りましたね」
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―清宮もスターの一人
「フフフ(笑)。そりゃ入るでしょ。オールスターでMVPを獲るということはスターですよ。なかなか出られないし、なかなか打てるものじゃないですよ。万波くんもね、獲ったし」
―CS出場で一つの目標を達成。来年以降(の去就について)はどうするか
「僕の? まださっぱりビジョンが浮かんでこないですね。僕の中では」
―CSを終えてから考える
「ですね」
―就任当初は批判もあった。今はもっとやってほしいという声が多い
「それがないと(チームを)つくり上げられない。批判やら、何しとんねん、むちゃくちゃなことするなって。それは僕の頭の中のストーリーで分かっていたことなので。さあ、見といてねって。この2年間、その形で野球をして成長させて、ここで納得してもらう。今、納得してくれている野球ファンの方たちは、あのチームをここまでつくり上げてきた、というように変わっていると思う。これを良いお手本じゃないですけど、世代交代でここから、つくり上げていかないといけないチームは、僕のやり方をやってもらえたら、3年でつくれますよって。そういうところはプロ野球のために。僕がプロ野球を変えたいと言ったことの一つではありますね」
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―就任当初、新しい監督像をと話していた。マネジメントも含めてか
「もちろん。監督業っていうのは1年、2年で成績が出なかったら、首を切られるわけじゃないですか? それを我慢して自分を信じて…。3年契約が多いじゃないですか? つくり上げていく自分との戦いはしないといけない。何と言われようが、むちゃくちゃ言われようが。僕は家族がいないから、まだいいんですけど。家族、子どもがいたら、批判とかに耐えられない部分はすごく分かる。信念を持って、つくり上げる、やり通すことが大事ですね」
―引退後に日本を離れていた。ビジョンはずっと持っていたか
「ない。だって、まず選手の名前を覚えることから始まった。相手チームもそう。投手も野手も、打球方向やら、どうやって攻めてくるとか。まずは自分のチームを覚えることで1年間を使って、その中で相手チームも。だからiPadが必要なんですよ。頭にインプットしての3年目勝負。もう把握しているので。ちょっともう頭の中が…」
―去年までは作戦面でも思い通りに選手が実行できないことがあった。今年は選手が言わなくても動いている。監督冥利(みょうり)に尽きるのでは
「いやいや。もっと前をたどると、これ(監督が目指す野球)をできる選手をスカウトの方が見極めて、球団の吉村さん(統括本部長)を筆頭に取ってきてくれたことがものすごくでかいんですよ。僕はただ、その選手を使っているだけであって。できる素質を持っている選手を取ったことが一番のポイントなんです。だからもう、スカウトの方とフロントには感謝しています」
―その采配をできる人が限られる
「ふふふ(笑)。慣れでしょう。慣れさせることでしょう」
―ファンは監督がチームを変えてくれたと
「(ここまで指揮を執れた要因は)吉村さんの一言です。1年目のキャンプに入る前に、スタッフミーティングで『新庄監督の言うことは絶対です』からスタートしてもらったんですよ。その言葉が今でも(心に残っている)。朝起きました、球場を出る時にその言葉が頭にポーンと浮かんで、さあやるぞと。そのためには、僕が勉強して、育てるために段取りを組んで。あの言葉がなかったら途中で折れていた。特に2年目のガタンと落ちていた時(7月に13連敗)に。CSに行くことで、とりあえず、恩返しができたかなと、僕なりに思います」
―監督が目指す野球の完成度は今、何パーセントぐらいか
「もう十分です。100パーセントですね。はい。だって…どれだけ年俸、違うの(笑)。よそのチームと。そのメンバーをここまでしたというのは、100点ですよ。点数をつけるのは嫌なんですけど、もう満点。ちょっと驚いていますけどね、自分でも」
―28日からソフトバンク戦。CSをにらんだ戦いになるか
「あまり考えていないですね。別に3位でもいいと思っているので。出ることに意味があるから。3位だったとします。北海道のファンの方たちはエスコンで見たいと思うんですけど。ロッテさんが来た場合、千葉でも相性がいいでしょ。楽天さんが来ても、またきょう勝って、こっちに勢いが来たし。3位でも出られる。決めたことが大事なのであって。あまりCSどうこう、何か浮かんでこない。現役の時からなんですよね。CSをあまり深く考えずに…」
―現役時、ワールドシリーズも出ているが
「いやいや(笑)。日本シリーズに出て、ここ(エスコン)でファンのみんなに見せたい、という頭しかないですね」
―CSは通過点
「僕はね。それしか浮かんでこないです」
―ソフトバンクに勝てば、パの全球団に負け越すことなく、レギュラーシーズンを終えられる
「それはもう…なんで優勝じゃないの(笑)。すごくないですか、それは」
―過去2年は全部、負け越し
「2年間はどうでもいいんですよ。今年なんですよ。立て直す土台をつくる2年だったので。これでマネジメントは成功じゃないですか」
―短期決戦への備えは始まっているのか
「もう、始まっていますよ」
―相手がどこでも関係なく
「もちろん。1カ月ぐらい前から考えていますよ。早く考えないと、急に考えていないものをパッとやってもできないし」
―セ・リーグも含めて想定しているのか
「ふっふ(笑)。それを言うとまたほら、荒れるでしょ(笑)。ユーチューバーたちが。いいんだけど。荒れさせるのも一つの方法なので。こっちに向かせるためにもね。好き勝手に書いてください(笑)」