《岩本勉のガン流F論》フロントに異を唱えてまでこだわったもの 先発完投型が見るべき景色
■パ・リーグ23回戦 楽天1ー2日本ハム(9月26日、エスコンフィールド北海道)
ボールが強かった伊藤 好投を導いた田宮のリード
伊藤が見事な完投でハーラー単独トップの14勝目を飾った。立ち上がりから、めちゃめちゃボールは強かった。何より、逆球がなかった。ここが好投の最大要因だった。そのピッチングを引き出したのが女房役を務めた田宮だった。
マイナス要素もある完投癖
2試合連続シャットアウト中だった伊藤。完投癖がついてきていた。完投癖といえば聞こえはいい。ただ、物事には良しあしがあり、投球もしかり。自分1人で投げきることをイメージした投手は、自然と立ち上がりに出力を抑えてしまうことがある。変化球でバランスを取るなどしながら。そこに待ったをかけたのが田宮だった。上位打線に対して2回り目まで、どんどん強い球をインコースに要求。その後の対戦を優位にした。
松坂も西口もジョニーも 常に狙っていた完投
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私も経験がある。そんな時、投手コーチによく言われたもんだ。「ペース配分を考えるな!」。キャッチャーの山下さんも、それを見越して、立ち上がりはインハイのストレートをバンバン要求してくれた。分業制が当たり前となっている現在とは状況が違うが、皆、先発完投にこだわりを持っていた。松坂しかり、西口しかり、ジョニー(黒木)しかり。そういうライバルがいたからこそ、私はいつも完投を目指した(1998年には10完投、99年には9完投といずれもリーグトップを記録)。
声高に訴えた「完投を評価してくれ!」
球団からの要求に異を唱えたこともあった。11勝を挙げた98年のオフ。フロントから言われた。中4、5日で5~6回を投げてくれればいい」「リリーフに任せればいい」と。ハッキリと断った。「できません!それではチームの信頼を得られない」「完投を評価してくれ!」と。翌年の99年。意地もあった。そしてキャリアハイの13勝を記録した。
道産子右腕のさらなる飛躍に期待
先発完投型のピッチャーが見るべき景色がある。肩にアイシングを施し、風呂に入って一番最後に球場を出る。ガランとしたロッカーを背にし、スタジアムを後にする。そこに私は充実感を覚えてきた。KOを食らった日だって、いち早く帰っていいわけじゃない。主力の選手がケアを終えるまでは待っていなきゃいけない。それがチームだ。充実感に包まれて球場を出るのか、悔しい気持ちを背負って帰路に就くのか。伊藤よ、これから前者の景色を存分に目に焼き付けていってや!