上沢直之の連載インタビュー『うわっちのUSAレポート』vol.5 帰国したばかりの右腕が現状と今後など語る
移籍あり、昇格あり、負傷もあって激動の1年
昨季まで日本ハムでプレーした、レッドソックス傘下の3Aウースター・上沢直之投手(30)の連載『北海道から世界へ うわっちのUSAレポート』第5回では、日本へ帰ってきたばかりの右腕を直撃しました。米挑戦1年目の今季はレイズとマイナー契約を結んで海を渡り、3月末にレッドソックスに移籍。4月末にメジャー昇格を果たし、2試合に登板したが、5月上旬にマイナーに合流していた。3Aでは思うような結果が残せず、今月頭に右肘を負傷した影響もあり、シーズン途中で帰国していた。今の現状、今後の見通し、そして日本に戻ってすぐに口にしたものとは? ざっくばらんに語ってもらった。
ひげ生やしてワイルドに「IT社長っぽい」
―上沢投手、ご無沙汰しています。ひげを生やして、ワイルドな風貌になった
「IT社長っぽいですよね。街を歩いていても、周りに気付かれないです(笑)。いい年だし、なんか雰囲気変えてみようかなって」
―1週間ほど前に日本へ帰国した
「家族に会えたのは、僕の中で精神的に落ち着きました。娘がすごく喜んでいましたね。精神的にかなり落ち着いて生活ができています」
―画面越しに会うのと、直接会うのは違う
「そりゃそうっすよ。家族のありがたみは、より感じますよ」
―日本に帰ってきて、どのように過ごしている
「1週間くらいゆっくりして、今日(25日)から(練習を)開始しています。ジム行ったり、パーソナルというかトレーナーの方に教えてもらいながらやっています」
―9月頭に右肘を痛め、シーズン終了を待たずに帰国となった
「負傷した時は結構状態が悪くて、今は肘の曲げ伸ばしとかできる。だいぶ症状は落ち着いてきている」
―痛めたのは
「試合中ですね。その前くらいからちょっと気になるなくらいだったのが、段々試合になって悪くなりました」
「しんどい思い無駄にしたくない」
―改めてこの1年を振り返って
「タフな1年でしたね。野球人生の中でも精神的にも肉体的にも。やっぱりしんどかったですよ。思うようにいかない、うまくいかない。言葉も難しかったですし、結構ストレスがかかる1年でしたけど、やっぱり行かないとこういうことも分からなかったし、行ってこれから先に自分の中の課題も見つかった。このしんどい思いをした1年を無駄にしたくないですね」
「うまくいかないときは家族に会いたくなった」
―日本へ帰りたいと、弱気になることもあった
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「やっぱ野球がうまくいかないときは家族に会いたくなったし、日常会話とかでも思うように伝えられない、言いたいことを伝えられないときは辛いなって時期もありました」
―4月末にはメジャーに昇格し、中継ぎで2試合投げた
「それはすごく僕にとってもうれしかったですし、メジャーで投げるのはいいことだなと思いました。あの舞台でもっと投げたい思いは正直強いです」
―日本では先発起用がメインだった。リリーフの大変さを痛感した
「そうですね。僕は慣れていなかったので難しかったですね。役割が変わるだけでこんなに別物とは。僕はそんな感覚がありましたね。同じポジションといえど、役職変わるだけで投げ方も変わるし、すごくこんな変わるんだって感じでした」
―同期の松本剛ら元チームメートとは、連絡を取り合っていたと聞いた
「連絡をくれていたし、僕も連絡していたし。なんかいろいろ連絡くれた人もいたし、すごくありがたかったです。もっと良い形でシーズン終わって帰ってこられたらよかったですけど…。長い人生うまくいかない年も絶対あると思うし、これをどう自分の中で落とし込んでやっていくかが大事なので」
「怖いことなんて結構いっぱいあった」
―野球以外で、米国で暮らしてみて
「怖いことなんて、結構いっぱいありますよ。やべーヤツはいっぱいいますから(笑)。危機一髪とか、そこまでやばいやつはないですけど、危ない人はめっちゃいる」
―メジャー経験のある建山投手コーチが、米国に行くと自由になると話していた。性格は変わったか
「言いたいことは言った方がいいと思うし、細かいこと気にならなくなりました。(価値観)変わりますよ。小さなことが幸せに感じる」
―たとえば
「日本人の店員って丁寧だな~とか。めっちゃ思いますよ。丁寧な人もいますけど、てきとーな人が多い。敬語の文化がないので。かしこまりましたとか。丁寧だな~って」
納豆ご飯めっちゃうまかった
―食事面も大変だったと思う。日本へ帰って最初に食べたのは
「納豆ご飯ですね。納豆ご飯でしょ。普通。大きい都市には(納豆)ありますけど、僕が行っていた3Aには…ジャパニーズスーパーはないので。めっちゃうまかった。納豆めっちゃ好きになりましたもん(笑)。毎日食っています」
―小さな幸せ
「遺伝子レベルで落ち着きますよ。やっぱり。あっさりしているものがいいですね。油が重いっすもん」
―英語は上達したか
「難しいっすよ。思ったようにしゃべれないし。簡単な意思くらいなら伝えられますけど、難しい言い回しとか。言っていることは何となく理解できるんですけど。テラ(寺嶋通訳)に助けてもらいました」
―米国残留か日本球界復帰か今後については
「今後に関してはまだ本当に決めていなくて、代理人とか家族と話して決めていかないといけないと思います。やっぱりアメリカでやり残したことというか、うまくいかなかったことが多かったので、すごく悔しい思いも全然まだ残っているし。難しいところですね。今は正直…」
―日本に戻りたい思いもある
「でも、やっぱり大きく崩れたものを直すには、慣れ親しんだ環境で、しっかり練習できるところでやった方がいいのかなっていうのもあるし。少し時間かけて直したのもあるので」
―痛めた右肘
「もあるし、パフォーマンス的に。技術的な話ですけど、ちょっとズレているところがある感じなので。だからいろいろ考えないといけないかな、というのも正直あります」
治療、練習環境の違いに戸惑いも
―シーズン中、技術の改善は難しかった
「そうっすね。移動もタフですし、治療とかもこっち(日本)で受けているような感じで受けられなかったし、ブルペンキャッチャーとかいないし。そうなってくるとなかなか難しいのもあった。でも、その中でやらないといけない。それが向こうのやり方なので」
―投げるメドは
「近日中は無理っすね。1カ月以上はかかるっす。だから、体鍛える方にフォーカスしようかなって思います」