芸能
2024/10/15 17:00

【月1連載】トム・ブラウン「M-1」有終Vへ 奇人の追想②(2017、18年)

「M-1グランプリ」のラストイヤーに臨むトム・ブラウンの布川ひろき(左)とみちお

16年2回戦敗退からの躍進へ

 札幌出身のお笑いコンビ、トム・ブラウンが漫才頂上決戦「M-1グランプリ」のラストイヤーに臨む。ナンバーワンの漫才師を決めるM-1の出場資格は結成15年以内。2009年に結成したトム・ブラウンにとっては最後の年となる。第2回は17年の準々決勝進出、そして18年決勝の躍進ぶりを掘り下げていく。

負のオーラを断ち切ったものとは

 代名詞となった合体ネタで惨敗を喫した16年、自信があっただけに落ち込み具合は過去一番だった。その後もM-1へのやる気は削がれたままだったが、月20本ほどのライブはこれまでと同じようにこなしていた。後輩からは「辞めそうですね」と言われるぐらい、負のオーラを漂わせていた。それでもライブでの台詞を少しずつ変えていくなど、ちょっとした工夫を取り入れていったことで、ネタは洗練された。翌17年は一気に準々決勝まで勝ち進んだ。

布 川「この年でダメだったらもう辞めようとしてましたね。1回戦は毎回、盗撮の対処法というネタをやっていたんですよ。2回戦でキングムーミン、3回戦もキングムーミン」

みちお「2回戦からキングムーミンをやったっけ?」

布 川「もうそれしかないからしょうがないし、(それまでに)落ちているし、一番強いネタを持っていくしかなかった」

みちお「よく準々決勝まで行けたな」

布 川「3回戦がそんなに悪くなかったんですよね。初めて3回戦に行けた15年は死ぬほどスベったんですけど、そのときよりは感覚が悪くなかったんで、ゼロじゃないなと思って。そしたら準々決勝進出に名前が書いてあったんで、嬉しかったですね~」

みちお「嬉しかったね~」

布 川「ヤーレンズからすぐ連絡が来ました」

みちお「むちゃくちゃ嬉しかったし、うおー! っていう感じだったんですけど、同時にものすごく分厚い壁みたいなのを感じました。準々決勝からの準決勝、からの決勝、からの優勝、みたいな」

布 川「準々決勝で覚えているのが、出番がランジャタイ、僕らの順番で。僕らのキングムーミンで『はーるーよー♪』ってユーミンさんの『春よ、こい』を歌うボケがあるんですけど、ランジャタイも土の中から『はーるーよー♪』ってユーミンさんが出てくるみたいな。僕らのネタで加藤一二三さんが土から出てくるっていうネタがあるんですけど、それも全部混ざってるぐらいで『うわ! 最悪』と思って。でも、ちょっとだけ触るかと思って、ちょっとだけ触ったんですね。『またユーミン出てきましたけど』みたいな。めちゃくちゃスベりましたね。慣れないことをするもんじゃないなって学びました。浅草公会堂ですかね。ネタ自体、スベりはしなかったですけど、落ちたなと思って帰りましたね」

2017年のトム・ブラウン=本人提供

 

芸人を辞めるのか続けるのか―

 初めて準々決勝まで進出し、手応えも得られた一方で、それよりも上に行けなかった事実に変わりはない。布川の中には、まだ芸人を辞める選択肢もあった。

布 川「前とはちょっと違うなっていうのはあったけど、辞めるなら辞めると思っていた。その後すぐにライブがあって、みちおに楽屋で『どうする? 辞める?』って聞いたんです。そしたら『今決めなきゃダメ? 1週間ぐらい待ってくれない?』って言ってて。そんなやつ、やるつもりじゃないっすか。だから『そんなんいらん。やるぞ。あと1年ね』っていう話をしたのをすごく覚えてます」

みちお「迫られたのは覚えてます」

布 川「無駄ですからね。やるって決めて、その後すぐのライブは尋常じゃなくスベりましたね。だから本当に続けていいのか? って思いました」

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