自分たちがここまで何をどう築き上げてきたのか―《河合CRC竜の眼》
G大阪戦は終盤に天国から地獄へ
10月5日のアウェーG大阪戦で、北海道コンサドーレ札幌は終了間際に連続で得点を奪われ、1-2で痛恨の敗戦を喫した。ファン、サポーターの皆さんも同じ気持ちだと思うが、なかなか受け入れがたい現実である。ものの数分で勝敗がひっくり返り、天国から地獄へと突き落とされる、サッカーの怖さを改めて味わわされた一戦となった。
J1初ゴールを挙げた白井
試合は開始早々の前半8分に、リーグ戦初スタメンに抜擢されたFW白井のJ1初ゴールで幕を開けた。彼本来のストロングポイントが出たシーンではないが、前線からの守備を怠らずにやり切った成果だと思う。ボールを奪ってからも速かったし、ゴール方向へのファーストタッチも良かった。
そして何よりも角度があまりない位置からの左足シュートがうまかった。この試合を通じて、ゴール方向に向かう動きとファーストタッチというのは、非常に良かったという印象を受けた。今回の先発起用には正直驚かされたが、今後はより試合に絡んでくるのではないだろうか。
前半から攻守両面で不安があった
ただ、先制はしたものの、前半から札幌のラインが下がりすぎて後ろに重たい状況だった。それに伴って前線に張っていた白井とMF青木がセンターラインより自陣側にいることが多く、そこでボールを受けてもボランチやCBが容易につぶしに行ける状況となっていたため、なかなか攻撃の形をつくり出すことができていなかった。相手のシュートが2度バーに当たる幸運もあって、前半を何とか無失点で切り抜けたものの、守備面でも不安を感じさせる45分間だった。
もし私が現役として同じピッチにいたら…
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後半に入ると、攻めるG大阪に対し、守ってカウンターの機会をうかがう札幌という展開が色濃くなった。途中出場のFWサンチェスやFWバカヨコは、前掛かりになるG大阪の空いたスペースを狙ってカウンターを仕掛ける意図で起用されたと思うが、攻め方も単調だったし、体を張ってキープする場面もほとんどなく、正直見ていて残念な気持ちを覚えてしまった。もし私が現役として同じピッチ上でプレーしていたら、彼らに喝を入れに行っていたと思う。
守備でも、後半途中からは4-4-2のブロックを敷いて戦う形になっていた。ミシャさんは戦い方を変えていないと言ったそうなので、ピッチ内の選手たちによる判断だったと思うが、これも前線の2人がボールホルダーへのプレッシャーに行けておらず、相手が高い位置を取れていたために、ラインを下げざるを得なくなったものだと思う。
MF宮澤がいればまた違った
ボールホルダーにプレスに行くことによってラインを押し上げられるのだが、普段の練習で別途プレッシャーに行く練習ができていないことも要因の一つだと思うし、行くように伝える選手がピッチ内にいなかったのも大きかった。仮にあそこにMF宮澤がいれば、また違った戦い方ができていたのではないかと思っている。
ボックス内から出て守備しないと
後半アディショナルタイムにDF大﨑のプレーがハンドを取られ、PKを奪われたシーン。正直厳しい判定だと思ったが、結局はこれもラインを上げきれなかったことが要因だろう。ボックス内から出て守備をしないと、今回のようなファウルによるPKや、オウンゴールといった事故が発生してしまう。DFラインを上げきれなかったことが招いたPKだったと感じている。
チームの意思統一が中途半端だった
同点に追い付かれた後、点を取りに行くか、引き分けで試合を終えるかという部分で、チームの意思統一が中途半端だったように見えた。私としては試合状況を見ると、あそこから札幌がもう1点取るという望みは薄いように思えたので、勝ち点1でいいと割り切るべきだったと思う。そのように、チームとして残り時間をどうプレーするかをキックオフ前にみんなで話し合っても良かったのではないか。
問題は宇佐美に渡るまでの部分
最後のFW宇佐美に決められた場面。大﨑やDF岡村が対応した場面は相手のうまさが際立ったとしか言いようがないが、問題は最後に宇佐美に渡るまでの部分。札幌の対応が中途半端になり、ワンテンポずつ遅れたからG大阪にボールをつながれてしまった。一つ一つの球際の部分で負けてしまったことが積もり積もって、アディショナルタイムの悲劇につながった格好だ。
残りは全部勝つつもりで
湘南、柏が勝利したことで、残留圏内との勝ち点差は残り5試合で9差に広がった。ここまで来たら、相手どうこう関係なく、自分たちが残り全部勝つつもりでやるしかない。目の前の試合で勝ち点3を取ることだけに集中し、あとは相手の結果を待つだけだ。残留を争う相手との直接対決もあるが、何よりも次節の名古屋に勝たないと話にならないので、ある意味開き直って自分たちのサッカーを貫いていくべきだ。自分たちがここまで何をどう築き上げてきたのか、それまでの時間の中でもう一度考え、試合に臨んでほしい。