やり投げ金メダリスト・北口榛花の旭川凱旋パレードに4万8000人
沿道に詰めかけた市民に手を振る北口=撮影・小松巧
アトランタ五輪金の柔道女子・恵本さん以来
8月のパリ五輪陸上やり投げで金メダルに輝いた旭川市出身の北口榛花選手(JAL)の凱旋パレードが13日、旭川駅前の平和通買物公園などで行われた。同市がパレードを行うのは、96年アトランタ五輪柔道女子61キロ級で金メダルを獲得した恵本裕子さん以来。約888メートルのパレードには、市民を中心に約4万8000人がつめかけた。
〝チーム北口〟のスタッフも同乗
寒風の中、旭川中心部が熱気に包まれた。自身初めてのパレードでは、北口の希望で〝チーム北口〟のスタッフも同乗。専用車の上から沿道を埋め尽くした多くの市民に手を振りながら、終始笑顔で約20分の至福の時を楽しんだ。「今まで見たことないぐらいの人が集まってくださって、ほんとにうれしかったですし、たくさんいらっしゃった中でも思った以上に一人一人のお顔を見ることができて、すごく良かった」と大満足の様子だった。
旭川東高吹奏楽部がクイーンの名曲などで先導
パレードでは、北口が希望していた英国のロックバンド・クイーンの代表曲「We Are The Champions」など3曲を、母校・旭川東高吹奏楽部が演奏しながら先導した。「自分一人の力でチャンピオンになったわけではないので、とてもぴったりな曲だと思いましたし、頑張って練習してくださったと思うので、すごくうれしかったです」と、粋な計らいに感謝した。
9日の帰道後、北海道から栄誉賞を授与。12日には北広島のエスコンフィールド北海道で行われたCS初戦の日本ハム―ロッテ戦で始球式を務めるなど過密スジュールを経て、帰郷した。「たくさんの方々にお祝いしていただきましたし、初めての始球式も行いましたし、今回パレードも人生で初めて。初めてのことばかりで、それも全て金メダルのおかげだと思うので、良い経験ができてるなって思ってます」。
思い出の詰まった買い物公園
この記事は有料会員限定です。 登録すると続きをお読みいただけます。
パレードが行われた買い物公園は、陸上部の練習帰りに、友人とご飯を食べたりするなど、青春の1ページを過ごした。「やっぱり唯一の家だと思いますし、こうやってたくさんの方が迎え入れてくれるのも地元旭川だからだと思うので、昨日帰ってきたばっかりなんですけど、帰ってきたなと思いました」と、感慨深げに怒濤の5日間を振り返った。
来年東京開催の世界陸上で再び晴れ姿を
金メダルを獲っても、北口の歩みは止まらない。「来年、世界陸上が東京でありますので、次は自分の投げている姿を実際に生で見てもらいたい気持ちもありますし、そこでいい投てきをして、また金メダルを獲って帰ってきたい。まだ日本では一度もスタジアムを満員にしたことはないですし、日本的にはまだ、陸上の中では100メートル、マラソン、リレーが陸上の王道とされている中で、今回自分が新しい種目で金メダルを獲ったことで、今まで獲ったことのない種目の選手もそうですし、これから何か新しいことを始めようとする方々に、少しでも力になれればいい」。自らの活躍で、陸上の新たな花形種目になる日が来ることを願っている。
パティシエの父から「金メダルタルト」
パレードの後には、待ちに待っていた父からのご褒美が待っていた。市内のホテルでパティシエをする父から「フランス、チェコ、日本のお菓子と食材を組み合わせて作ったスイーツで、娘が金メダルを獲得したことを祝いたい」と、「金メダルタルト」と名付けられたスイーツがお披露目された。一口食べた感想を「娘なんで辛口で行くんですけど。ほんとに残念ながら、ここ(飾り)が、もうちょっとオシャレなのが良かったなっていうポイントだけなんで。それが5点分ぐらいで95点ぐらいですかね。味はすごく私好みです」と照れくさそうに笑顔を浮かべた。
父のオリジナルスイーツは年に一度の楽しみになっている。「ケーキ屋の娘で良かったなって思える瞬間が今この瞬間。ほんとに自分の好みのものだけでケーキを作ってもらえるのは、どのお父さんでもできることではないと思うので、すごくうれしいです。おそらく商品化されると思うので、また皆さんに愛されるお菓子になるといいな」。父の愛情がこもった新作を楽しみに、再び勝負の世界に戻っていく。
パティシエの父が製作した「金メダルタルト」と北口=撮影・中島聡一朗