浅間大基 逆境に強い男がサヨナラ打 「本当にしんどい時期」を乗り越えた先の劇打
■2024 パーソル クライマックスシリーズ パ ファーストS第2戦 ロッテ2ー3日本ハム(10月13日、エスコンフィールド北海道)
途中出場で大仕事! 3万7638人の観衆を沸かせた
不屈の男が試合を決めた!七回の守備から途中出場した日本ハムの浅間大基外野手(28)がサヨナラ打を放ち、シリーズを1勝1敗のタイに戻した。
同点で迎えた延長十回2死一、三塁で右前への劇打を放ち、エスコン史上最多となる3万7638人の観客を沸かせた。プロ10年目、何度も辛酸をなめてきた男が大舞台で花を咲かせた。
ボール球を気持ちでフルスイング
頭は真っ白だった。1ストライクから、ロッテ・沢村の151キロ直球を振り抜くと、右翼線で弾んだ。見送ればボール球の高めではあったが、気持ちとバットコントロールが相手を勝った。
最高の瞬間 「マジで記憶ないんですよね」
ベンチからはチームメートが飛び出し、球場は熱狂の渦。打った瞬間、感情を爆発させていた浅間も「マジで記憶ないんですよね」と笑った。集中力も最高潮に高まっていたこともあり「ベンチから、みんなが飛び出してくるのは見えているんですけど、音はあんまり。そんな感じでした」と〝空白の時〟を振り返った。
プロキャリアはけがとの戦い
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何度も、何度も、立ち上がってきた。これまで腰、両足、右肘にメスを入れており「人造人間ですよ」と自虐するほど、けがに苦しんできた。
特に昨年2月の左足くるぶしの骨折は、これまでにないほど気持ちが落ち込んだ。負傷した直後は歩けたこともあり、少し楽観的に感じていたが、診察した医者がさえない表情で「結果から言うと、折れてます」という言葉を発した瞬間、目の前は真っ暗になった。「その後の言葉は何も覚えてないです」と当時を思い返した。
今季も3月に負傷離脱
心機一転で臨んだ今季も、右手首を痛めるアクシデントに見舞われた。3月14日の広島とのオープン戦(エスコン)で、前触れもなく右手首に痛みが走った。負傷離脱の苦しさは誰よりも分かっている。チャンスは逃したくない―、という一心で、自らテーピングを巻いた。その後の第3打席では右前打を放つなど、誰にも明かすことなく、予定通りの交代まで出場を続けた。翌日に休みを挟んでいたこともあり、痛み止めの注射を打って回復を待ったが、痛みは引かず、無念の離脱となった。
転機となったソフトバンク戦でのホームラン
地道なリハビリを重ね、6月26日の西武戦(県営大宮)で1軍復帰。しかし本調子からはほど遠く、手首の状態によって打ち方を模索する日々が続いた。昇格後は5試合で打率.125と低迷した。
再度の2軍降格もよぎったが、7月12日のソフトバンク戦(エスコン)で流れが好転した。延長十二回に代打で登場し、右越え本塁打。試合には敗れたが「あれは大きかった」とうなずき、みるみると調子を上げた。
レギュラーシーズン最終戦で猛打賞
シーズン終盤も昨季、手術した左足に痛みを覚えたことで、打席数も減り、打撃感覚も鈍った。それでも、8日の楽天とのレギュラーシーズン最終戦で3安打と、終わってみれば打率.275をマーク。10日のシート打撃でも1安打1四球と調子が上向いたまま、ルーキーイヤーの2015年以来となるCS(クライマックスシリーズ)に入っていった。
CS初安打が劇的な殊勲打
12日の初戦はロッテの剛腕・佐々木の前に3三振。途中出場のこの日は、八回の第1打席で遊飛と結果が出なかったが、最高の場面で自身CS初安打を放ってみせた。
「最高の形で初ヒットを打てたので、あしたも頑張りたいです」と、この勢いのまま、快音を響かせるつもりだ。
見せた勝負強さ 「腐らずやってきて良かった」
「本当に腐らずやってきて良かった。本当にしんどい時期はあったんですけど、地道にリハビリも、トレーナーさんに支えてもらいながらやっていたので、ちゃんとやっておけば、いいことあるなって感じです」
負けたら終わりの大一番、どん底からはい上がってきた男は強かった。