《岩本勉のガン流F論》感動を増幅させるファンの存在 ノーヒットノーランを逃した私に届いた声
■2024 パーソル クライマックスシリーズ パ ファーストS第3戦 ロッテ2ー5日本ハム(10月14日、エスコンフィールド北海道)
見どころ満載だった負けられない一戦
幸ちゃん(清宮)の同点打に水野の勝ち越し打。宮西のセーブに北山の奮投。CS(クライマックスシリーズ)ファイナル進出を決めた感動の一戦は見どころ満載だった。中でも苦しんできた男の投げっぷりに心を打たれた。田中正が五回2死一塁から2番手登板。六回1死までの5人をパーフェクトに抑え込んだ。
最高のピッチングで意地を見せた田中正
先発した北山を輝かせ、後に続いたリリーフ陣が投げやすい環境も整えてくれた。五、六回と3アウト目をいずれも空振り三振で取った。これ以上ない終わらせ方。文字通り、チームを乗せた。一時期の不調もあり、抑えが不安視された時もあった。「見とけよ!」。そんな声が聞こえてきそうな気合をマウンド上で見せてくれた。
つなげたものは心 試合後に涙
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試合終了の瞬間に流れ出た涙。苦しんだ分だけ、喜びもひとしおだっただろう。気付けば、田中正だけじゃない。投手陣の多くが泣いていた。田中正がつなげたもの。それは心。強固なバトンリレーが、そこには存在していた。忘れてはいけない。田宮の好リードも大きかった。まさに縁の下の力持に徹した。
気持ちを奮い立たせてくれたファンの声援
もう一つ、感動の思いをより強くしてくれたのが、ほかでもないファンの方々だ。一人一人の声が重なり、大きな力となって選手の背を押した。いつだってファンは心強いものだ。1996年。開幕戦が雨で流れたこともあり、2戦目に先発した私は結果として初の開幕投手を務めた。相手はオリックス。星野伸之さんと投げ合った。スコアは0―1。完投負け(9回3安打1失点)した。その時、ファンの方々から届いた声は忘れられない。「岩本! ナイスピッチング!」「おまえはこれから勝っていける!」。より、気持ちが奮い立った。
届かなかったノーヒッター 感謝のプロ初完封
その年の9月11日。オリックスを相手に八回までノーヒットピッチングを続けた。回を追うごとにファンの方々の声援は増していった。結果として九回に、先頭の田口さんに中前打され、記録達成は逃した。ただ、続く藤井さんを投ゴロ併殺に取り、イチローを中飛に抑えて、プロ初完封を飾ることができた。いつだってファンの声が感動をより強いものにしてくれた。
ソフトバンクの待つ福岡へ
さあ、ファイナルステージ。ファンのためにも思う存分、暴れ回ってや!