東海大札幌高の143キロ左腕・矢吹投手が7回1失点 昨年の決勝戦で味わった悪夢とは【秋季全道大会】
■秋季全道高校野球大会第1日(10月16日、札幌・大和ハウスプレミストドーム)
▽1回戦 鵡川1-5東海大札幌高
昨秋準優勝の東海大札幌高が、5-1で鵡川に快勝。4年連続で初戦を突破した。新チーム初先発した背番号7の矢吹太寛(たお)投手(2年)が、7回1失点の好投。四回にソロアーチを浴びたが、残り21者はこの日最速141キロの直球とチェンジアップで全て凡退に打ち取った。昨秋、北海との決勝戦に五回途中から3番手で登板して6失点。悔しさを糧に、雪辱のマウンドを目指して腕を振った。
四死球なし テンポ良く打ち取った
110キロ台のチェンジアップで、次々と相手打線のバットに空を斬らせた。「きょうは四死球なしで、テンポ良く打ち取るピッチングができた。ストレートは結構いい感じにかかり、最後のリリースポイントが良かったので、いいボールがいった。マウンドがいつもやるところより高いので、公式練習からマウンドの高さを確認し、そこから変化球も低め、低め、の意識でどんどん投げた。去年も投げているので、慣れていたのがよかった」と、胸を張った。
矢吹が1年前の忘れものを取りに戻ってきた。1年前の北海との決勝戦では、4-0から2点差に追い上げられた2死二、三塁のピンチでマウンドを任された。そこは三振で切り抜けたが、六回に2失点で同点に追い付かれ、延長十回タイブレークでは4失点。9年ぶりのセンバツ甲子園は遠ざかった。今でも時々、動画を見返す。「ピッチャーとしてまだ全然だった。気持ちの部分もそうだし、あの時は球速も全然出ていなかったので、コースに投げることもできてなかった。連投だったので、体力的にも後半に落ちて。あの試合は絶対忘れたくなかったし、今年もう一回ここに戻ってきて、次こそ優勝する、という気持ちでやっている」。
悔しさ晴らすため取り組んだ対策は
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悔しさを糧に絶対的エースを目指し、オフは厳しい筋トレなどで投球の土台となる下半身づくりに取り組んだ。夏休みには、1年前から最速は8キロアップの143キロへ。夏は封印していたチェンジアップに磨きをかけた。「意識を少し変えて、リリースを少し後ろから。なでないようにするために、後ろでしっかり腕を振る意識で」。ブレーキの利いたウイニングショットで、直球も生きるようになり相乗効果は抜群だ。
ダブル主将に任命されチームけん引
投球以外にもチームの大黒柱を任された。この秋から指揮を執る、東海大相模出身の遠藤愛義監督(40)から、ダブルキャプテンの一人に指名された。登録上は山口聖夏遊撃手(2年)が主将になっているが「自分は去年の夏からベンチに入っていて、プレーでチームを引っ張る。登録は山口がキャプテンですけど、自分もプレーからチームを上げられるような選手になりたい。自分が変わらないとチームも変わっていかない。いろんな経験があるから、それをチームにしっかり伝えて、勝ちにつなげられるように」。練習中のランニングなど、文字通り部員全員の先頭に立ち、チームをけん引する。
ダブル主将制の狙いを、指揮官は「僕も副キャプテンをやったことがあるんですけど、なんか引いちゃう。そうじゃなくて、2人で走っていけたら」と、副主将は置いていない。矢吹の成長に関しては「明るくなりました。今までより会話をしなきゃいけない場面とかも増えてきた。いい意味で喜怒哀楽が出るようになったかな」と目を細める。
背番号は「7」でも気持ちはエース
夏までの実績で言えば、秋はエース候補だったが、夏休み中の結果でエースナンバーは高橋英汰投手(2年)が背負う。「背番号は特に気にしない。遠藤先生からはエースはおまえだぞって言われてる。マウンドが一番落ち着くので、マウンドに立ったら自分がエースだ、という気持ちで投げている。次こそ絶対優勝できるように、みんなチーム一丸となって一戦必勝でやっていきたい」。去年は表彰式で横目に見ていた優勝旗、今年は誰にも渡さない。