石川直也 運命のドラフトから丸10年 現在地と失うことのない初心とは…
■みやざきフェニックス・リーグ 日本ハム5ー5阪神(10月23日、宮崎・SOKKENスタジアム)
八回から1回を投げて1失点
日本ハムの石川直也投手(28)が23日、SOKKENで行われた阪神戦に登板した。八回から1イニングを投げ1失点。試行錯誤を重ねながらレベルアップに励んでいる。
試行錯誤の秋 「結果を気にせず投げられる」
運命のドラフトから10年。かつて守護神を務めた剛腕は、南国の地で若手に混じって汗を流している。
「シーズン後半はスライダーを使って、今はツーシームも試しています。登板数は少ないけど、結果を気にせず投げられる時期。先発をやっていた時に使っていた球種に取り組んでいます」と投球の幅を広げるため、前向きな挑戦を続けている。
2軍で好投も1軍からは声がかからず
今季は2軍で36試合に登板し、防御率2.86。9試合連続で無安打投球を披露するなど、必死にアピールを続けた。しかし、上位躍進を果たした1軍では、ブルペン陣がシーズンを通して好調を維持。最後まで声がかからず、1年間をファームで過ごした。
プロは結果がすべて 「自分の力不足」
「結果主義の世界。1軍に行けなかったのは、自分の力不足だと捉えています」
心が折れるネガティブな感情は胸にしまい、厳しい現実を正面から受け止めた。
20年8月にトミー・ジョン手術
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
日の当たる舞台でなくても、静かに爪を研いできた。2020年8月に右肘のトミー・ジョン手術を受けて以降、なりを潜めていた直球は、術前と比べても遜色ない状態にある。
戻ってきた球威 「安定して球速を出せました」
「手術後、ボール自体の感覚はこの1年が一番、良かった。(2軍で)抑えていた期間は、平均球速も140キロ台後半まで持っていけた。最速は152キロでしたけど、平均球速は術前と変わらない。むしろ今年の方が、安定して球速を出せました」
今でも記憶に新しい10年前のドラフト
この日から、ちょうど10年前。2014年10月23日のドラフト会議で、日本ハムから4位指名を受けた。プロ生活が始まった一日を、今でも鮮明に覚えている。
「会見部屋の隣に控室が用意されていた。(野球部の)部長の家はテレビで中継が見られて、電話をつなぎながら同級生と集まりました。(会議の)中盤になったら、監督と会見室に行って、控室から歓声が聞こえた。でも自分は、どこに指名されたか分からなくて戸惑いました(笑)。進路が決まってなかったので、すごく安心しました」
得難い経験 投手の醍醐味
指名直後、高校生だった石川は初々しく「不安よりもプロ野球でレベルの高い打者と対戦できるのが楽しみ」とコメントを残した。酸いも甘いも味わった今なお、初心を忘れたことはない。
「毎年、すごい打者がいる。打たれることもあるけど、良い打者を抑えられたら、シンプルにうれしい。10年は言葉にすると長く感じるけど、まだ28歳。投球の引き出しは増えているし、三振を取りにいくスタイルは変えずに、プラスして新しい球種も使えたら。真っすぐのスピードも出てきて、これからだと思っています」
尽きない向上心 見据える完全復活
老け込むには、まだ早すぎる。もう一花、二花咲かせる準備と覚悟は、十分にできている。
悔しさ募ったシーズンは、完全復活を遂げる来季への土台になる。