稲葉2軍監督の〝改革〟に迫る 秋季キャンプでコーチ発案の独自練習 選手の感想は?
■秋季キャンプ(10月31日、沖縄・かいぎんスタジアム国頭)
エスコンに先駆けて30日にスタート
日本ハムの秋季キャンプがエスコンフィールド北海道に先駆けて30日に沖縄・国頭でスタートした。若手中心のメンバーが参加し〝メジャー流〟の自主性を重視した練習が行われている。
稲葉篤紀2軍監督(52)による〝キャンプ改革〟の全貌に迫った。
自主性を重んじるシンプルなメニュー
球場前に掲示されたキャンプの練習メニューは至ってシンプルだった。野手はチェック、コンディショニング、打撃(20分)。時間をずらしてグループ別に行われ、全体練習は午後0時20分には終わった。残りは個人練習に充て、選手の判断に任せる。その意図を稲葉監督はこう明かした。
「やらされている練習は休んじゃう」
「いつもみたいなキャンプじゃなくて、違う形にできないかなと思っていた。選手たちが効率良く自主的に動ける。バッティングの時間は決めているけど、守備は自分で何をやりたいか決めて、コーチを使う。1月までの3カ月が大事。選手たちがこの3カ月間、何をやれるのか決められる時間をこのキャンプでつくろう。やらされている練習は休んじゃうのよ。地獄のキャンプとかじゃない。やるのは自分。自分たちでやりなさいって」
キャンプイン前日のミーティングで熱弁
キャンプ前日に行われたミーティング。オフシーズンを見据えて、指揮官が選手たちに伝えたことがある。
「休みたければ休めば良い。でも、それは自分に跳ね返ってくるし、それでは勝つチームになれないとミーティングで話した。だから、優しいようで実は厳しいことをやっているんだよって。1日24時間の使い方。それぞれ使い方はあるので、差を埋められるのはこの期間だよ。1軍の選手たちと差を埋められるのはこの期間だよ」
常に進化を求める プロ野球の慣例にメス
プロ野球のキャンプには、「行程」と呼ばれるグループごとのメニューが存在する。「行程」に添って打撃練習が行われるのが一般的だ。この練習法に疑問を感じていた。
「なんで歴史があるプロ野球で行程って同じメニューを12球団やるのかなと思っていた。一回ちょっとばらしてみて、結局これだなってなればいい。飽きちゃうじゃない、選手って。同じバッティング練習、守備だと。工夫をしたいわけ。毎日、刺激があった方がね」
実戦を想定 新庄野球にもアジャスト
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キャンプ2日目のこの日、3人で回す打撃練習中で実戦的な走塁練習を取り入れた。狙いは効率アップだ。
「メジャー式で(打撃ケージで)打ったら、そのまま走塁に行って、3人でぐるぐる回すの。例えばランナーが『エンドランいきます~』って言ったら、バッターがエンドランの練習する。少し実戦を練習の中に入れたり。試合じゃないとできないことっていっぱいある。特にボス(新庄監督)はいろんなことを求めるから、やっておかないとね」
守備練習にも新アイデア
監督、コーチがアイデアを出し合い、工夫を凝らしたメニューを実践。サブグラウンドにいた指揮官が「あの練習も面白いよ。タイムを測って、何秒以内に内野守備を完結しないさいっていうのをやろうとしている」と指さした先には、机の上にテレビが置かれていた。
モニターにiPadをつなぎ、ストップウオッチの数字を表示。発案者の岩舘学内野守備走塁コーチは、守備練習の定番、内野ノックで何かできないか考えていた。
「体内時計がしっかりしていれば、試合で焦らない」
「タイムは今まで測っていたけれど、投げている人が分からないと意味がない。だいたい右バッターで(一塁到達まで)4秒を切る選手はいないから、投げて4秒くらいだったら、プレーとしてOK。5秒かかったらセーフになる。(西武の)源田とか、シートノックでも必ず4秒1、2で投げてくる。体内時計がしっかりしていれば、試合で焦ることがない。自分が何秒くらいでプレーしているか体感するのは大事なこと。ランナーの足が速いから1歩前に出ようとか、遅いから1歩後ろに下がろうとかも分かってくる」
選手も納得のメニュー 細川「より実戦をイメージできる」
ノッカーが打ち、選手がゴロ捕球してから一塁への送球する時間を測ることで、より実戦に近い状況を想定。遊撃の守備に就き、タイム計測に挑戦した細川はどう感じたのか。
「タイムを測ることで、よりランナーをイメージできる練習だと感じました。タイムを意識したらプレーが速くなりすぎて、やらなければいけないところが雑になってしまう。丁寧にクオリティーを上げるのが大事だなと思いました。この時期、実戦ができない。より実戦をイメージできる練習なので、自主トレとかでも機会があれば入れていきたいです」
夜間練習に積極参加する若手に感銘
もちろん、この内野ノックも自主練習の一環。午後になると選手たちはウエートトレーニングや室内での打撃練習など、たっぷり与えられた時間を有意義に使っていた。キャンプ初日の30日、稲葉監督が夜間練習をのぞくと、高卒1年目を終えた育成の浜田、平田らの姿があったという。
「今の子たちは真面目だわ。本当よく練習、自分たちで考えてやるなって。だからこうやって自主性に任せられるのがある」
沖縄の最北端・国頭村で行われているキャンプ。のどかな環境で、各選手が主体性を持ち、それぞれの課題とじっくり向き合っていた。