旭川実業152キロの豪腕・田中稜真が仙台大に合格 悩み抜いた末にプロ志望届を提出しなかったわけ
兄はロッテの田中楓基
今夏の北北海道大会4強の旭川実業の152キロ右腕・田中稜真投手(3年)が1日、仙台大の体育学部体育学科にスポーツ推薦で合格した。兄は21年ドラフトでロッテから育成1位指名を受けた田中楓基投手(21)。今年のドラフトではNPB12球団が注目していた豪腕が、プロ志望届を提出せずに大学進学に心が傾いた理由とは―。
球界を背負える投手が将来の目標
生まれ故郷の石巻市と同じ宮城県にある仙台大から4年後の1位指名を目指す。「チームの雰囲気がもちろんいいですし、本当に実績もすごいあるチームなので、仙台大学さんに選ばさせていただきました。目標はドラフト1位で(プロに)入って、1年目から開幕中継ぎだったり、すぐにでもローテーションに入って、何年もプレーをした中で、将来は球界を背負っていけるような、大事な場面で任されるようなピッチャーになりたい」。その選択に、今は一切の悔いはない。
ドラフト当日はテレビでチェック
10月24日のドラフト会議は、人生初のアルバイトから帰宅し、テレビでチェックした。「(北照の)高橋幸佑選手は連絡を取ったりもしてたので、すごい楽しみにしていた。ドラ1で期待されていた今朝丸投手とか、高校ナンバーワンって言われていた選手がどこに入るのかな」と、同世代の注目選手の動向は当然、気になっていた。
プロに入るために努力してきたわけじゃない
春まではプロ1本だった。北北海道大会で負けた直後、周囲には進学とプロ入りへの気持ちは「半々」と話していたが、「その時も実際はプロだった」と、その意思は固かった。もしプロ志望届けを提出していれば、今回のドラフトで名前を呼ばれる可能性は決して低くはなかったが、9月末になり、最終的には大学進学を選択した。
「ある程度の自分の力がついてきた中で、(プロに)入るために今まで頑張ってきたんじゃなくて、活躍するために頑張ってきたって考えたら、そこが本当にゴールじゃない」。圧倒的な力をつけ、堂々とプロ入りすることを選んだ。
自分の武器とは何か 兄からの問いかけに…
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結論にいたるまでには、電話で参加した兄も含めて何度も家族会議を開いた。その中で、プロの世界を知る兄から「今、プロに行ってどうやって活躍するんだ? って話をされた時に、自分(の答え)がパッと出てこなかった。これが絶対的な武器だっていうのがはっきりしてない。良い意味でも悪い意味でまだまだ成長段階であって、どれが飛び抜けてるかって言われたら、全くない」と気付かされた。さらに、兄からの「やっぱり何かしらの武器はみんな持ってるよ」という言葉が胸に響いた。
仙台大での練習参加
まだ結論が出ていなかった8月末に仙台大の練習に参加。そこで来年のドラフトが期待される左腕・渡辺一生投手とペアを組ませてもらった。キャッチボールをしただけで、「今までこんなボールを受けたことがなかった。やっぱり違うな」と衝撃を受けた。
さらにピッチングも間近にし、「これが本当に日本を背負うレベルなんだ。やっぱり上には上が本当にいるんだなと。ここに入れば、自分より上の存在がたくさんいて、そこに食らいついていければと。目の前でプロに行く選手と一緒に練習できたりするっていう、そういう魅力がたくさんありました」。その後、熟考の末に進路が決まった。
究極の直球
4年間かけて磨くのは、こだわり続けてきた直球だ。現在でもすでに152キロと高校生離れ。「絶対投げなきゃいけないと思うんですよ、真っすぐは。変化球だけで抑えるピッチャーなんていないと思いますし、基本になってくるのはストレート」。打者が、来ると分かっていてもバットが空を切る、究極の直球を目指す。
新球習得を決意
さらに決め球の変化球の開発だ。持ち球は横スライダーと緩いカーブに奥行きのあるチェンジアップ。「スライダーが自分の中での武器だと思っていたけど、精度が高くなかったりとか、空振りをあまり取れなかった。高校生のレベルで空振りが取れなかったので、プロに行ったらそりゃ打たれるだろう」と、新球挑戦を決意。「真っすぐに似ているような軌道で落ちるフォーク、スプリットがあれば、もう一つ強みにはなる」。後輩たちが練習する横で、将来のウイニングショット会得に乗り出した。
兄への秘めた思い
照れくさくて直接伝えることはできないが、秘めた思いがある。「自分が入る時にまだ(プロに)いれれば、兄は結果を残しているっていうこと。次が4年目になるので、勝負の年。自分が入る時までいてくれたら、自分の頑張り次第で、兄の活躍に届くかもしれなくて、一緒に投げることができるかもしれない」。4年後、12球団から一番に手が上がる存在へ、上り詰める挑戦が始まる。