【4000字超えインタビュー】金子千尋2軍投手コーチを直撃「去年、アメリカに行って良かった」
豊富なキャリアと知識には定評
日本ハムの金子千尋2軍投手コーチ(40)が、秋季キャンプが行われている沖縄・国頭で道新スポーツデジタルの取材に応じた。2022年限りで引退した沢村賞右腕は、昨季は特命コーチとして米国へコーチ留学を経験。今季から2軍投手コーチとして、若手の育成に力を注いでいる。今キャンプから取り入れている練習方法とは―。2軍調整になった田中正義投手(30)へかけた言葉とは―。〝金子流指導〟の一端をたっぷり語ってもらった。
米国へのコーチ留学で指導に幅
-10月24日のドラフト会議当日、SNSで「金子千尋」がトレンド入りしていました
「ピッチャーをいっぱい取ったからですかね? 僕が何かしている感じですけど、僕は特に何もしていないですからね。本当に。そう思ってくれるのはありがたいですけど、チーム方針が成功しているということだと思います」
-今年から2軍投手コーチに就任。シーズンを振り返っていかがですか
「去年、アメリカに行って良かったなと。いろんな目線、角度から野球を見られた。日本にいたら感じられないことも感じられたし、練習内容だったり、データの見方、こういうふうな使い方をするんだとか、そういうのは行かないと分からないことがたくさんあった。練習の仕方、ピッチャーの調整の仕方、取り入れたいなとか、逆にこれは日本だと無理だなとかも、もちろんあった。行く前も言いましたけど、全部、アメリカがいいとは思わないし、全部、日本のやり方が正解とも思わない。いいところ、ファイターズに合うところ、その環境に適したやり方をうまくミックスできたらなと思います」
〝タッチアンドフィール〟を実践
-米国でコーチングについて学び、今、ファイターズで取り入れていることはありますか
「一番、分かりやすく言うと〝タッチアンドフィール〟っていって。直訳すると、感覚を確かめるみたいな感じなんですけど。何をするかといったら、ブルペンで投げる頻度を増やした。もともと日本だと、1軍も2軍もキャッチボールして、コンディショニングして、その後もう一回、キャッチボールするという流れが多かった。もう一回、キャッチボールをする場所が平らな場所なんですよ。外野の端に行ったり、1軍だとしても外野でコンディショニングしてセンター付近でやる。あれを僕はなくしたんですよ。投げるなとは言っていないんですけど、どうせ投げるならキャッチボールの延長でブルペンで傾斜を使って投げてくれって。実際、ピッチャーって傾斜以外で投げることはない。たまにいるんですよ。平地ではいいけど、傾斜に行くと感覚が良くなくなる。それ、ピッチャーとして致命的じゃないですか。傾斜でいい感覚をつかんでもらいたいのと、キャッチボールしてコンディショニングして、その後にもう一回、キャッチボールすると、もう一回、肩をつくる作業が必要になる。それだと1年間を通して、肩肘に負担がかかる。だったらキャッチボールで投げられる状態にして、そのまま(ブルペンで)投げてくれたら、肩の出力を上げることが1回で済むんです。強制はしていないですけど〝タッチアンドフィール〟という文化というか、やり方に慣れてきたら、その後にキャッチボールする人がほぼいなくなりました」
〝ピッチング合わせ〟も導入
-練習の効率も良くなりますね
「はい。あと、今(秋季キャンプで)やっているのが〝ピッチング合わせ〟。10時からピッチングをする準備を各自でしてくれと。10時キッチリにブルペンで投げろとはしていないですけど、およそ10時付近にブルペンで投げられる状態まで自分でやって、キャッチボールするタイミングも個人でいいよと。その理由としては、試合ってファームだと、ほぼ(午後)1時(開始)じゃないですか。先発ピッチャーはそこに合わせてアップ、キャッチボール、ピッチングをする。その感覚をつかんでほしい。自分は1時開始の時、何時から動いたらいいのか。アップで何分必要なのか、キャッチボールで何分必要なのか。そのキャッチボールをするための肩、肘のアップはどれくらい必要なのか。自分のことを知るためにやってもらっています。キャッチボールだけの選手も〝キャッチボール合わせ〟なんです。自分で必要なことを考えて逆算して、何時から動いたらいいのか、いいキャッチボールをするためには何をしたらいいか。人それぞれやりたいことや時間のかかり方は違うので」
大切なのは自分を知ること
-自分を知ることができる
「ちょっと早く準備できた時に、試合開始を早めてもらうことはできない。逆に(準備が)遅くなったとしても、試合開始を遅らせてもらうこともできない。今のこのキャンプでは特に、時間に合わせることをやってほしい。シーズンが終わってオフに入ったら、みんな自主トレじゃないですか。結局、自分でやらないといけない。今のうちに、自分には何が必要なのかを知るために。選手には言っていますけど、今は温かい沖縄ですけど、帰ったら寒い環境になる場合もある。その時はその時で何が必要なのか、というのを考えてやらないとダメだと言っています」
野球界の常識は世間の非常識!?
-自主性が求められますね