２人の掛け合いが楽しかった。２軍拠点の鎌ケ谷で生活している達と細野が練習を終えて、寮の前に戻ってきた。２学年後輩の達がなにやら悪い顔で「グラブ、置き忘れてきませんでした？」と先輩に声をかけた。

　細野はすぐ失態に気づいた。「あ…戻してくれた？ 本当に戻してくれていないの？」とあたふた。気を利かせ、代わりにしまってくれたのでは―と淡い希望を抱いたが、達は首を振り「いや、そのまま。罰金は１個につき５万円ですよ。（証拠の）写真も撮られていましたよ」とトドメを刺しに来た。

　実際はこのケース、２軍では罰金を徴収されないという。揚げ足を取るようにイジられた細野は反撃に出た。「書いておいてください、達は僕のお金を吸い取るって。金食い虫だって」。

　金食い虫の真意が分からず、あらためて聞くと「『メシに行きましょう』と達から誘ってくるんですよ」と説明。毎回、食べる量が多い後輩の分も代金を支払っていて「全額おごり？ もちろん。達は財布を持ってきません。なついているんですよ、僕に」とあきれたような口調で証言した。弟分の無遠慮な振る舞いにため息をはいていたが、実際はまんざらでもなさそうだった。