昨夏甲子園16強入り北海の原動力 幌村遊撃手はトヨタ東日本、大石捕手は室蘭シャークスへ
昨夏の甲子園で16強入りし、今春の選抜甲子園にも出場した北海の主力2人が、3年後のプロ入りを目指して社会人野球へ進む。1年春から公式戦全試合に出場した幌村御影遊撃手(3年)はトヨタ自動車東日本(岩手)へ、チーム一のフィジカルモンスター・大石広那捕手(3年)は室蘭シャークス入りする。幌村は入学2週間後に捕手から遊撃手、大石は入学1カ月で遊撃手から捕手に転向してレギュラーをつかむなど共通点も多い。互いの存在を刺激に、切磋琢磨して夢を叶える。
幌村:捕手→遊撃手 大石:遊撃手→捕手
3年間の思いの詰まったグラウンドで、2人が新天地への思いを口にした。高卒プロを目指していた幌村は、選抜甲子園前から右肘を痛めたこともあって結果を残すことができず、進路を切り替えた。「大学か社会人で悩んだんですけど、社会人で自分のスキルを磨いてプロに行こうと思った時に、一番環境も良かったですし、自分が成長できる場所だと感じた」と、岩手行きを決断した。
大石は岡田先輩と共闘し都市対抗目指す
大石は23年夏の甲子園でバッテリーを組んで2勝した151キロ右腕・岡田慧斗投手(19)とのバッテリー再結成を見据える。「社会人といえば都市対抗が一番。しばらくシャークスは出ていないので、自分が試合に出て、都市対抗に導けるような選手になりたい。岡田さんにも相談させてもらったんですけど『覚悟持って来いよ』って言われました。甘い世界では絶対ないので、死ぬ気で3年後にプロ野球行く、という気持ちを持ってます」と先輩との共闘を誓う。
後にプロ入りする先輩を間近に見て衝撃
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道内世代ナンバーワンと称される幌村のグラブさばきは〝偶然〟から生まれた。元々捕手で入ったが、2週間が過ぎたころの練習試合で「サードでたまたま出たら打球が飛んできて、バッとうまくさばいた(笑)。パーンって入ってくれて、それでショートやってみろって」と、遊撃への転向が決定した。1年の夏休みには、当時仙台大4年の中日・辻本倫太郎内野手(23)が母校で練習参加。間近で見たグラブさばきに衝撃を受けた。「スピード感、体のキレが全然違った。平川先生に『こういうスピード感のある選手を目指せ』と、ずっと言われてきた」。自らが目指すプロの世界へ進むレベルの指針にもなった。
捕手転向はチャンスと捉えた大石
大石は誰もが認める練習の虫だ。幌村と入れ替わるように遊撃から捕手へ転向した。軟式出身で「北海道といったら北海というイメージが自分の中ですごく強くて、北海を選びました」。内野手のポジションを争うライバルには、幌村のほかにもファイターズジュニア出身者らがいて、捕手転向はチャンスと捉えた。「意地でもこのポジションをつかみ取ろう、という気持ちでやってました」。練習後の自主トレは一番最後が定位置。毎日のように金沢光流主将(3年)から「早く帰って」と促された。入学時に130キロ程度しか挙げられなかったスクワットは、3年時には200キロを18回。入学時に購入した制服の太ももは「パンパン」で歩くのに一苦労するほどだ。
大谷翔平の兄・龍太さんがコーチ
幌村が加入するトヨタ自動車東日本は1975年に創部、18年に都市対抗に初出場した。チームには21年南大会準優勝の知内・馬躰光瑛投手(20)が在籍しており、ドジャース・大谷翔平の兄・龍太さん(36)がコーチを務めている。「チームとしても都市対抗を目標にしているので、その一員として力になれたら。1年目から試合に出たい思いもあるんですけど、チームが勝たなきゃ意味がない。高卒なので1年目からチームに貢献できるよう一生懸命頑張りたい」と、チーム2度目の東京ドーム切符獲得に力を尽くす。
大石は絶対に叶えなければいけない理由がある。大学進学という選択肢もあったが、物心つく前から女手一つで育ててくれた母・圭美さん(37)に経済的に負担をかけたくなかったのも社会人野球を選択した決め手の一つだ。高校3年間、毎朝お弁当を作り、どろどろになった練習着を嫌な顔一つせず洗濯してくれた。「ほぼ1人で育ててくれて感謝しかないです。社会人に行って自分が自立して生きていって、プロ野球選手になる恩返しが一番いい形。そこを目指していきたい」。
良き理解者かつライバル
2人は良き理解者でありライバルだ。幌村は1年春から、大石は1年秋から公式戦に出場した。「どっちかが活躍したらすごく悔しい。よくやったっていうより悔しい思いもすごく強かったので、お互いライバルというか、意識してやってきた」。大石も「幌村が(プロに)行って自分が行かないのは自分の中で本当に悔しい。そこは意識してやっています。幌村より上に行きたい気持ちは常に持ってるので、そこは良いライバル関係」。来春からは、岩手と室蘭、別々の場所でプレーすることになるが、思いは一つだ。